はじめに
AIアシスタントとの協業が一般的になってきた今日、より効率的な開発プロセスを確立することが重要になっています。本記事では、Overview Firstアプローチを中心に、AIとの効果的な協業方法について、実践から得られた知見を共有します。
本記事で得られること
- AIアシスタントと協業する際の具体的な手順
- 効率的な開発を実現するためのプロジェクト構造化の方法
- 知識を継続的に蓄積・活用するためのドキュメント管理手法
- トラブルを未然に防ぐためのテスト戦略
Overview Firstアプローチとは
Overview Firstとは、「実装を始める前に必ず概要の確認から始める」というアプローチです。
このアプローチには以下のような利点があります:
- 実装前に不明点や欠落を発見できる
- 自身の要件の曖昧さに気づける
- AIとの認識齟齬を早期に解消できる
- 全体の見通しを立ててから実装に入れる
プロジェクト構造の整理
1. 明確なディレクトリ構造
プロジェクトの開始時に、以下のような点に注意してディレクトリ構造を確立します:
project/
├── src/ # ソースコード
│ ├── components/ # 再利用可能なコンポーネント
│ ├── modules/ # 機能モジュール
│ └── utils/ # ユーティリティ関数
├── tests/ # テストコード
├── docs/ # ドキュメント
│ └── adr/ # アーキテクチャ決定記録
└── config/ # 設定ファイル
2. モジュール分割のポイント
- 機能ごとに適切な単位でファイルを分割
- 1ファイルは400行程度に抑える
- 依存関係を明確にし、循環参照を防ぐ
- インターフェースを明確に定義
AIとの効果的な協業プロセス
1. 設計フェーズ
Overview Firstアプローチに基づき、以下の手順で進めます:
2. 実装フェーズ
AIの得意分野を活かしつつ、以下の点に注意して進めます:
- 単体機能の実装はAIに任せる
- 複雑な統合部分は人間が主導
- コードレビューはAIに依頼
- 継続的な改善サイクルを回す
知識の継続的な記録
1. ADR(Architecture Decision Record)の活用
重要な設計決定を以下の形式で記録します:
# ADR 1: Overview Firstアプローチの採用
## 状況
- AIとの協業において、実装前の認識合わせが不足
- 要件の曖昧さによる手戻りが発生
## 決定
- 実装前に必ずAIに概要説明を求める
- 概要の確認後にコード生成を行う
## 結果
- 実装前の課題発見が可能に
- AIとの協業がスムーズに
2. ドキュメント管理のコツ
- プロジェクトの文脈を常に文書化
- 長いチャットは適宜マークダウンに保存
- APIドキュメントなど仕様書を整備
- テスト仕様も文書として管理
トラブルを防ぐためのテスト戦略
1. テスト設計のポイント
- テスト駆動開発を基本とする
- AIを活用してテストケースを生成
- カバレッジ目標を設定
- エラーケースの網羅的なテスト
2. 安全性の確保
- GETなど安全な操作から着手
- データ変更操作は慎重にテスト
- 本番データへの影響を防止
- テストの分離と独立性を確保
AIの限界を理解する
AIの得意分野
- 単体機能の実装
- テストコードの生成
- コードレビュー
- ドキュメント作成支援
人間が主導すべき領域
- アーキテクチャの決定
- 複雑な状態管理
- セキュリティ要件の判断
- ビジネスロジックの実装
効率的な開発の実現
1. 開発速度の向上
- AIによる定型作業の自動化
- テンプレートとボイラープレートの活用
- 再利用可能なコンポーネントの蓄積
- レビュープロセスの効率化
2. 品質の確保
- 一貫した命名規則の適用
- コードスタイルの統一
- 適切なエラー処理
- パフォーマンスの考慮
3. コミュニケーション
- 設計意図の明確な文書化
- チーム内での知識共有
- レビューコメントの活用
- 問題点の早期発見
まとめ
- 構造化された設計: 明確なプロジェクト構造と設計方針を確立
- AIの適切な活用: AIの得意分野を理解し、効果的に活用
- 継続的な文書化: ADRとドキュメントによる知識の蓄積
- 安全なテスト: 段階的なテストと安全性の確保
- 役割の明確化: AIと人間の適切な役割分担
- 効率的な開発: 自動化と再利用による生産性向上
- 品質の重視: 一貫性のある高品質なコードの維持
- 知識の共有: チーム全体での設計知識の活用