はじめに
双極幾何学とは?
双極幾何学は数学の一分野で、特に幾何学と代数学の交わる領域に位置します。この理論は、通常の幾何学的な図形や空間を、2つの極(ポイント)を基準にして表現し解析する方法を提供します。
主な特徴:
- 2つの固定点(極)を基準にして、空間や図形を表現する
- 従来のユークリッド座標系ではなく、独自の座標系を使用する
- 複素数平面との関連が深く、複素関数論にも応用される
- 円や球面の性質を研究する上で特に有用
ユークリッド幾何学との違い
ユークリッド幾何学は平面上の幾何学で、曲率がゼロの幾何学とも言えます。無限に広がる平面空間を扱います。
一方で、「双曲幾何学」では、曲率が負の空間を扱います。
双曲線(Hyperbola)とは
双曲線は、平面上の2つの固定点(焦点)からの距離の差が一定である点の軌跡として定義される二次曲線です。
双曲空間とは
双曲空間とは直線が双曲線のようになる空間です。そもそも今目の前に見えている空間がまっすぐだからって、それが永遠にまっすぐ続くとは限らない訳です。地球だって丸いし。地表にある直線は惑星スケールで見ればすべて正円(正確には回転楕円体)なので、地球はすべての直線が円になる空間であると言えます。反対に、すべての直線が双曲線になってしまう空間があってもよいはずです。
空間の種類 | 三角形の内角の和 | 平行でない直線 | 平行な直線* |
---|---|---|---|
平面(ユークリッド座標系) | =180度 | 1点で交わる | 交わらない |
球面 | >180度 | 2点で交わる | 交わらない |
双曲面 | <180度 | 1点で交わるか交わらない | 交わらない |
球面では線が曲がっていて、三角形が「膨らんで」見えます。
平面では私たちが慣れ親しんだユークリッド幾何学の特徴が見られます。
双曲面では線が「内側に曲がって」おり、三角形が「縮んで」見えます。
次の図は、ユークリッド平面の格子座標が双曲空間でどのように見えるかを表現しています。
左側(ユークリッド格子):
- 通常の直交座標系を示しています。
- 縦線と横線が等間隔で直線的に配置されています。
右側(双曲格子):
- ユークリッド格子が双曲空間に変換された様子を示しています。
- 縦線(青色)は中心に向かって湾曲した双曲線になっています。
- 横線(赤色)も上に凸の双曲線になっています。
発展のきっかけ
複雑な幾何学的問題の解決需要:
17世紀から18世紀にかけて、数学者たちは既存の幾何学的手法では解決が困難な問題に直面していました。例えば、カッシーニが研究した卵形線(カッシーニ楕円)のような複雑な曲線の性質を理解するには、新しいアプローチが必要でした。
複素数理論の発展:
オイラーやガウスによる複素数理論の発展は、平面上の点を二つの実数の組として表現する新しい方法を提供しました。これは双極座標系の概念形成に重要な役割を果たしました。
物理現象の数学的記述の必要性:
特に19世紀に入ると、電磁気学や流体力学などの分野で、円筒形や球形の対称性を持つ問題を扱う必要が増えました。これらの問題は、双極座標系を用いることで効率的に解析できることが分かりました。
Pythonライブラリ
ライブラリ名 | 概要 |
---|---|
bigraphs | bipartite-graphs(双極グラフ)の作成と操作を簡単に行う |
HyperSphere | 双極幾何学を含む高次元球面幾何学を扱う |
PoincareMaps | ポアンカレ双曲平面モデルを用いた双極幾何学的なマッピングを行う |
PyGeodesy | 双極幾何学を含む測地学計算を扱う |
PyVoronoi | 双極幾何学における領域分割のためのボロノイ図生成 |