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「スクラムフェス神奈川2024 -秋の陣-」に参加してきました

Last updated at Posted at 2024-10-17

はじめに

10月5日(土)に開催された「スクラムフェス神奈川2024 -秋の陣-」に参加してきました。

各地で開催されているいわゆる「スクフェス」ですが、くまごろーさんからいろいろ聞いていて興味はあったものの、初めての参加で知り合いが1人もいない状態で現地に乗り込むのはなかなか勇気がいりました。今回のテーマが「読書」だったこと、ABD輪読会とビブリオバトルを初めて経験できるという点に惹かれ申し込んでみました。ABD輪読会で扱う本が「ゾンビスクラムサバイバルガイド」だったのも大きいかもしれません。

ざっくりですが、当日は以下のような流れで進行しました。

時刻 内容
10:40 - 12:10 ABD輪読会
13:50 - 14:40 ビブリオバトル
14:30 - 16:30 OST
17:45 - 20:30 懇親会
20:50 - 二次会@小田急線?

上記についてそれぞれ書いていきたいと思います。

ABD輪読会

ABD輪読会とは?

ABD輪読会を簡単に説明すると、本1冊を参加人数分で分割して、それぞれが担当箇所を読んで要約を発表する形式で行われます。発表終了後には本について気になる部分について議論する時間も設けられていました。

実際に体験してみて、短時間で本1冊の全体的な概要を掴む事ができる素晴らしい手法だと感じました。精読したい本には適さないかもしれませんが、手っ取り早く概要を理解したい本であれば非常に理に適っていると思いました。

冒頭でも触れましたが、今回読んだのは「ゾンビスクラムサバイバルガイド」です。

概要に「※書籍はこちらで用意します」と書かれていたので運営側で裁断したものでも配るのかなとは思ってましたが、実際に現物を見るのはなかなかの衝撃でした。

image.png

10頁分くらいずつに裁断されたものが1章の方から順番に並んでる姿はなかなか壮観でした(今更ながらそれを撮影していなかった事が悔やまれます)。

輪読会の進行

輪読会は以下のような流れで進行しました。

  1. 担当部分を選ぶ(裁断された本の担当したい部分を早いもの順で選ぶ)
  2. 担当部分を読み要約をA4用紙2枚程度にまとめる(約20分)
  3. 1章の担当者から順番にそれぞれ1分で発表(全体で約30分)
  4. 本で気になった部分を議論(いわゆるOSTのような形式)

発表がすんだ人からA4用紙を窓側に貼り付けていき、成果物としてこんな感じになりました。

image_50736129.JPG

人数の関係で最後の章の10頁とちょっと分を担当する人はいませんでしたが、それでも90分程度で本の全体像をほぼほぼ把握する事ができました。私が担当したのは25頁からで、順番的には2番目でした。

自己組織化について議論

発表終了後はいくつかのグループに分かれてこの本の気になった部分について議論する時間があり、私達は自己組織化について話しました。

この本の流れとしては

  1. 迅速な出荷
  2. 継続的改善
  3. 自己組織化

の順番で書かれているのですが、ぼのたけさん曰く、著者達が行ったこの本の元となった研究によると、組織が実際にできるようになる順番はこの流れとは真逆で

  1. 自己組織化
  2. 継続的改善
  3. 迅速な出荷

の順番との事です。つまり、組織は「自己組織化ができてくると継続的改善ができるようになり、継続的改善ができてくると迅速な出荷ができるようになる」という事です。

それを聞いて、「スクラムは自己組織化できるようにするためのframework」という事が腑に落ちる感覚が得られました。

といった感じでとても約90分間とは思えないくらい学びの多い非常に濃密な時間でした。

ビブリオバトル

お昼休憩を挟んでビブリオバトルが行われました。

ビブリオバトルとは?

Wikipediaによると2007年に京都大学から広まった輪読会・読書会で、簡単に説明すると以下の形式行われます。

  • 発表者がオススメしたい本を発表し
  • れを聞いた参加者は一番読みたいと思った本に投票
  • 最多票数を獲得した発表者が優勝!

以下が公式ルールになります。

  1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
  2. 順番に1人5分間で本を紹介する。
  3. それぞれの発表の後に、参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分間行う。
  4. 全ての発表が終了した後に、「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員が1人1票で行い、最多票を集めた本をチャンプ本とする。

当日の進行

今回紹介されたのは以下の6冊です。

IMG_0099.jpg

結果は「敵とのコラボレーション――賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法」を発表したえわさんが優勝でしたが、1票差の僅差だったようです。

最終的に私もこの本に投票したのですが、どれに投票するかは相当迷いました。

決め手となったのは、私が元々国際紛争の研究をしていた関係もあり、絶対的に価値観の合わない人達をどのような手法を用いて和解に導くのか知りたいと思った点です。

発表者全員から紹介する本に対するアツい思いが伝わってきて、素直にどの本も読んでみたいと思いました(積読が増えてしまう)。初めてビブリオバトルを体験しましたが、知的好奇心を刺激される非常に濃厚な40分間でした。

OST

ビブリオバトルの次にはOSTが行われました。

OSTとは?

OSTとはOpen Space Technologyの略で「状況が複雑で多様な考えが入り混じっている状態から短時間で自己組織化を実現する話し合いの手法」だそうです。

今回は以下のような形で行われました。

  • 卓毎に議題が決まっている(議題を決めた人が司会を担当)
  • 参加者は興味のある議題の卓で議論に参加
  • 移動したくなったらいつでも移動してOK
  • 他の卓を覗くような(話している議題に興味なさそうな)素振りはしない(その前に移動)

各sessionは5卓に分かれて20分間議論する形でそれを3回行いました。議題は参加者が考えて決まったら人から前に出てきて発表し、早い者勝ちで好きな時間帯と卓を選ぶ方式でした。以下のような議題で行われました。

IMG_8191.jpg

ちなみに私が提案した議題は「1on1こうすると良いよ」でした。

1本目

1本目は小泉さん司会の「発信するってこわくない?」に参加しました。司会者の小泉さんがこれからまさにpodcastをやろうと考えているという話をされていたら、同席したよしぽんさんが既にpodcastをされているとの事で、お2人がpodcastをやろうと思った経緯だったり発信する事への不安をどのように乗り越えてきたか伺う事ができました。

私も発信を増やさなければと思いつつなかなか行動に移せないでいたのですが、小泉さんから「まずはこういう会の感想を書くと良いよ!」という助言をいただきました。今まさにこうしてこの記事を書いているのはその助言のおかげだったりします。

2本目

2本目は私が司会をつとめた「1on1こうすると良いよ」について議論しました。この議題を提案したきっかけはビブリオバトルの「仙台育英日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり」の発表でnaibanさんが監督による1 on 1の重要性を説いていた事にあります。私がまさにこれから新しいチームの立ち上げに携わる事もあり、実際に1on1を導入するとしたらどういう事に気をつけたら良いのか皆さんのお知恵を拝借したいという気持ちで提案しました。

皆さんからいただいた助言を付箋にして貼っていったらこんな感じになりました。

image_67215361.JPG

1on1は会社によってはlogが全社誰でも読めるように公開されていたり、1on1ではなく2on1や2on2の形をとったりいろいろな形がある事も知りました。なかでも特に大事だと感じたのは「1on1で達成したい事を共有する事」です。それができていないとお互いの時間を無駄にしてしまいかねません。

1on1で話す事に悩んだりしたら、おざわまなみさんが作成した1on1カードを使うと良いという情報もいただきました!

終了間際にえわさんが「DPAとDTAについて調べてみてください」と言われたので、調べてみたところ非常に興味深い記事を見つけました!

流し読みしただけでもかなり有益な情報である事を確信できました。皆さん親身になって助言をくださり本当に感謝しかないです。

3本目

3本目はかなみーさん司会の「あなたのオススメ本ツリー作りたい」に参加しました。

各自オススメの本について語る時間でしたが、初めて名前を聞く本も多く、またまた気になる本が増えてしまいました。

image_67220225.JPG

OSTは他の勉強会で体験した事はあったのですが、今回はやり方が違う部分もあって新鮮でした。他にも話したい議題はたくさんあったのですが非常に濃い60分になりました。

懇親会

終了後は海老名駅近くの居酒屋さんでの懇親会に参加しました。ここでも色々と面白い話ができたので、特に印象に残っている話を残していきたいと思います。

scrumのbusiness modelはSIerには向いてない?

SIer勤務の元さんが「SIerで働いてる人、手を挙げて」と言うフリから入ると、「scrumってSIerのbusiness modelには合わないよね」という事をアツく語られていました。「scrumって天井のないscaleの仕方が可能だから旨みがある」という話を聞いて確かにそうだなと思いました。基本的に請負の仕事になるSIerだとどうしても売上額には天井があるんですよね。

私が勤務する会社もいわゆるSIerなのですが、規模的には小さいもののSaaS部門も存在しています。全社的にみるとagile開発は全然浸透していないのですが、最初にscrumを本格導入すべき部門はSaaS部門ですよねとこの話を聞いて思いました。

software開発と製造業の品質の考え方の違い

なんぶさんが勤務する製造業のJTCでは「上層部から品質のばらつきについて苦言されるけど開発で品質がばらつくのなんて当たり前でしょ」という話も興味深かったです。私は前職が製造業だったので上層部の方がそういう考え方になりがちなのはすごく分かります。

製造業の品質管理の考え方は行きつくところが標準化というのが私の理解で、管理者は作業者全員に対して常に決められた同じ方法で作業する事を求めます。私の経験でもその枠からはみ出るようなやり方や考え方は嫌がられました。

私も標準化は基本的に良い事だと思っていたので、この話を聞いてハッとさせられました。作業者を枠にはめこんだような現場からは継続的改善や技術革新を期待するのは難しいと思います。software開発では継続的改善や技術革新があってなんぼだと思うので、そこに期待するのであれば品質面でも何でもかんでも標準化で型にはめこむのも良くないのかな、とか色々と考えさせられる話題でした。

ログラスさんの話

ログラスさんに勤務されているKyosukeさんからも面白い話をたくさん伺う事ができました。ログラスさんといえばagile開発の導入に関しては何歩も先を行かれている印象があって、scrumよりも難易度が高いframeworkを導入されているという噂を聞いた事があったのでそれについて聞いてみました。

そのframeworkはFAST Agileといって、FASTはFluid Adaptive Scaling Technologyの略です。やってみるとscrumとは違う難しさがあるそうですが、上層部が「うちの社員ならできる!」と信頼してくれているという話がすごく印象的でした。上層部の会話もDiscordで全て公開されているらしく、それは信頼関係があるからこそできる事でもあると思います。

芯から強い組織を作るにはそういう信頼関係は非常に大切だと思いますし、組織開発の考え方においても何歩も先を行っている会社さんなんだなと非常に感銘を受けました。

全く関係ないのですが私は趣味でpokerを嗜んでいて、私が知っている人でログラス社員の方がいらっしゃるのでその方の話をしたり、「ポーカー部」なるものがあってめちゃめちゃ盛り上がっているという話を聞いて羨ましいな〜と思いました。

二次会@小田急線?

懇親会の後は二次会組と帰宅組で分かれたのですが、私は片道3時間かかるのでそのまま帰る事にしました。たまたま帰りの電車でご一緒したぼのたけさんやくはらさん達と「もはやこれは二次会では?」と思えるような面白い話をたくさん伺う事ができました。

ぼのたけさんがビブリオバトルで発表されたAgile Retrospectivesの初版の英語版にはKPTのPがなくて、日本語版だけPがある、という話が特に印象に残っています。

日本人はP=問題を見つけてそこから改善という発想になる傾向がある一方で、欧米での振り返りを実際に見てみると「これやってみると良さそうだから試してみよう」という実験感覚なんだそうです。つまり、欧米では問題解決のための振り返りという感覚ではないようです。

私も当たり前のようにPから入って改善という発想になっていましたが、国によって考え方が違うのも面白いと思いました。欧米がそうだから日本でもその方が良いとかいう単純な話でもなさそうです。

くはらさん曰く、日本人は褒められるのに慣れてないので褒められると舞い上がってしまう一方で、欧米人は問題点を指摘されるのに慣れてないので指摘されると頭が真っ白になってしまう、との事でした。英語版にはKPTのPがないのに日本語版だけあるというのももしかしたらそういった背景が関係しているのかもしれないですね。

私もこれから携わる案件では欧米人もいたりするので、状況に応じて柔軟に対応できるような引き出しを持っておくのも大事だなと思いました。そういう意味でもすごくありがたい話を聞く事ができました。

最後に

運営・参加者の皆さんに暖かく迎えていただいたおかげで、初対面の人しかいないとは思えないくらい居心地が良かったです。皆さん本当に熱量が高く、多くの学びや刺激をいただく事ができました。改めて振り返っても得られた学びの深さに感動してます。片道3時間かけて参加させていただいた甲斐がありました。当日お世話になった皆さん、本当にありがとうございました。是非また参加したいです!

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