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グラフニューラルネットワーク(GNN) に入門する

Last updated at Posted at 2024-05-09

はじめに

  • グラフニューラルネットワークってなんですか?

参考資料

グラフニューラルネットワーク(GNN)とは?

グラフニューラルネットワーク(GNN: Graph Neural Network)は、グラフ構造を持つデータを処理するために特別に設計された深層学習モデルの一種です。GNNは、グラフの頂点(ノード)と辺(エッジ)の情報を用いて、グラフ上の特徴を学習します。

GNNの主な目的は、グラフ構造を考慮しながら、ノードの特徴ベクトルを学習することです。各ノードの特徴ベクトルは、ノード自身の情報と、その近傍ノードの情報を集約することで更新されます。この更新プロセスを複数回繰り返すことで、グラフ全体の構造を考慮した特徴表現を学習できます。

GNN の応用例

GNNは、以下のようなグラフ構造を持つデータに対して広く適用されています。

  • ソーシャルネットワーク
  • 分子グラフ
  • 知識グラフ
  • 交通ネットワーク

LLM関連の応用例では、

「Graph Neural Prompting with Large Language Models」がAAAI2024で発表され、LLMの応答精度向上に有効であることが示されました。

image.png

通常のニューラルネットワークとGNNの比較

image.png

特性 通常のニューラルネットワーク グラフニューラルネットワーク(GNN)
構造 層状構造。各層のノードが次の層のすべてのノードと接続 グラフ構造。ノード間の接続がデータの関係性に基づく
データの扱い 固定サイズの入力(ベクトルやテンソル) 可変サイズのグラフ構造データ
情報の伝播 入力層から出力層へ一方向に伝播 ノード間で双方向に伝播し、各ノードの特徴が更新
適用分野 画像認識、自然言語処理など、構造化されたデータ ソーシャルネットワーク分析、分子構造予測、推薦システムなど、関係性を持つデータ
学習プロセス 各層の重みを更新 ノード間のメッセージパッシングと特徴の更新

さらに、通常のニューラルネットワークとグラフニューラルネットワーク(GNN)の比較表です。

特徴 通常のニューラルネットワーク グラフニューラルネットワーク(GNN)
モデルの解釈性 比較的低い 高い(グラフ構造を考慮)
データの前処理 一般的に必要(正規化など) グラフ構造へ変換する必要がある
スケーラビリティ 大規模データに適用可能 グラフのサイズに依存
ハイパーパラメータ 比較的少ない グラフ構造に依存するパラメータが存在

タスクによって、通常のニューラルネットワークとGNNのどちらを選択するかは異なります。グラフ構造を持つデータを扱う場合や、ノード間の関係性が重要な場合には、GNNが適しています。一方、グリッド状のデータや大規模なデータセットを扱う場合には、通常のニューラルネットワークが適しているでしょう。

代表的なGNNのアーキテクチャ

Graph Convolutional Network(GCN)、Graph Attention Network(GAT)、Graph Isomorphism Network(GIN)などがあります。これらのアーキテクチャは、メッセージ伝播や更新の方法に違いがあります。

実際には、これらのアーキテクチャを組み合わせたり、拡張したりすることで、より高度なGNNモデルが構築されています。また、タスクに応じて、グラフプーリングやグラフ分類のための追加の層を組み込むこともあります。

アーキテクチャ メッセージ伝播 ノード更新
GCN ノードの近傍を平均化 線形変換とReLU活性化関数
GAT Attentionを用いて近傍を重み付け 線形変換とReLU活性化関数
GIN MLPを用いてノードと辺の情報を集約 MLPとバッチ正規化

image.png

Graph Convolutional Network(GCN)

  • メッセージ伝播では、各ノードの近傍の情報を平均化して集約
  • ノードの更新には、線形変換とReLU活性化関数が用いる
  • 単純で効率的なアーキテクチャであり、スペクトラルグラフ理論に基づく
  • ノードの次数の影響を受けるため、次数の正規化が必要となる場合がある

Graph Attention Network(GAT)

  • メッセージ伝播では、注意機構(Attention)を用いて近傍ノードの重要度を学習し、重み付けを行う
  • ノードの更新には、線形変換とReLU活性化関数が用いる
  • GATはノード間の重要度を学習することができ、ノードの次数に依存しない利点
  • 注意機構の計算量が比較的大きく、大規模なグラフに対しては計算コストが高くなる

Graph Isomorphism Network(GIN)

  • メッセージ伝播では、多層パーセプトロン(MLP)を用いてノードと辺の情報を集約
  • ノードの更新には、MLPとバッチ正規化が用いる
  • GINはグラフ同型性検査に基づき、より強力なグラフ表現を学習することができる
  • 深い構造を持つことが可能で、複雑なグラフ構造を捉えることができる

GNNの発展の歴史

1. グラフ理論の発展(1970年代〜)
2. ニューラルネットワークの発展(1980年代〜)

  • 多層パーセプトロンや畳み込みニューラルネットワークなどの深層学習モデル登場
    • これらのモデルは、グリッド状のデータを扱うことに特化していた

3. グラフ構造データの重要性の認識(2000年代〜)

  • ソーシャルネットワーク、分子構造、知識グラフなど、グラフ構造を持つデータの重要性が認識されるように
  • 有用な情報を抽出する必要性が高まる

4. グラフ畳み込みネットワークの登場(2014年)

  • スペクトラルグラフ理論に基づくグラフ畳み込みネットワークを提案
    • グラフ構造を直接処理できる初期のGNNモデルの1つ

5. GNNの発展と応用(2015年〜)

  • GCNの提案。GNNの研究が加速
  • GATやGINなどの新しいアーキテクチャが登場
  • GNNは、ノード分類、グラフ分類、リンク予測などの様々なタスクに応用されるように

6. GNNの現在

  • 新しいアーキテクチャや学習手法の開発、および様々なドメインへの応用が進む
  • LLMとの組み合わせの提案と実績の登場(2024)
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