ITエンジニアをしていたり、志している人たちの中で海外に対して憧れを持っていたり、いつかは海外でエンジニアとして働きたいと思っている方は多いのではないかと思います。
私は今年の3月に大学院を卒業したあと5月から9月までカナダのトロントにてWeb系のエンジニア 1として就職しようとしていました。
結果はと言うと、就職は難しく、(特に新卒での就職は鬼のように難しい) 今までの人生の中でも特段に苦しい時期となりました。
この今となっては味わい深い苦しさを記録するためと、この経験が海外で働きたいと思われている方に少しでも参考になればと思い記事として投稿します。
経緯
もともと大学生時代の私はあまり海外志向の人間ではなく、むしろ自分には一生無縁のものと考えていて、その頃は数年後に海外で就職しようとしているとは夢にも思っていませんでした。
転機となったのは大学院でのアメリカのブラウン大学 2と共同研究に参加したことで、ハーバード卒のプロジェクトリーダーの元で情報圧縮の研究をするという貴重な経験をすることができました。
このプロジェクトリーダーがすごい人で、発しているエネルギーというかオーラみたいなものがありました。この経験に大きく刺激され、これは本格的に海外で勉強したいと思い北米に留学することに決めました。
(留学費用を貯めるためにプログラマーとしてのバイトをしたが関わることになったのはヤバめの炎上案件だったのはまた別のお話)
その後、大学院の卒業を一年遅らせ、カナダのナイアガラ近くの田舎の大学で半年留学し、組み合わせ最適化について人工知能でのアプローチに取り組みました。
その大学でお世話になった教授からせっかくだから若いうちに数年カナダで働いてみたら?という提案にのせられて日本での大学院を卒業後にカナダに戻ってくることを決心しました。
トロントという場所
トロントはカナダのシリコンバレーと呼ばれており、機械学習分野は特に有名でDeep Learningはトロント大学のヒントン教授らによって提唱されたこともありワークショップなども非常に盛り上がっています。
また、トロントはカナダの中で一番経済規模が大きく、スタートアップの立ち上げも盛んで、よりよい競争と環境の中で活動ができると考えました。
さらに、アメリカと違って30歳以下だと1年のワーキングビザであるワーホリビザが簡単に取れるため、若いうちにチャンスを得やすいというのもトロントにした理由でした。
作戦としては、1年のワーホリビザで就職 → 働きっぷりを見てもらう → うまく行けばビザを延長 でいこうと考えてました。
ジョブエントリーから面接までの手順
採用されるまでの流れは Webでエントリー → 電話がかかってきて電話面接 → 実際にオフィスに出向いて面接 というのが基本になります。
求人サイトは LinkedIn, Indeed, あたりがメジャーで、AngelList とかも利用してました。
エントリーするのは毎日大体5~10社くらいで、求人を見る → 求められている条件に合わせて履歴書とカバーレターの微調整をしてエントリー というのをひたすら繰り返しました。
単純作業のようでこれがかなりしんどいです。エントリーしたもののほとんどがレスポンスを得られず、精神的にもかなり参りました。
SpreadSheetにどんどんとエントリーした会社名がたまっていき、たまーに電話がかかってくるとその中から会社名を検索してどのポストに応募したかを確認しながら話をするといった感じでした。
応募条件は大体が情報系の修士号を持つことが必須となっており、未経験でエンジニアの職に就くことが可能な日本はかなり特殊のようです。
最終的には、約150社応募し、20件くらいの電話面接、3件の対面での面接といった結果でした。
英語での面接
海外で働くというときに気になる人が多いと思うのが英語かと思います。
はっきり言って英語でのコミュニケーションをとれるかどうかはかなりの障壁となります。向こう側からすると英語でのスムーズなコミュニケーションは当たり前レベルの要求になります。
私の場合はもともと英語が苦手だった 3ので血反吐を吐きながら身に付けました。それでも実際にビジネスの場に立つとなるとまだまだ不十分で、英語を身に付けると言うのは長い月日がかかると言うのが身に染みました。
現地の人の就活
外国人がカナダでフルタイムの職を手にするのはかなり大変なのですが、特にITエンジニアの経験の浅い新卒での就職は現地の人でも相当厳しいようでした。
留学の時にできた友達のカナダ人は1年間就活して600社の応募をするも、まだ職を得られずでした。(これを聞いた時は俺は根性が足りなかったんやなと思った)
温度感的には1年間就活を続けて1社内定が出ればかなりラッキーな方といった感じでした。
一度IBMが所有しているIT系スタートアップが集まるオフィスに面接に行ったのですが、そこにいたほとんどは中国系、インド系、中東系の移民と思われる人たちでした。
ここから推察するに、それぞれ自国である程度キャリアを積んだエンジニアたちがトロントの給料の良い環境(年収1000万の求人がごろごろある)を求めて移住してきており、もともといた現地の人たちの雇用機会を奪って行っているという現象が起きているのだと思います。
特にカナダは英語圏なので、言語的な障壁はほとんど無い一方で、日本人の日本での雇用は日本語の習得の難しさという独特の分厚いバリケードによって守られていると推測されます。
新規事業に参画
就活の一環としてビジネスパーティーにも参加していて、そこで出会った中東系のおじさんに新規事業を立ち上げようとしているのに参加しないかと誘われ、行くところもないし参加することにしましたが、結局は資金調達ができずエンジニアチームが立ち上がりませんでした。
40歳くらいの南アフリカ人を面接するという貴重?な経験もしました。(書ける言語はCOBOLとか言い出して反応に困った)
得たもの
- 働き、お金を稼ぎ、生活を立てていくという大変さを知った
- お金が時間と共に減っていくだけという状況が想像以上に辛いことを知った
- 今思い出しても味わい深いと思える感情を経験できた
- 時間があったので勉強ができた
- Forrest Gumpやアニメのピンポンなどの名作を絶妙な心理状態で見ることができた
- 結果的にフリーランスとして独立できた
そして今
いよいよ資金の底が見えそうになってきた8月ごろ、なりふりかまってはいられなくなったので日本の企業でリモートワーク可を中心に応募をはじめました。
そして運良く東京のスタートアップにフリーランスとして採用していただいたのでバックエンドエンジニアとしてのキャリアを始めることができ、今は仕事がある幸せを満喫しています。