はじめに
- グラフニューラルネットワークってなんですか?
参考資料
グラフニューラルネットワーク(GNN)とは?
グラフニューラルネットワーク(GNN: Graph Neural Network)は、グラフ構造を持つデータを処理するために特別に設計された深層学習モデルの一種です。GNNは、グラフの頂点(ノード)と辺(エッジ)の情報を用いて、グラフ上の特徴を学習します。
GNNの主な目的は、グラフ構造を考慮しながら、ノードの特徴ベクトルを学習することです。各ノードの特徴ベクトルは、ノード自身の情報と、その近傍ノードの情報を集約することで更新されます。この更新プロセスを複数回繰り返すことで、グラフ全体の構造を考慮した特徴表現を学習できます。
GNN の応用例
GNNは、以下のようなグラフ構造を持つデータに対して広く適用されています。
- ソーシャルネットワーク
- 分子グラフ
- 知識グラフ
- 交通ネットワーク
LLM関連の応用例では、
「Graph Neural Prompting with Large Language Models」がAAAI2024で発表され、LLMの応答精度向上に有効であることが示されました。
通常のニューラルネットワークとGNNの比較
特性 | 通常のニューラルネットワーク | グラフニューラルネットワーク(GNN) |
---|---|---|
構造 | 層状構造。各層のノードが次の層のすべてのノードと接続 | グラフ構造。ノード間の接続がデータの関係性に基づく |
データの扱い | 固定サイズの入力(ベクトルやテンソル) | 可変サイズのグラフ構造データ |
情報の伝播 | 入力層から出力層へ一方向に伝播 | ノード間で双方向に伝播し、各ノードの特徴が更新 |
適用分野 | 画像認識、自然言語処理など、構造化されたデータ | ソーシャルネットワーク分析、分子構造予測、推薦システムなど、関係性を持つデータ |
学習プロセス | 各層の重みを更新 | ノード間のメッセージパッシングと特徴の更新 |
さらに、通常のニューラルネットワークとグラフニューラルネットワーク(GNN)の比較表です。
特徴 | 通常のニューラルネットワーク | グラフニューラルネットワーク(GNN) |
---|---|---|
モデルの解釈性 | 比較的低い | 高い(グラフ構造を考慮) |
データの前処理 | 一般的に必要(正規化など) | グラフ構造へ変換する必要がある |
スケーラビリティ | 大規模データに適用可能 | グラフのサイズに依存 |
ハイパーパラメータ | 比較的少ない | グラフ構造に依存するパラメータが存在 |
タスクによって、通常のニューラルネットワークとGNNのどちらを選択するかは異なります。グラフ構造を持つデータを扱う場合や、ノード間の関係性が重要な場合には、GNNが適しています。一方、グリッド状のデータや大規模なデータセットを扱う場合には、通常のニューラルネットワークが適しているでしょう。
代表的なGNNのアーキテクチャ
Graph Convolutional Network(GCN)、Graph Attention Network(GAT)、Graph Isomorphism Network(GIN)などがあります。これらのアーキテクチャは、メッセージ伝播や更新の方法に違いがあります。
実際には、これらのアーキテクチャを組み合わせたり、拡張したりすることで、より高度なGNNモデルが構築されています。また、タスクに応じて、グラフプーリングやグラフ分類のための追加の層を組み込むこともあります。
アーキテクチャ | メッセージ伝播 | ノード更新 |
---|---|---|
GCN | ノードの近傍を平均化 | 線形変換とReLU活性化関数 |
GAT | Attentionを用いて近傍を重み付け | 線形変換とReLU活性化関数 |
GIN | MLPを用いてノードと辺の情報を集約 | MLPとバッチ正規化 |
Graph Convolutional Network(GCN)
- メッセージ伝播では、各ノードの近傍の情報を平均化して集約
- ノードの更新には、線形変換とReLU活性化関数が用いる
- 単純で効率的なアーキテクチャであり、スペクトラルグラフ理論に基づく
- ノードの次数の影響を受けるため、次数の正規化が必要となる場合がある
Graph Attention Network(GAT)
- メッセージ伝播では、注意機構(Attention)を用いて近傍ノードの重要度を学習し、重み付けを行う
- ノードの更新には、線形変換とReLU活性化関数が用いる
- GATはノード間の重要度を学習することができ、ノードの次数に依存しない利点
- 注意機構の計算量が比較的大きく、大規模なグラフに対しては計算コストが高くなる
Graph Isomorphism Network(GIN)
- メッセージ伝播では、多層パーセプトロン(MLP)を用いてノードと辺の情報を集約
- ノードの更新には、MLPとバッチ正規化が用いる
- GINはグラフ同型性検査に基づき、より強力なグラフ表現を学習することができる
- 深い構造を持つことが可能で、複雑なグラフ構造を捉えることができる
GNNの発展の歴史
1. グラフ理論の発展(1970年代〜)
2. ニューラルネットワークの発展(1980年代〜)
- 多層パーセプトロンや畳み込みニューラルネットワークなどの深層学習モデル登場
- これらのモデルは、グリッド状のデータを扱うことに特化していた
3. グラフ構造データの重要性の認識(2000年代〜)
- ソーシャルネットワーク、分子構造、知識グラフなど、グラフ構造を持つデータの重要性が認識されるように
- 有用な情報を抽出する必要性が高まる
4. グラフ畳み込みネットワークの登場(2014年)
- スペクトラルグラフ理論に基づくグラフ畳み込みネットワークを提案
- グラフ構造を直接処理できる初期のGNNモデルの1つ
5. GNNの発展と応用(2015年〜)
- GCNの提案。GNNの研究が加速
- GATやGINなどの新しいアーキテクチャが登場
- GNNは、ノード分類、グラフ分類、リンク予測などの様々なタスクに応用されるように
6. GNNの現在
- 新しいアーキテクチャや学習手法の開発、および様々なドメインへの応用が進む
- LLMとの組み合わせの提案と実績の登場(2024)