本日はさらに根本的な議論に立ち返り、統計のウソを見破るための視点について記したいと思います。
世の中には何らかの意図に基づいて歪められたデータ、あるいは悪意はなくとも失敗しているデータ、これらを可視化したグラフが散見されます。
素人が統計学者や経済学者などの専門家の調査結果を正確に検証することができるわけではありません。しかしこのようなときに忘れずに疑問を持つことで検証可能性を探ることはでき、また答えが分かれば歪みを看破することができます。
統計のウソを見破る 5 つの視点
- 誰がそう言っているか (統計の出所に注意)
たとえばある政治政党に支持をする人にだけアンケートをおこなえば歪んだ世論を作りあげることができます。労働者の意見だけを吸い上げて、多くの人が社会に不満を持っているという統計を取ることもできます。
- どういう方法でわかったか (調査方法に注意)
1200 社にアンケートをとって、そのうちわずか 1 〜 2 割しか回答が無かったとします。そこから商品の値段についての満足度調査をおこなっても、有意なサンプルから統計を取ったとは言えません。
- 足りないデータはないか (隠された資料に注意)
地方の村におきたある天災で 20 代女性の 3 人に 1 人は死亡したというセンセーショナルな統計があったとします。この村にそもそも 20 代女性がたった 3 人しかいなければ、たまたま 1 人が亡くなったというだけにすぎません。この場合は母数というデータが足りてないことになります。
- 言ってることがまちがっていないか (問題のすりかえに注意)
会計士が剰余金という言葉は聞こえが悪いとし、貸借対照表からこの言葉を削除して固定資産償却など別の言葉を割り当てたとします。これにより今年の剰余金は昨年度と比較して大幅に減少し 0 となりましたと言っても、これは問題のすりかえにすぎません。
- 意味があるか
アメリカのテレビの普及台数は 1947 年から 5 年間でほぼ 10,000% 増加しました。この増加率をその後の 5 年間に見込みとしてそのまま当てはめると、アメリカ全土でのテレビ普及台数は 20 億台になり、 1 家庭あたり 40 台のテレビがあることになります。このような統計には意味がありません。
参考
今回は下記の書籍を参考にしました。下記書籍は本物のデータをもとにした統計的誤りを例を交えてやさしく解説しており、ウソにだまされないようにするために専門家以外のかたにも万人にオススメできる本です。
統計のウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス) [新書]
http://www.amazon.co.jp/dp/4061177206
考察
統計数理に基づいた手法を駆使する場合でも、意味のある誠実な統計分析をしなければなりません。高度な計算におぼれる前に、良いデータを集めて作るというところからはじめましょう。
失敗は時として避けられないとしても、歪んだ結論を意図的に導き出そうとするような悪意は持たないようにしましょう。職業倫理を大切にしましょう。