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トポロジカルデータ分析の理解

Last updated at Posted at 2024-03-17

はじめに

位相空間とは

  • 集合に「近さ」や「連続性」の概念を導入するための数学的構造
  • 集合の元(点)間の具体的な距離を定義することなく、点の集まりがどのように「近接」しているか、または「開いているか」を抽象的に扱うことを可能にする
  • 位相空間の定義には主に「開集合系」という概念が用いられ、この系に基づいて空間の位相的性質が定義される

位相空間の概念によって、連続性、収束、内部、境界、閉集合などの位相的性質が抽象的に定義されます。このフレームワークは非常に柔軟で、距離空間から離散空間まで、多岐にわたる数学的構造を記述するのに適しています。

トポロジカル不変量とは

  • 位相空間が持つ性質
  • それらの空間を連続変形しても変わらない量のことを指す
  • 位相空間の分類や比較に使用される
  • 例.穴の数や結び目の絡まり方、空間の次元数などがトポロジカル不変量に該当する

トポロジカル不変量をあらわす量

ベッチ数、基本群、ホモロジー群、コホモロジー群などがある。
これらの不変量を用いることで、位相空間がどのように構成されているか、異なる空間が本質的に同じであるかどうか(同相かどうか)を判断する。

ベッチ数

  • トポロジカル空間のホモロジー群のランクを表す
  • こ空間内の穴の数を数えるのに使われ、異なる次元における「穴」の数を示す
  • 例.
    • 0次のベッチ数は連結成分の数を表す
    • 1次のベッチ数はループ(2次元では「穴」)の数を表す
    • 2次のベッチ数は空洞(3次元では「空間内の空間」)の数を表す

基本群、ホモロジー群、コホモロジー群

特徴 基本群 ホモロジー群 コホモロジー群
定義 空間内のループのトポロジカルな性質を研究する群 位相空間内の穴の数や連結性を数学的に記述する群 ホモロジー群の双対として定義される群
目的 空間の1次元的な性質、特にループの性質を捉える 空間の穴の数や形状の特徴を捉える 空間の構造だけでなく、その上の関数や量の性質を捉える
特性 空間のループや結び目の構造に関する情報を提供 各次元における穴の数や空間のトポロジーを分析 ホモロジー群よりも細かい代数的構造を研究
計算方法 閉ループの連続変形によって得られる群を計算 空間を単純化された部分(単体など)に分解して計算 ホモロジー群の計算方法を双対的に適用
応用分野 位相幾何学、微分幾何学 位相空間のトポロジカルな性質の研究に用いられる 物理学や数学での空間上に定義された量の研究に用いられる
重要性 空間がどのようにループで結ばれているかを理解するのに役立つ 位相空間の形状や構造に関する基本的な情報を提供 ホモロジー群に比べ情報量が多く、より詳細な分析が可能

トポロジカルデータ分析(TDA)

データの「形」や「連続性」に焦点を当てることで、従来の数値解析や統計的手法では見過ごされがちな、データセット内の本質的なパターンや特徴を明らかにします。

TDAの主な特徴

1. スケール不変性: TDAはデータのスケールや密度に依存せず、形状そのものの特性を捉えるため、様々なサイズや密度のデータに対して一貫した分析を行うことができる

2. ノイズ耐性: データのトポロジカルな特徴は、ノイズの影響を受けにくいため、ノイズの多いデータセットでも本質的な構造を抽出することが可能

3. 多様なデータへの適用: 空間データ、ネットワークデータ、時系列データなど、さまざまな種類のデータに適用できる

TDAの主な手法

永続ホモロジー

データセットのスケールを変えながらトポロジカルな「穴」の出現と消失を追跡し、データの本質的な形状を捉える

from ripser import ripser
from persim import plot_diagrams
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

# 合成データセットの生成(例: 2つの円)
t = np.linspace(0, 2*np.pi, 100)
x1 = np.sin(t)
y1 = np.cos(t)

x2 = np.sin(t) + 5
y2 = np.cos(t) + 5

data = np.vstack((np.column_stack((x1, y1)), np.column_stack((x2, y2))))

# 永続ホモロジーの計算
diagrams = ripser(data)['dgms']

# 永続図の可視化
plot_diagrams(diagrams, show=True)

マッパー法

データをフィルタリングしてクラスタリングし、高次元データの構造を低次元の「地図」として可視化する


import numpy as np
import kmapper as km
from sklearn import datasets
from sklearn.cluster import DBSCAN
from sklearn.decomposition import PCA

# データセットの生成 (ここでは合成データを使用)
data, labels = datasets.make_moons(n_samples=1000, noise=0.05)

# KeplerMapper オブジェクトの初期化
mapper = km.KeplerMapper(verbose=1)

# データにフィルタリング関数を適用 (PCAによる次元削減をフィルターとして使用)
projected_data = mapper.fit_transform(data, projection=PCA(n_components=1))

# カバーの設定とクラスタリングアルゴリズムの適用
graph = mapper.map(projected_data, data, clusterer=DBSCAN(eps=0.3, min_samples=10))

# 可視化 (ここではHTMLファイルとして出力)
mapper.visualize(graph, path_html="mapper_visualization.html", title="Mapper visualization of moon dataset")

TDAの応用例

  1. 生物学: ゲノムデータやタンパク質の構造解析など、生命科学の分野で複雑な生物学的データの解析に利用されます。

  2. 材料科学: 新材料の設計や性質予測において、材料の微細構造データから重要な特徴を抽出するために使われます。

  3. ネットワーク分析: ソーシャルネットワークやインターネットのトポロジー分析により、コミュニティの構造や情報の流れを解析します。

  4. 金融: 時系列データから市場の構造的変化を検出し、リスク管理や投資戦略の策定に役立てられます。

TDAのためのライブラリ

ライブラリ名 言語 特徴
GUDHI C++/Python 複雑なデータセットのトポロジーを研究するための強力なツール。シンプレクシャル複体の構築と永続ホモロジーの計算に特化。
Ripser C++/Python 大規模データセットの永続ホモロジーを高速に計算するための軽量ライブラリ。
HomCloud Python 永続ホモロジーを利用してデータ解析を行うためのパッケージ。多次元データの解析に適している。
Dionysus 2 C++/Python 永続ホモロジーとその他の位相的構造を計算するためのライブラリ。
TDAstats R R言語で位相的データ解析を行うためのパッケージ。永続ホモロジーの計算と可視化を提供。
Javaplex Java 永続ホモロジーと関連する位相的概念を計算するためのライブラリ。

さいごに

TDAは、データから深い洞察を引き出すための強力なツールであり、さまざまな分野での研究や実践において、その価値が認識されつつあります。

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