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ハッシュ値の表示形式を理解する:エンディアンとバイトオーダー

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はじめに

ファイルの整合性チェックやデータの検証で使用されるハッシュ値。同じデータに対して計算したはずなのに、使用するライブラリやツールによって異なる表示形式になることがあります。この記事では、その理由と実装時の注意点について解説します。

基本概念の整理

まず、重要な用語について説明します。

ハッシュ値とは

ハッシュ値は、任意の長さのデータから一定の長さの値を生成する方法です。主な用途は:

  • データの整合性確認
  • ファイルの改ざん検知
  • データの同一性チェック

代表的なハッシュ関数

  1. CRC32(4バイト)

    • 単純な巡回冗長検査
    • データ破損の検出用
    • 32ビット整数として扱われることが多い
  2. MD5(16バイト)

    • バイト列として扱われる
    • 現代では暗号用途では非推奨
    • ファイル検証などで依然使用される
  3. SHA-1/SHA-256(20/32バイト)

    • より安全な暗号学的ハッシュ関数
    • バイト列として扱われる
    • セキュリティが重要な場面で使用

エンディアンとバイトオーダー

マルチバイトのデータを扱う際、バイトの並び順(バイトオーダー)が問題となります:

# 32ビット整数 0x12345678 のメモリ上の表現
ビッグエンディアン:    12 34 56 78
リトルエンディアン:    78 56 34 12

この並び順の違いが、ハッシュ値の表示に影響を与えることがあります。

実装による表示の違い

CRC32の例

後述しますがCRC32値の場合、扱い方によって表示が異なる場合があります:

import zlib
import struct

data = b"Hello, World!"
crc = zlib.crc32(data) & 0xFFFFFFFF

# 整数値として16進数表示
print(f"Integer: {crc:08x}")  
# 出力: "ec4ac3d0"

# ビッグエンディアンのバイト列として表示
bytes_be = struct.pack('>I', crc)
print("Big-endian bytes: " + ''.join(f'{b:02x}' for b in bytes_be))  
# 出力: "ec4ac3d0"

# リトルエンディアンのバイト列として表示
bytes_le = struct.pack('<I', crc)
print("Little-endian bytes: " + ''.join(f'{b:02x}' for b in bytes_le))  
# 出力: "d0c34aec"

より長いハッシュ値の場合

MD5やSHA-1など、より長いハッシュ値は通常バイト列として扱われます:

import hashlib

data = b"Hello, World!"

# MD5の計算(16バイト)
md5_hash = hashlib.md5(data).digest()
print("MD5 bytes: " + ''.join(f'{b:02x}' for b in md5_hash))
# 出力: "65a8e27d8879283831b664bd8b7f0ad4"

# SHA-1の計算(20バイト)
sha1_hash = hashlib.sha1(data).digest()
print("SHA-1 bytes: " + ''.join(f'{b:02x}' for b in sha1_hash))
# 出力: "0a0a9f2a6772942557ab5355d76af442f8f65e01"

ハッシュ関数の歴史と実装の変遷

1970年代:チェックサムの時代

1970年代初頭、データの整合性を確認する簡単な方法としてチェックサムが使われ始めました。その代表が CRC(Cyclic Redundancy Check) でした。

実は、この時代は現在のようにx86系のリトルエンディアンCPUが主流だったわけではありません:

  • Motorola 68000シリーズ:ビッグエンディアン
  • IBM System/360:ビッグエンディアン
  • DEC PDP-11:リトルエンディアン
  • Intel 8080:バイトマシン(エンディアン非該当)

CRCの実装には以下の特徴がありました:

  • 32ビット整数として実装(CRC32)
  • 高速な計算が可能
  • ハードウェアでの実装が容易

CRC32を実行するとアーキテクチャに従ったハッシュ値が得られます。

1980年代後半:ネットワークの発展

インターネットの普及に伴い、異なるシステム間でのデータ交換が重要になってきました:

  • ネットワークバイトオーダー(ビッグエンディアン)の標準化
  • プロトコル間での一貫した表現の必要性
  • クロスプラットフォーム対応の重要性

この時期、チェックサムの表示形式に関する問題が顕在化し始めます。

1990年代:暗号学的ハッシュ関数の登場

新しい要件に対応するため、より高度なハッシュ関数が開発されました:

  1. MD5(1991年)

    • 128ビット(16バイト)のハッシュ値
    • バイト列として設計
    • RSA Data Security社による標準化
  2. SHA-1(1995年)

    • 160ビット(20バイト)のハッシュ値
    • NIST(米国標準技術研究所)による標準化
    • ビッグエンディアンでの表現を採用

これらの新しいハッシュ関数は、最初からバイト列として設計され、表示形式も標準化されていました。

2000年代以降:標準化の進展

セキュリティ要件の高まりとともに、新しい標準が確立されていきました:

  1. SHA-2ファミリー(2001年)

    • SHA-256, SHA-384, SHA-512
    • より強力なセキュリティ
    • 一貫したバイト表現の採用
  2. 業界標準の確立

    • RFC(Request for Comments)による仕様の明確化
    • クロスプラットフォーム互換性の重視
    • セキュリティ要件の標準化

まとめ

  1. 初期のチェックサム実装は、効率性を重視
  2. ネットワークの発展により、標準化の重要性が増加
  3. セキュリティ要件の高まりが、新しい実装方法を促進

現代でも用途に応じてCRC32は使われます。その際のエンディアンの違いについて、このような歴史があったことを知っておくと役に立つかもしれません。

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