#はじめに
このページはADHDが障害ではなく、環境へ適合した進化であるという仮説(仮説と軽んじるなかれ!我々が信じている科学的に証明された真実というのは適合する例がいくつか見つかっただけの仮説のことだ!)について解説するページだ。よさまつがYoutubeで紹介した考え方をもう少し詳しく解説している。なぜQiitaなのか?Qiitaが一番手っ取り早く投稿できるからだ!
#ADHDとは
ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorderは発達障害の一種だ。脳の(とりわけ前頭前野の)発達の遅れが原因であることが示唆されている。
The delay in ADHD was most prominent in regions at the front of the brain’s outer mantle (cortex), important for the ability to control thinking, attention and planning.1
脳の発達に遅れを持つADHDの人たちは衝動性や注意力の管理ができない結果、先延ばし癖や物忘れ、時間を守れないなど社会人として終了している。
大人になるとその症状が緩和される傾向にあることから子供によくみられる障害として認知されていたが近年では大人にもその症状がみられ、大人の発達障害として注目されている。
そんな社会人として終了しているADHDだけど、実は学問やビジネスの世界で大成することも多い。エジソン、アインシュタイン、スティーブジョブズ、楽天の三木谷さん、いろいろやりすぎて職業がよくわかんなくなってしまった勝間和代さんなどたくさんの偉人たちがADHDのリストに名を連ねている(グレーゾーンだったりもするけど)。
#ADHDは進化!?
ADHDは脳の発達の遅れというけど、脳の発達についてどのような成長過程を想像するかな。
単純に知能が数年遅れた状態でスタートして、そのまま差を保ってゴールインする?
なるほどこれもありかもしれない。でもそうだとしたらなんで滅んでないんだろう?進化論はそんなものを認めるかな。知能が高い存在と低い存在の2つがいたら優秀なものだけが生き残ってとっくにADHDは絶滅しているはずじゃないの!?(ちなみに画像の縦軸の値に特に意味はありまてん)
今では10人に1人とも噂されるADHDが普通の人の完全な下位互換だとするのには進化論的な無理がある。だから僕はADHDと普通の人の知能の関係はおよそこうなんじゃないかと思う。
ADHDは大器晩成型とみる考え方だ。
こうすれば、ADHDが大人になってその症状を緩和させる理由も、障害者であるはずのADHDの人々が一向に減らない理由も説明がつくじゃないか!
いやいや、発達が遅いのはただ遅いのであって、最終的に追い抜ける理由にはならないって?そりゃあそうだ。発達が遅くて序盤に苦労する分あとから巻き返せるなんていうのは希望的観測に過ぎない。でもそれもこれからの議論を考えればただの仮説止まりでは済まなくなるだろう。
#人工知能の観点から見たADHD
近年話題の人工知能(もっといえばニューラルネットワーク)は人間の脳を模して造られている。その人工知能が発達障害に陥ったらどうなるのかを考えてみよう。
人工知能には学習率という概念がある。専門家に叩かれることを承知でざっくりと説明するなら、それは新しい出来事にどれほど敏感に反応するかを示す数字である。人工知能の知識の更新式の一例を挙げるとこんなところだ。
学習率が高ければ新しくわかった知見を積極的に自分の知識に取り込むが学習率が低ければこれまで持っていた知識をほとんど更新しない。こう聞くと学習率は高ければ高いほど良いと思えてしまうが実のところ学習率は高すぎても困る。学習率が高すぎると新しい知見を重要視するあまり今までの知識が破壊されてしまう。それでは安定した性能を持つ人工知能は作れない。人工知能にしろ人間にしろ、学ぶというのは今までの考えを破壊することだ。それは少しずつ正解に近づけていくからうまくいくのである。だから学習率はとても小さい値に設定される。そして人工知能はビッグデータといわれるたくさんのデータを使って少しずつ進化していくんだ。
そしてこの値は少しずつ下がっていくことが望ましい。
だって最初からめちゃめちゃ小さい値を使うことには意味がない。人工知能は何も知らないからだ。破壊されて困る知識を持たない人工知能は最初学習率が高く設定される。そして知識がたまるにつれて、破壊されて困る知識は増えていくし、そもそも修正の必要性が減る。十分に成長した人工知能には本当に細かな修正だけが繰り返されるべきなんだ。もし80という時間を使うなら、人工知能の学習率はおよそ次のグラフみたいになってほしい。
最近の人工知能において学習率や上に書いた知識の更新式はとても複雑になってしまっている。だから簡単のためにここでは指数関数的に学習率を減らしていく方法でグラフを描いた。数年前までは少なくともこの手法は生きた手法だったし、まともな値を取りながらゆっくりと減少していけば別に指数関数であることは重要なポイントじゃない。現在も生きている手法のうち学習率(もしくは実質的な学習率)がまともな値を取りながらゆっくりと減少しない学習法は僕の知るところ存在しない2。
人工知能の成長を学習率が下がる現象としてとらえてみよう。事実、学習率を急速に落とせば人工知能は早く完成するし、ゆっくり落とせば人工知能はなかなか完成しない。
この時、人工知能をどのくらいのスピードで成長させたらいいとおもう?答えは時間が許す限りゆっくりだ。だってたくさんのデータを学んでほしいし、今までの知識を破壊することなくじっくりと知識を蓄えていったほうがいいに決まってる。
ただ残念なことに時間には限りがある
与えられた時間を勘違いして成長スピードを遅くしすぎてしまうと成長しきる前に時間切れになってしまう。人工知能の世界の言葉を使って表現するなら学習が収束する前に時間切れになってしまうんだ。かといって早すぎると学べることは少ないし知識も破壊されちゃうしで困ってしまうね。
こんだけ書いておいてアレだけど、小難しい話が苦手な人にはこれだけわかっておいてほしい。
人工知能の最適な成長スピードは使える時間によって変わる
人工知能における発達の遅れというのは学習の完成を待たずして時間切れが来てしまうことなんだね。
#人間の脳の成長も学習率の低下
っていう論文は見たことないけどさ(笑)
そう仮定しても辻褄が合うと思うんだ。つまり人間の脳が成長するというのは学習率が低下していくということ、と仮定したい。おそらくこの記事の中で一番ふわふわした怪しい部分。ここを納得してもらうために僕はたくさんの例を用意している。
##吸収力の低下
2020年からは小学3年生から英語が必修になる。よかったね、これで日本人は大学を卒業するまでに英語を14年間も勉強できる。
奇妙なことにこの14年に及ぶ英語教育で日本人が英語をしゃべれるようになると思っている人はほとんどいない。赤ん坊は2年そこそこであらゆる言語をマスターするのに。そんな例を出さなくても僕らはあらゆる面において子供のほうが老人よりもたくさんのことを吸収できることを知っているよね。40年かけてちっちゃい頃の学習がどんくらい効果的かを示した研究だってある3。新しいことを学ぶのに、年齢は若ければ若いほどいいんだ。
##頑固さの増加
僕はレポートは紙媒体だけでなくデジタル文書での提出も認めるべきだと先生に10回以上助言してきたけど、それを聞き入れて新たにデジタル文書を認めてくれたのは若い助教授だけだったよ。あとは話を聞いてすらもらえなかった。
早い話老人は頑固だ。学習率が低下して新しい知見よりも自分の経験を重要視するようになってしまったんだ。そう思わない?
##認知症
これは決定的な証拠だとおもう。
認知症は物忘れが激しくなってしまう症状だと思われがちだけど、認知症というのは実は「忘れてしまうのではなく覚えられない」んだ。だから昔の話はよく覚えているし、ついさっきまでどこで何をしていたかはさっぱり思い出せない。というよりそもそも脳にインプットしていない。だからどれだけ頑張っても思い出すことはできないだろうね。すでにインプットしてある昔のデータを取り出すことは可能だけどね!
これはまさに学習率が0になってしまった典型的な例と言えるよね。新しい知見を完全に取り入れることができなくなってしまったんだ。
ここまでの話で見てもらえた通り、脳の成長を学習率の低下と捉える仮説はたくさんの例と適合する。この仮説を十分に妥当だと思ってくれるならようやく元の話に戻れる。
#ADHDは障害じゃなくて進化だ
ここまでで僕が指摘した大事なポイントは2つ。
- 成長を学習率の低下とみなすなら成長スピードは与えられた時間によって決めるべき
- 人間の成長も学習率の低下とみなせそう
ここでみんなに聞いてほしいことがある。
日本人の寿命はここ100年で倍近くになった4
もう僕が言いたいことがわかるかな?
人類を取り巻く環境はとても安全になった。安全すぎて80年も生きられるようになってしまった。それで同じ成長スピードでいろというほうが無理だとおもわない?だって成長スピードは与えられた時間によって決めるべきなんだから!
さっき僕が書いた理想的な学習率の変化というグラフで考えてみよう。もし寿命が今の倍の160年になっても同じスピードで成長するのが最適だというのであれば描かれるグラフは次のようなものだ。
近年の認知症の増加はまさにこのメカニズムによって引き起こされたといえそうじゃないか。
むしろこれまでと変わらない成長スピードを保ってしまうことのほうが障害なんだ!歳を重ねれば彼らは何も学ぶことができなくなってしまうんだ!でもその声は僕らには届かない。認知能力を失い新しいテクノロジーにも置いて行かれた人間の悲痛な叫びが僕らに届くことはない。
だから僕らの人生と活躍でもって証明しよう。ADHDは障害じゃないんだ。
#おわりに
僕らADHDの人にはたくさんの苦悩がある。特に学校生活や社会生活においてたくさんの醜態をさらしてきた。
当然だ。僕らの脳は他の人よりもゆっくりと成長していたんだ。行動はちぐはぐで一貫性がなく、かと思えば途端に変なものに執着を持ってしまう。だがこうした行動の数々は徐々に僕らの脳を強固なものにしていく。
一番やっちゃいけないのは学習をやめてしまうことだ。大人になってから、若いうちにいろいろ学んでおけばよかったと思うことはよくあるはずだ。たくさんの知識を蓄えたうえで更に学習を進める、ライトノベルの主人公のような、反則級の一手を放つ権利が僕らにはあるんだ。
#Q&A
##学習率は高いほどよくない?
いいや、学習率は高すぎても低すぎてもよくないんだ。高すぎると自分の持っている経験が破壊されてしまうし低すぎると学習がとても遅くなってしまう。安全性と学習速度ノトレードオフなのだ!
##環境は変化するんだから何も死ぬまでに学習率を0にしてしまう必要はなくない?
その通りだよね。事実、40歳でほとんどの人が命を落としていた100年前はほとんどの人がまだ学べる状態で死んでいたはず。40歳っていったらまだまだ新しい職についたりと、いろんなことが学べる年齢だよね。
寿命がこんなに延びてしまった現代の特別な環境を除けば、人類は仕様通り最後まで時代の変化に順応できるスペックを持っていた!それが突然、一瞬のうちに寿命が倍になったんだからビックリ。生物の進化は常に環境の変化に順応する形で遅れてやってくる。おそらくこれから長い時間をかけて、人間の学習率はもっと遅く変化するようになり、死ぬまで学習ができるように進化するだろう。
単純に学習率を下げ続けるという偏見を捨てて、学習率が下がりすぎたらまたあげればよくない?と思うかもしれない(少なくとも人工知能の世界ではその手法は有効だ)。
心配しなくてもその機能はすでに人間に備わっている。生殖である。学習を続けていって時代に適合できなくなったらその個体の学習率を再び高い状態にすることで時代に順応するアイデアは確かに悪くない。しかしそんなことをするくらいなら時代に適合していない無理なハードウェアを使い続けるのはやめて、新しい個体を1から作り直すほうが合理的なのだ。
##進化のスピードそんなにはやくないけど?or昔もADHDの患者はいたのでは?
このアイデアではここ100年の間に人類の一部が急速に進化してADHD患者という新たな種が突然変異によって生まれたことを主張するわけじゃないんだ。昔から成長の速い個体と遅い個体(ADHD)はいた。ただ人間を取り巻く環境が安全になり寿命が延びた今、どっちが環境に適合しているのか?を考えると発達の遅いADHDに軍配があがるだろうと言っているのである。
つまりここ数百年の間に人類が急速に進化したなんてことを言っているわけではなく、また昔からADHDの人間がいても全然この仮説に反するわけではないのだ。動画が非常にミスリーディングだったことは謝っておく。申し訳ない。公開してすぐのコメントにも似たようなことを書いたんだけど、埋もれてしまったのでこちらを更新する。
##認知症は新しいこと以外も忘れるけど?
認知症は忘れてしまうのではなく覚えられないと言ったので、反例をあげてそんなことはないぞという反論コメントをしてくれる人がいる。
ぶっちゃけ専門家ではないので動画公開段階では阿部教授の話を鵜呑みにしてしまったところはあるけど、いろいろ調べてみてやはりこれは「認知症が忘れるのではなく覚えられない」という話を退けるものではないと判断している。
確かに認知症患者は息子の名前や昔の出来事など新しい体験以外の出来事も忘れる。しかし認知症の進行初期に失うのはやはり短期記憶であり長期記憶は認知症の進行に伴ってゆっくりと失われていく5。
学習率が0になり新しいことを学ぶことができなくなることこそが認知症の症状だとすれば、新しいこと即座に短期記憶能力が失われることはもちろん説明がつく(そもそも記憶されないのだから)。そして記憶は再び記憶しなおさなければ単純に失われていく(新しいことを学ぶことによって記憶を破壊しなくても、ストレス等の様々な要因で記憶は日常的に破壊されている)。昔はしっかりと記憶していた英単語の意味や漢字の書き方もしばらく使わないうちに忘れてしまう、ということは認知症患者でなくてもある。ただし認知症患者の場合は息子の名前などさえも再び記憶しなおすことがなくなるので、やがては息子の名前なども忘れてしまうんだ。
単に認知症患者が長期記憶を忘れるのではなく、短期記憶に遅れて次第に失っていく様子はむしろこの仮説を支持する証拠といえるんじゃないかな。
##アインシュタインが相対性理論を発表したのは若いころだったけど?
ADHDが大器晩成型なんだとしたらADHDのアインシュタインが相対性理論を若い頃に発表できるはずないだろうという反論も見かけた。だが、億単位で存在するとみられるADHDのうちたった一人の外れ値サンプルを提示することでもって仮説を否定することはできない。未発達のまま偉業を成す人間はいくらでもいる。
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Brain Matures a Few Years Late in ADHD, But Follows Normal Pattern
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/brain-matures-few-years-late-adhd-follows-normal-pattern ↩ -
What's up with deep learning optimizers since ADAM
https://medium.com/vitalify-asia/whats-up-with-deep-learning-optimizers-since-adam-5c1d862b9db0https://qiita.com/yosama2world/items/578d65cda83eb513d460 ↩ -
Perry Preschool Project
https://evidencebasedprograms.org/programs/perry-preschool-project/ ↩ -
ガベージニュース 日本の平均寿命の推移をグラフ化してみる(最新)
http://www.garbagenews.net/archives/1940398.html ↩ -
認知症の症状―初期の症状や進行のしかた
https://kaigo.homes.co.jp/manual/dementia/symptom/ ↩