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4つのauto、4つのC++規格

Last updated at Posted at 2019-03-23

プログラミング言語C++のキーワード auto による型推論のおかげで、C++プログラマはソースコード上で型(type)を明示しないプログラムを書けるようになりました。

2020年にリリース予定されている最新仕様「C++20」では、とうとう下記コードのようにautoまみれの関数テンプレート1を書けるようになります。ナニコレ...

cpp20.cpp
template <auto N>
auto func(auto x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

// 呼出し例
assert( func<1>(0.5) == 1.5 );

この記事では、C++言語仕様改定により導入された各autoキーワードの役割を説明します。同時に、該当用法が存在しなかった時代でもコンパイル可能なソースコードへの書換えも行います。

C++20時代

C++20では 関数パラメータ型にautoを書ける ようになります。これはC++言語仕様へのコンセプト(Concept)導入とともに追加された、関数テンプレート定義の短縮記法 です。

cpp20.cpp(再掲)
template <auto N>
auto func(/*👉*/auto/*👈*/ x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

現行C++17仕様の範囲内で書き直す場合、関数テンプレートに新たに型パラメータUを導入し、引数型として利用すればOKです。

cpp17.cpp
template <auto N, typename U>
auto func(U x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

これならもう読めますよね?(無理?)

C++17時代

C++17では テンプレートパラメータ型にautoを書ける ようになりました。つまり 非型テンプレートパラメータのauto宣言 です。

cpp17.cpp(再掲)
template </*👉*/auto/*👈*/ N, typename U>
auto func(U x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

C++14仕様で書き直す場合、関数テンプレートに新たな型パラメータTを導入し、そのうえで非型テンプレート引数Nを取らねばなりません。書き直した関数テンプレートにはTNの両パラメータを指定する必要があるため、呼出し側コードの記述も冗長になります。

cpp14.cpp
template <typename T, T N, typename U>
auto func(U x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

// 呼出し例
assert( func<decltype(1), 1>(0.5) == 1.5 );

冗長。ダサい。しかし気を落とさずに時代逆行を続けましょう。

C++14時代

C++14では 関数戻り値型にautoとだけ書いておける ようになりました。関数本体にあるreturn文の内容から戻り値型が推論される、通常関数の戻り値型推論 という機能です。

cpp14.cpp(再掲)
template <typename T, T N, typename U>
/*👉*/auto/*👈*/ func(U x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

C++11仕様で書き直す場合、戻り値型のautoキーワードはそのまま使えますが、関数宣言末尾への型明示が求められます。つまり関数本体のreturn文で返す予定の型を、宣言時にも型導出しておく必要があるのです。

cpp11.cpp
template <typename T, T N, typename U>
auto func(U x) -> decltype(N + x)
{
  auto r = N + x;
  return r;
}

// 呼出し例
assert( func<decltype(1), 1>(0.5) == 1.5 );

なにこれ面倒くさい。もうちょっとだけ続くんじゃ

C++11時代

C++11は キーワードautoが型推論の意味を持つ ようになった最初のバージョンです。厳密には 変数の型推論戻り値の型を後置する関数宣言構文autoキーワードは異なる意味を持ちますが、さほど気にしなくても良いでしょう(前者=型推論/後者=プレースホルダ)。

cpp11.cpp(再掲)
template <typename T, T N, typename U>
auto func(U x) -> decltype(N + x)
{
  /*👉*/auto/*👈*/ r = N + x;
  return r;
}

// 呼出し例
assert( func<decltype(1), 1>(0.5) == 1.5 );

さて、これをC++03仕様で書き直すのは本当に大仕事です。C++03時代のautoキーワードは実効上の意味をもたず2式から型を導出するdecltype も存在しません \(^o^)/

C++03暗黒時代

暗黒のC++03時代には、偉大なる Boostライブラリ が大抵の問題を解決してくれました(ほんまか?)。2019年にもなって古のテクニックを紹介する意味もないでしょうから、意図通り動いたソースコードだけ貼っておひらきとします。

cpp03_with_boost.cpp
#include <boost/typeof/typeof.hpp>
#include <boost/utility/declval.hpp>

template <typename T, typename U>
struct result_of_add {
  typedef BOOST_TYPEOF_TPL(
    boost::declval<T>() + boost::declval<U>()
  ) type;
};

template <typename T, T N, typename U>
typename result_of_add<T, U>::type
func(U x) {
  BOOST_AUTO(r, N + x);
  return r;
}

// 呼出し例
assert(( func<BOOST_TYPEOF(1), 1>(0.5) == 1.5 ));
  1. autoキーワードの役割説明のためのコードですから、関数テンプレートの具体的な処理内容にはあまり意味がありません。

  2. C++03時代のキーワードautoは、ローカル変数が「自動記憶域期間を持つ」という意味でした。つまり何気なく記述するローカル変数宣言 int a;auto int a; と等しいという意味です。当然ながらこの目的でautoを明示記述するC++プログラマなど存在せず、C++11からは新たに「型推論」の意味を与えられて復活しました。

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