注意:
- Keychron K1に対してかなり厳しい評価となってるので、本製品が大好きは人は読まない方がいいかもしれません。
- 指摘してる矛盾点の感じ方は個人差があると思います。
Keychron K1とは、Keychronが販売している薄型キースイッチを採用しているメカニカルキーボードです。
- 標準的な英語テンキーレスキーボード
- 有線/無線対応
- 有線はUSB Type-C
- 無線はBluetooth5.1対応 (最大3台の登録、切り替えが可能)
- Windows, Mac, Android, iOSに対応
- 赤軸、茶軸、青軸のキースイッチを選択可能
- 大容量バッテリ、USB Type-C接続
- LED対応 (オプションにより白色、RGBを選択可能)
最近は日本にもクラウドファンディング経由で進出しており、そのデザイン、機能性を理由に注目してる人もそこそこいると思います。
私自身は普段はNiZ Plum(82key)という小型キーボードを使っており非常に満足していますが、好みのデザインと薄型キースイッチという珍しさに惹かれてKeychron K1 revision4を購入しました。revision4から分かるように、同じ製品でもマイナーチェンジにより継続的に改善が加わってます。ハードウェアの世界でもContinuous Deliveryが行われてます。
公式サイトURL
https://www.keychron.com/
2021/01/28 結論追記 (Keychron K3が矛盾を解消)
Keychron K2の薄型メカニカル版であるKeychron K3が発売したため、購入して数日間使用しました。現在はKeychron K3が個人的なベストキーボードであり今後のメインキーボードとなります。
本記事でも指摘した以下の2点の改善が盛り込まれているため、Keychron K1の矛盾が解消された素晴らしいキーボードであると評価できます。
- Optical Switch (White)を選択できるため、キー荷重が30gまで下がりました。大きな反発や重さを感じることなタイピングできるようになりました。
- キーボードの後ろ側の固定足の高さが高くなったため、キーボードの傾斜が大きくなりました。
現在所持してるKeychron K2 version2よりも省電力のためのスリープが早く、スリープ復帰がやや遅い点がやや気になりますが、パソコンでずっと作業してる間であれば問題にはならないため個人的には大きなマイナスにはなりません。
Keychron K3 |
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結論
ノートパソコンのパンタグラフキーボードのような浅いタッチの打ち方を期待している人は、Keychron K1を買わない方がいいです。
普通のキーボードに近い打ち方を要求されるようなキーストロークとキー荷重であるにも関わらず、キーボードの作り自体はノートパソコンのような軽いタッチの打ち方を想定した作りになっているという、矛盾を持ったキーボードです。
Keychron製品が欲しい人へ
Keychronのデザインや機能性に惹かれているなら、他の製品を購入することをお勧めします。
K6はHHKBのような癖が強いキーボードのため、ノートパソコン等の他キーボードも使う場合はK2かK8をお勧めします。ちなみにK1以外はキーボードの高さがかなり高いので、手根を浮かさないでキーボードを打つ人はパームレストが必須かもしれません。
- Keychron K2: Functionキーの段を備えた小型キーボード。一番右の列にDelete, Home/End, PgDn/PgUpなどが並んでるため汎用性が高い。Niz Plum(82key)もほぼ同じ配列。
- Keychron K6: Functionキーの段を排除した超小型キーボード。ただしチルダキーの位置にEscがあったり、2種類のFnキーで存在しないキーを打つ必要があったりとかなり癖がある。
- Keychron K8: 2020年8月頃に登場する一般的なレイアウトのテンキーレスキーボード。薄型スイッチではなく通常のスイッチを採用してます。
Keychron K1の何が問題なのか?
Keychron K1は薄型メカニカルキースイッチを採用することで、メカニカルにも関わらず薄型キーボードを実現している最大のウリであるキーボードです。薄型キーボードに期待するものは、当然ですが浅めのタッチで軽やかにタッチできることだと思います。
しかし、Keychron K1が採用する薄型メカニカルキースイッチはノートパソコンのような軽いタッチで打つことが難しいキー特性を持っています。以下は通常メカニカキーボードとKeychron K1のキーストロークとキー荷重の仕様比較です。
- キーストローク
- 通常メカニカルキーボード: 4.0mm
- K1: 2.5mm
- キー荷重 (赤軸キースイッチ)
- 通常メカニカルキーボード: 45g
- K1: 45g
上記の仕様から分かる通り、Keychron K1はキーストロークが2.5mmと浅くなっているにも関わらず、キー荷重は通常キーボードと同じ45gのままです。これにより通常メカニカルキーボードよりも底打ちするまでのキー押下中の抵抗が大きくなるため、結果的に通常メカニカルキーボードよりもキーが重く感じることになります。このようなキー特性をもつ薄型キースイッチのため、ノートパソコンような軽いタッチで打つのは無理があります。たまに見かけるやたらキーボードを強く叩くように打ち方をする人ならともかく、軽いタッチで打つような打ち方をする人には無理です。
「だったらもう普通のキーボードのように打てば良いのでは?」と思う方もいると思いますが、残念ながらKeychron K1はその「普通のキーボードの打ち方」を行うが難しいのです。
何故ならキーボード自体が薄型キーボードに特化したような作りになっているためです。このキーボードには傾斜がほぼありませんし、キーボードに傾斜をつけるための脚も付いていません。傾斜のフラットさという意味では、(ノートパソコン本体のキーボードを除けば)今まで使ったキーボードで最もフラットに近いかもしれません。AnkerのUltra Compactキーボードなどを持ってますが、K1よりずっと薄型キーボードにも関わらずキーボードの傾斜はそれなりについてます。前述した通りKeychron K1は薄型キーボードの中でもキーストロークが深くキー荷重は大きいため、キーボードの傾斜はより重要となります。だからこそ余計にこの傾斜の無さ、および傾斜を付ける余地(キーボードの脚)を与えない作りには驚きました。
Keychron K1のほぼフラットな傾斜が分かる画像リンク
上記の画像と手持ちのキーボードの傾斜を比較すれば、Keychron K1の傾斜が如何にフラットであるか分かると思います。
Anker Ultra Compact | Niz Plum (82 key) |
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このような作りになってるため、普通のキーボードに近い打ち方を要求されるキーストロークとキー荷重にも関わらず、キーボードの作り自体はノートパソコンのような軽いタッチの打ち方を想定した作りになっています。これがKeychron K1がもつ大きな矛盾です。これはもしかしたら薄型キースイッチを採用したメカニカルキーボード全般に言えることなのかもしれませんが、Keychron K1もrevision4に至る現在までこの矛盾を解消することはできていません。
補足: 何故Keychron K1の画像が外部リンク参照なのか?
Keychron K1の出来があまりにもイマイチだったので、会社に持参してそのままロッカーに閉まってるため手元にないためです。回収できたら写真を撮って差し替える予定です。
どうすれば良かったのか?
この2つを押さえれば改善できるでしょう。
- キー荷重を下げる (30g前後)
- キーボードの傾斜を大きくするか、傾斜調整の脚をつける
キー荷重を下げるだけでも大分改善すると思いますが、キーストロークが2.5mmと薄型キーボードとしてはかなり深い部類に入ります。このためやはりキーボードに傾斜を調整するための調整の脚をつけることが望ましいです。
(補足) キーボードの傾斜の良し悪しについて
ネット上の記事では「傾斜があると手首に負担がかかるため良くない」という研究事例が紹介されています。
しかしこれは手首あたりを机につけたままキーボードを打つことによって手首に不自然に曲がってしまう人に当てはまることです。
以下の対応を行って手首に負担をかけなければ良いのです。
- 肘の手前あたりを机に置いて、手首は浮かせながら打つ
- 手首あたりを机に置くのであれば、パームレストを使用する
このようにして手首に負担をかけない状態でキーボードを打つのであれば、キーボードに傾斜がある方が後方段のキーを打つときに手や指の移動が少なくなります。逆に傾斜がない場合は、後方段のキーを打つ時にやや無駄な弧を描く形で手や指を動かすことになります。この弧を描くような手や指の動かし方だとキーに対して力を効率的に伝えるのが難しいため、ストロークが深かったり、キー荷重が大きいキーボードとの相性が悪いです。もちろん今回取り上げたKeycrhon K1も相性が悪いです。
一回の動作は微々たるものですが、開発などで1日に何千、何万とキーを叩く可能性があることを考えれば意識してみる価値はあると思います。歩き方、座り方、立ち方などと同じようにキーボードを打つフォームや動きも大切です。
(おまけ) 個人的ベストキーボード考察
複数台のパソコンでVim、VisualStudio Code、JetBrains製IDEなどを使う視点からの個人的キーボード考察です。
まずはキーボードを選択する上での重要な要素について整理します。並べてる順序には特に意味はありません。
-
省スペースであること
- 使用してる親トラックボールとの距離があまり遠くないのが良いです。
-
US配列であること
- US配列の方がキーボードの選択肢が圧倒的に多いです。特に海外はKeychronのような新興勢力メーカーも多いので。
- 13インチ以下のノートパソコンの場合、JIS配列だと右側のキー幅などが極端に狭くなる問題があります。
- 上記2点の通りハードウェア観点の理由だけです。これを除けばUS配列自体に有意なメリットはありません。会社によってはJIS配列の方が苦労しないのも事実です。
-
左端からEnter側までの範囲は一般的なキーボードレイアウトであること
- ノートパソコンのキーボードを使う時に混乱しないで済みます。
- 最上段のF1~F12のファンクションキーがあることも一般的キーボードレイアウトの条件になります。
-
キーボードとしての基本性能が高いこと
- 打鍵感が良く、押下時に反応しないことがないことが重要です。
- 静電容量無接点方式、メカニカル方式のピンク軸/赤軸/茶軸あたりが理想です。ちなみに職場も考慮して静音重視のため、静電容量無接点方式が一番好きです。
- キーストローク、傾斜、キー荷重、キースイッチ品質のバランスが取れていれば、薄型キーボードでも通常キーボードでもOKです。
-
有線接続に加えて、Bluetooth接続に対応し、3台以上の機器への接続&切り替えが可能なこと
- パソコンが複数台あるためBluetooth切り替えがあることは必須です。
- 混線する環境のため、有線接続という選択肢は欲しいです。
次に気にしてない要素について。
-
キーボード側でのキー入れ替えや切り替え
- vimのために「Esc押下時にIMEオフにする」等の設定をソフトウェア側で行っているため、CapsLockのCtrl化など含めてOS/ソフトウェア側でまとめてやってます。
-
値段
- 仕事道具という建前があるので、2-3万円程度であれば特に気にしません。
-
キースイッチ耐久性
- 寿命まで使い切るとかは気にしません。メカニカルや静電容量無接点方式なら尚更です。
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ゲーミング要素
- 値段があまり変わらないのであれば気にしません。実際には値段が無駄に高くなりますが。
- LED自体は気分転換に使うのは好きです。ちなみにKeychronもLED付いてます。
-
防水
- そもそも防水スマホでも濡らしませんし、風呂で使う場合もジップロックに必ず入れます。
これを踏まえた、これまで使ってきた代表的なキーボードの簡単な評価です。
結論を先に言うと、2020年時点ではNiZ Plum(82 key)が個人的なベストキーボードです。
- 東プレRealforce
- 静電容量無接点方式のUS配列テンキーレスは、キーボードの基本性能は文句なしです。
- 15年くらい前はベストキーボードでした。
- ただしBluetooth対応などの進化が全くないにも関わらず値段も据え置きなので、2020年時点では選択肢とはあり得ません。
- HHKB(Happy Hacking Keyboard) Professional
- 特殊すぎる配列の時点で選択肢から外れます。特にEscとチルダの配置は個人的に致命的です。
- ノートパソコンを含めた他キーボードも併用するので、キーボード間のコンテキストスイッチのオーバーヘッドが大きくなることは許容できません。
- メカニカルキーボード全般 (FILCOなど)
- 茶軸/赤軸/ピンク軸のキースイッチ、Bluetooth対応、US配列テンキーレスなど選択肢に困りません。
- NiZ Plum(82 key)に乗り換えるまで、FILCOの
Majestouch Convertible 2 Tenkeyless 赤軸・テンキーレス・英語 US
を使ってました。
- NiZ Plum
- 中国メーカーの静電容量無接点キーボードです。テンキーレス、小型、超小型と種類が豊富です。
- 82 keyの小型キーボードはテンキーよりさらにコンパクトでありながら、左端からEnterまでのキーボードレイアウトはほぼ標準的なものです。
- Bluetooth対応なども含めて必要な条件は全て満たします。
- 東プレRealforceがずっと昔にやるべきだったBluetooth対応を含めた進化を済ませてます。
- Keychron K1
- 本記事に書いた通り、キーボードとして基本性能というかバランスが悪いため論外です。それ以外は評価は高いのですが。
- 2020年になってキーボードの基本性能について苦言を呈するとは思いませんでした。