こんにちは。KDDIアジャイル開発センターのサービスデザイナー よねみちです。
生成AIを用いたto Bプロダクトのスクラム開発や、お客様のDX・新規事業創出のきっかけとなるデザインスプリント支援などを行っています。
はじめに
レビューや会議で誰かが「詰められてる」様子、心にきますよね。自分がやられるのはもってのほかですが、周囲で発生するだけでも心がすり減ります。。
特に、何か問題が発生したときや、参加者間の誤解が解消できないときに「詰め」が生じがちです。
質問する側の、焦りや不安から「なぜ?」「どうして?」「つまり?」と質問マシーンになってしまう気持ちも理解できるのですが。
問い詰めてしまい心理的に不安全な状況に陥ると「ミスを隠そう、自分が責められないようにしよう」と回避する力が働きはじめ、結果として「正確な状況がわからない」「適切なアクションが取れない」といったチームとして重大なリスクに発展するかもしれません。
こうした「詰めてる」感が出る嫌〜〜な状況を回避しつつ、知りたいコンテキストはしっかり把握できるように 「なぜ」を使わずに理由を引き出すテクニックを紹介してみます。
前提
これから紹介するテクニックはあくまで小手先の工夫であり、次善の策です。
- テクニックを使うよりも先に、心理的に安全な組織を作り維持することを心がけましょう
- 結局は、質問する側が相手と真摯に向き合い、対話する姿勢を持つことが必要です。これがないと「嫌味な言い方で詰めてる人」になります
しっかりと心理的安全性を確保して「なぜ?」とストレートに聞く方が効率的ですね。
場面設定
この記事で紹介するテクニックが役に立つのは、例えば以下の場面です。
- チームとしては心理的安全性が確保できており、普段の関係性には問題ない
- レビュー等の場で、何らかのイシューに対して個人への質疑応答が長く続くなど、ちょっとピリッとした雰囲気になりかけているとき
- ポジショントークや論理的な回答よりも、相手の率直な意見や背景が知りたい時
また、以下の時にも良いでしょう。
- チームに新メンバーが参画した直後で、関係性が構築しきっていないとき
- 新入社員とのコミュニケーション
結論
「なぜ」を「WHY」以外の4W1Hに言い換えて質問します。
例文1
「なぜ進捗が予定よりも遅れているの?」
WHATを使う:「何が遅れの要因になっているの?」
WHENを使う:「いつのきっかけから遅れ始めたの?」
例文2
「なぜその仕様になったの?」
WHATを使う:「そのソリューションにした決め手は何だったの?」
HOWを使う:「どういう経緯でその仕様に至ったの?」
WHEREを使う:「どこか参考にした情報があったの?」
例文3
「なぜルールを破ったの?」
WHATを使う:「何があなたをルール破りにさせてしまったの?」
WHEREを使う:「ルールのどういうところが守りづらかったの?」
ポイント
WHATなどの疑問詞を使い、それを主語にすることであえて他責の質問文にします。
英語で考えるとわかりやすく、"What made you ~~?"という感じです。無生物主語。
理由が回答者の内面にあると仮定せず、外的な仕組みにあると仮定した文章になるため、心理的なプレッシャーが軽減されます。
なお、これらの言い換え文は直接的に理由を聞かないため、背景や経緯が返ってくるのが自然です。質問する側は結論を急がずに丁寧にヒアリングする姿勢で臨みましょう。
返答が想像よりも短かった時は「もっと聞かせて」と続けると良い感じです。
解説、参考
「なぜ」を使わずに理由や背景を探るテクニックは、デザイナーが行うユーザーインタビューでよく使われます。ありのままのユーザーの気持ちを引き出すためには論理的に内面を問う「なぜ」よりも、過去や現在に目をむける「どこで」「何が」「いつ」の方が向いています。
インタビューのテクニックとして紹介されている記事の例です:
https://note.com/miz_kushida/n/nb5e73ebe686e
また、インタビューを越えて対話のテクニックとして紹介されているこちらの記事もよく参考にしています。詳細な解説付きです:
https://note.com/shoty/n/neef4d130d506
まとめ
先日、スクラムチームの雑談でこのテクニックを紹介したところ好評だったため記事にしてみました。
ちょっとした言い方一つで意外とレビューの雰囲気が変わるものです。
皆さまのチームが平和・前向きに課題解決に取り組む一助となれば幸いです!