はじめに
とある記事を書いていたら、「Personiumとは何だ?」というところから
書き始めなければならないという気がしてきたので、解説ページとしてリンクを貼れるように書いておきます。
この手の内容、書くたびに私の理解も変わっているので、二度三度説明が変わるかもしれません。
ご指摘/編集リクエストも是非お願いいたします。
PersoniumはいまホットなPDS (Personal Data Store)を実装に落とし込んだサーバソフトウェアです。
(https://qiita.com/yoh1496/items/804181a4cb2759f0789a より)
よくわからん。そもそもPDSとはなんだ。
私のPersonium、PDSの認識
私はPersoniumのコア開発メンバーでもなんでもないんですが、
アプリ開発者として噛み砕いた個人的な認識を書きたいと思います。
なお、PDSの利便性を語る上で、切っても切り離せないのが個人情報保護の観点なんですが、
法律を絡めるとまた難しくなるので(というか私の手には負えないので)省きます。
従来の個人データ
まずは購買履歴を例に挙げて現在の個人データの問題点を紹介したいと思います。
私はいろんな通販サイトを比較して一番オトクに買えそうなところで商品を買うんですが、
下記サイトをよく見ます。
- amazon.co.jp
- au Wowma!
- 楽天市場
- Yahoo!ショッピング
- ひかりTVショッピング
- オムニ7
そうするとよくあるのが
Yahoo!「〇〇がオススメ!」
ぼく「それもうwowmaで買っちゃったよ」
という状況。当然Yahoo!ショッピングは自サイトでの購買履歴のみしか持ち合わせていないため、
他サイトで買った商品もオススメしてしまう現象が生じるわけです。
こういった状況は購買履歴データが各事業者に分散してしまっていて、
結果的に「LOSE-LOSE」な関係になってしまっていると考えます。
事業者側はユーザーの購買履歴を完全な状態で手に入れることができないので、
本来であればもっとよい広告が打てたはずが、空振りしてしまいます。
事業者側「(あのユーザーの購買履歴が手に入ればなぁ・・・)」
ユーザー「(なんかズレてるなぁ・・・こんな広告打たずに値引きしてよ笑)」
みたいな状況です。
(私なんかはパーソナライズド広告が嫌いで、嫌悪感を抱いてしまうんですが)
当然ECサイト同士は競合ですので、自サイトの顧客の購買履歴など渡したくないですし、
利用規約的にも勝手に渡したら大問題になりますね。
一方で、カレンダーサービスのように、他社と連携することで価値が出るものであれば
現在も行われているように oAuth2
で連携できるようなサービスもあるにはあります。
PDSの目指す姿
そういった事業者ごとに分散している個人データを集約し、活用を可能にするのが
「PDS(Personal Data Store)」 です。
パーソナルデータのあり方を変える!オープンソース分散型PDS「Personium」を使ってみよう!
パーソナルデータの集約
個人データを集約するという点では、マネーフォワード が想像しやすいと思います。
自動家計簿・資産管理サービス『マネーフォワード』、利用者数500万人突破~家計簿アプリ利用シェアもNo.1に~
家計簿アプリでは確固たる地位を築いているサービスですが、
様々なサイトに分散している自身の購買履歴を集約し可視化するだけでも、
月々の出納管理に使用できるという価値を生み出していると言えるのではないでしょうか。
Personal Data Store、という字面だけで見ると個人データを集約するだけでも十分な気がしますが、
**「パーソナルデータの活用」**もPDSにとってはとても大事な要素です。
パーソナルデータの活用
PDSに集まった個人データは個人の資産なので、個人の意思で情報を他者に提供して
有効に使えるようにすることで、
先程ような「LOSE-LOSE」な関係ではなく、「WIN-WIN」な関係を作れるのではないか?
というのが「パーソナルデータの活用」のポイントの1つです。
パーソナルデータのあり方を変える!オープンソース分散型PDS「Personium」を使ってみよう!
一般に、今流通しているデータは匿名化され、個人が特定できない形になっています。
そういったデータで行われるマーケティング・サービスが精度の低いものになるのは想像に難くありません。
(実際、要らないものがリコメンドされることは多々あると思います。)
事業者としては、個人の生なデータがほしいはずです。
しかし、それは俗に「ディープデータ」と呼ばれ、とても扱いが難しいのが現状です。
PDSを通じて、
「信用のおけるサービスのみに、蓄積された自身のディープデータを提供」
できるようになると、事業者は質の良いサービスを個人に提供・価値を還元できるようになります。
実際のPDSサービス
paspit - パーソナルデータを便利に、安全に - パスピット
株式会社DataSignによるPDSサービスです。
以前MyData Japanでデモを見せていただいたことがあるんですが、
そこではAmazonの購買情報をスクレイピングして、パーソナルデータとして収集/活用するデモを行っていました。
蓄積されたデータに対して企業から「オファー」が届き、
それを受けることでユーザーが対価を得られる、といった内容です。
Personiumの特徴
ここまではPDS一般の話を紹介してきました。
ここからは Personium という OSS の特徴を記載します。
非中央集権的なPDS
Personiumの最大の特徴は OSS であるということで、「誰でもPDS事業者になれる」という点です。
また、PDS同士がHTTPSでつながるので、個人が好きなPDS事業者を選択することができます。
データ開示・被開示という関係で結ばれたPDS群は、
特定の事業者が胴元(⇒ 一人勝ち)になるのではない
中心を持たないDecentralizedなネットワークを構成します。 (分散ソーシャルグラフ)
と、ドキュメントにあるように一人勝ち(≠中央集権的)にならない世界を実現可能です。
標準化されたインタフェース
個人データの格納には、WebDAV
やOData
といった、標準化された技術を使用します。
よって、既存のライブラリで読み書き可能ですし、
APIもHTTPS通信を経由して実行するため、IoT機器やゲーム機など、
様々なデバイスを接続することが可能です。
イベントドリブンな処理の記述
Personiumは Backend as a Service として開発されていた経緯もあり(作者ブログ)、
機能はいたれりつくせりです。
中でもイベントドリブンな記述が可能なのは特筆すべき点で、
cronのように時間間隔を指定して任意のスクリプトを実行する他、
特定のデータに更新があった場合に新たに処理を走らせる、
なども実装することができます(FaaSっぽい)。
おわりに
今回改めて自分の中のPersoniumというOSSが目指す未来というものを考えつつ、
自分の認識を書き出してみました。
Personiumを知った当初は、
「すべてのユーザーのデータはユーザー本人が管理可能であるべきで、事業者は秘匿すべきでない」みたいな過激な思想も含まれてるのかなと思っていたんですが、
MyData Japanなどでの講演を聞くと、
「ユーザーに"も"データを活用可能にすれば、もっと便利な社会がきませんか?」というような、
価値観に近いのではないかなと感じています。