はじめに
私は、能登半島地震での現地の支援団体の1つである「NPO法人 ユナイテッドかながわ」さんをお手伝いしています。IT屋さん(SEのスキルを持っている人)から見て、状況や求められたこと、やってみたことなどを報告します。
なお今日も、今も、現地で泥まみれ汗まみれになって活動をしてくださっている方がいて、本当に頭が下がります。私は今のところ現地には入らず、自宅で技術サポートをしたり、メールでの募集の受け答えを手伝っています。
支援チームの人たち
スキル状況
事務局には、IT専門の方はいらっしゃらない状態。Google Formsを作ったり、LINEグループの管理等ができる、パソコンは使える方がIT担当をされていて、他は基本的には現地で体を動かす方です。
現地では、体を動かす方のみ。数日間という短期間で、チームへの出入りがあります。
ITに関しては、若い人は、LINEグループで、状況報告や、Google Mapを使って今の自分の位置を共有、写真をアルバムに入れたりしています。50代、60代、それ以上のご年配の方も多く、教わりながら必要に応じて使う感じ。
活動状況
IT担当の方を含め事務局の方は、平日の日中はご自身の仕事をしていて、平日の夜と休日にリモートでサポートしたり、報告書を作っています。なのでタイムリーに対応できるわけではありません。またそれでも、ボランティアの募集受付を電話でしていました。
現地の方は、毎日朝から夕方までくたくたになるまで、体を動かしています。日中の活動中は雪や雨が降ったり作業で泥だらけになっているので、スマホの操作はあまりしたくないし細かいことはしてられない。夜は体力的に疲れています。
課題と対応とその後
# | 課題 | 対応技術 | その後 |
---|---|---|---|
1 | 応募者の交通整理 | Airtable | 利用中 |
2 | 車の利用記録 | Google Form | 使われていない |
3 | 現場でのタスク整理 | 未対応 | |
4 | 現場からの日報登録 | Google Form? | 検討中 |
5 | 総括報告書の作成 | ChatGPT? | 検討中 |
6 | 位置の共有 | 地図アプリ? | 検討中 |
順に説明します。
1. 応募者の交通整理
■要望内容、背景
ボランティアの応募者の登録です。最短3日間の短い期間の出入りを、電話で受け付け、Google Spread Sheetに書き入れていました。
活動者の氏名、性別、期間、宿泊の要否など。それらを1名ずつ登録し、日ごとに集計して見る形。
来ると連絡があったけど来なかったり、都合が悪くなって早めに切り上げたり、逆にアポなしで今日入れますか?って来たり、当日現地でイレギュラーが多発します。
課題点は、①電話での受付と、②情報の管理でした。
■解決策
概要
Airtableというサービスを使い、解消しました。
Airtableの特徴
- ノーコード、フルマネージドなRDB
- Google Formsのようなきれいな登録フォームを作れる
- 登録や時刻などをトリガーにした、オートメーションを作れる
- アクションには、JavaScriptでコードを実行できる
- 簡単なBIを作れる
- ある程度無料でできる
詳細
作った仕組みは大きく3つ。紹介します。
(1) 登録フォーム
URLを知っていれば誰でもアクセスできる形で、募集フォームを作りました。募集要項がどうしても冗長になってしまうので、そこを簡潔にわかりやすくすることも私のタスクの1つ。
(2) 参照ビュー(一覧型、カレンダー型、カンバン型)
Airtableでは、DBに登録さえすれば、それを元にビューとして様々な形で表示や編集ができるので、Excelのような一覧型にフィルターを付けたものや、カレンダー型で今週参加する人を確認できるもの、カンバン型で連絡状況を確認するものなどを使っています。
なお🛏は宿泊希望の方、は女性の方で、管理上考慮が必要なのでわかるようにしてあります。
(3) LINEで明日の参加者共有
明日の参加予定メンバーを、毎日18:30にLINEで投げています。
技術的には、まずAirtableのAutomationsを、夜の定期実行で起動します。次に、起動されたアクションのJavaScriptで、Airtable内のデータを使って明日の参加者一覧の文字列を作ります。そしてLINEのMessaging APIを使って、管理者グループへ投稿しています。
■その後
Airtableの登録フォームに従って入力してもらい、その結果、明日の参加者情報が毎日LINEに勝手に流れてきています。(フォーム登録後に、それを見て事務局の人がメールで連絡はしている)
私の懸念点としては、Airtableのレコードが情報のベースなので、現地に急に来た人とか、事務局に言ってないけど宿泊施設に宿泊しているとか、現地とDBのギャップはあるんだろうなーとは思っています。でもこの懸念点は、現地発信ならともかく私から言い出すのは変なので、ここまでです。
2. 車の利用記録
■要望内容、背景
現地では、NPOが持つ車や、現地で借りる車、参加者が乗ってくる車など、様々な状態の車が使われます。それらで幅が狭くなった路地や悪路を通り、そしてがれきや重い荷物を運ぶので、時折車両に傷がついたり、調子が悪くなったりします。
作業が終わって暗い時間に各々で解散し、翌朝その状況に気づいたり、しばらくしてから気づいたりするので、あの時誰が乗ってたっけ・・・?詳しく話を聞きたい、でも誰かわからないという問題です。
■解決策
Airtableで、名前と車両番号だけ登録する、超簡単なフォームを作ってみました。そのURLを QRコード作成【無料】/QRのススメ を使わせてもらってQR化し印刷し、それを車に置いておこう!使うときに登録してね!となりました。(QR化、この件以外にも、すごく使い道が広いです)
■その後
作ったものの、DBに登録される気配がなく、どうやら車にQRコードは置いてなさそうだし、あったとしても誰も登録していない。つまり、システムはリリースしたけど、運用に乗っていないです。
大したものではないけど、IT屋さんとしては残念。
運用に乗らない理由の1つとして、登録しなくてもその時はまったく困らないことがあると思います。困るのはたいてい後日だし、しかも頻度は低い。
これはいかに登録を簡単にするかってところがキモですが、システム的にこれ以上簡単にはできなさそうなので、現地で「登録して!」という指示の強さ次第かなと思いました。
3. 現場でのタスク整理
■要望内容、背景
現場では、ときには10名以上が流動的に小チームを組んだり離れたりして、複数のタスクを協力してこなしています。
タスク自体は基本的には朝確定しますが、作業中にお向かいの家から声をかけられて「後でついでにやっときまーす!」って受けたり、発生源や粒度がいろいろ。
問題点は、タスクが多くて忘れそうとか、あっちの作業が大変そうという状況がわかりづらいことです。
基本的な情報は「位置情報」「その呼び名(角の〇〇さんの家とか)」「作業内容」です。また位置情報は、Google Mapのような地図だけでなく、家主の名前が書いてある住宅地図が必要です。
なので、単純に言うと漏れ防止みたいな言い方になってしまいますが、実は高度なタスク管理が求められます。
■解決策(未対応)
今のところ、解なしです。
タスク管理、地図・住宅情報、メンバー・チームの所在確認、メンバー編成、このあたりを包括的に解決できないといけなさそうです。
私の感覚では、現場にタクシーの指令所みたいな役割の人がいないといけなくて、その人が主に使うシステムになるのではと想像しています。タクシーみたいなメンバーが、今どこで何をしているかをすべて把握して、采配する役割です。そうだとして、まずは紙でやってみないと、この複雑な要件は正確に把握できないのではと思っています。
4. 現場からの日報登録
■要望内容、背景
今は毎日、リーダーに紙に書いてもらって、誰がどこで何をしたかを報告してもらっています。最終的にはNPOの活動報告書のベースになります。
紙をスマホで撮ってもらって、それを事務の方がまとめている状態なので、システム化して省力化したいという要望です。
問題点は、疲れ切っているメンバーに報告してもらうことです。もともとITが得意なわけでもない人が、スマホの小さな画面で、10人近くの作業内容を包括して入力しないといけないです。各自で入れてもらうのもそれはそれで、粒度やら書き方がバラついて大変そう。
■解決策(検討中)
ひとまず、Google Formsで登録フォームは作ってあります。Google Formsは、写真をアップロードすることもできるので、現場の状況を撮影した写真を使って報告することもできます。
ですが今は、現場で手書きを撮影した写真を見て、事務局がその登録フォームから手入力しています。現場の負担が重いから、事務局が持っている状態。
技術的にはクリアですが、事務局の負担だって重い。どうしようってなって、イマココです。
次の解決案としては、スマホで撮った紙の報告書から、文字起こししてDBに登録するか、音声で報告してもらう、と案が出ています。前者は、おそらく不可能。手書きの文字を読みとるのは限界があるので。となると音声。フォーマット化がポイントでしょうか。検討中です。
5. 総括報告書の作成
■要望内容、背景
NPOの活動報告として、4番の日報を集め、1か月間などで総括した報告書を作成する必要があります。日報をもう一度読み、これっというものをピックアップして適切に要約するというタスクです。
■解決策(検討中)
詳細をまだ聞けていないのですが、Chat GPTでできるかもしれません。AIに100点を期待するのではなく、文章は大まかに書いてもらって、写真の選別等は人間がやるなど分担すれば、結果的に省力化はできそうです。
6. 位置の共有
■要望内容、背景
3の現場でのタスク管理の一部になりますが、今どこにいるという情報の共有です。今は、Google Mapで現在地を共有できるので、これを使っている人が多いです。ただちょっとめんどくさいし、発信してもらわないといけない。
こちらは、実はスマホアプリがあります。ずっと位置情報を発信し続けるのも気持ち悪いので、一時的に使うというものもあります。ドライブとかで使うとのこと。なるほど。
問題点は、LINEグループで情報共有しているので、それとは違うルートで位置の情報共有すると、二重管理になってしまうことです。
また、高いITリテラシーを必要としない方がいいし、できればスマホにインストールしないサービスがあったらいいなぁ。
■解決策(検討中)
検討自体まだあまりできていませんが、私は、3の現場でのタスク管理の状況と同様、現地で見てみないと現実的な要件を定められないのではと思っています。
おわりに、所感
長々と書いてしまいましたが、被災された方の支援、そしてそれを支援している人の支援を、今後も私のできる範囲でさせていただきます。
是非このQiitaを読むようなITリテラシーの高い方々から、アイデアやノウハウ、お手伝い等、お声がけいただけると嬉しいです!