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地理情報をはじめて扱うあなたに

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1. 地理情報のデータ型を理解する

地理空間データを扱う際には、はじめに、使用される特定のデータ構造と形式についての知識を得ることが必要です。

地理情報システム(GIS)では、空間的な位置や形状を表現するために、特別なデータ型が用意されています。これらのデータ型は、地理的な要素を正確に格納し、空間に関連するクエリや分析を効率的に実行するために設計されています。

GeoJSON

GeoJSONは、地理空間データをJSON形式でエンコードするためのオープンスタンダードフォーマットです。様々な地理データ構造を表現するために、以下のような主要な型が定義されています。

データ型の基本種類

名称 説明 JSON例
Point 単一の位置を表す 緯度と経度のペア {"type": "Point", "coordinates": [125.6, 10.1]}
MultiPoint 複数の位置を表す 複数の緯度と経度のペア {"type": "MultiPoint", "coordinates": [[125.6, 10.1], [125.7, 10.2]]}
LineString 複数の点を結んだ線を表す 2つ以上のポイントで形成される線 {"type": "LineString", "coordinates": [[125.6, 10.1], [125.7, 10.2]]}
Polygon 閉じた領域を表す 境界点のリストで形成される領域 {"type": "Polygon", "coordinates": [[[125.6, 10.1], [125.7, 10.2], [125.8, 10.3], [125.6, 10.1]]]}
# 必要なライブラリのインポート
import matplotlib.pyplot as plt
import geopandas as gpd
from shapely.geometry import Point, LineString, Polygon

# GeoDataFrameを作成するためのデータ
data = {
    'Point': {"type": "Point", "coordinates": [125.6, 10.1]},
    'MultiPoint': {"type": "MultiPoint", "coordinates": [[125.6, 10.1], [125.7, 10.2]]},
    'LineString': {"type": "LineString", "coordinates": [[125.6, 10.1], [125.7, 10.2]]},
    'Polygon': {"type": "Polygon", "coordinates": [[[125.6, 10.1], [125.7, 10.2], [125.8, 10.3], [125.6, 10.1]]]}
}

# 各地理空間データタイプのジオメトリオブジェクトを作成
geometries = {
    'Point': Point(data['Point']['coordinates']),
    'MultiPoint': gpd.GeoSeries([Point(x) for x in data['MultiPoint']['coordinates']]),
    'LineString': LineString(data['LineString']['coordinates']),
    'Polygon': Polygon(data['Polygon']['coordinates'][0])
}

# GeoDataFrameの作成
gdf = gpd.GeoDataFrame({'geometry': geometries.values()}, index=geometries.keys())

# プロット
fig, ax = plt.subplots()
gdf.plot(ax=ax, marker='o', color='red', markersize=50)
plt.show()

データ型の応用種類

名称 説明 JSON例
MultiLineString 2つ以上のLineStringを表す {"type": "MultiLineString", "coordinates": [[[125.6, 10.1], [125.7, 10.2]], [[125.8, 10.3], [125.9, 10.4]]]}
MultiPolygon 複数のPolygonを表す {"type": "MultiPolygon", "coordinates": [[[[125.6, 10.1], [125.7, 10.2], [125.8, 10.3], [125.6, 10.1]]]]}
GeometryCollection 異なるジオメトリタイプ(点、線、面の組み合わせ)の集合を一つのオブジェクトとして表す {"type": "GeometryCollection", "geometries": [{"type": "Point", "coordinates": [125.6, 10.1]}, {"type": "LineString", "coordinates": [[125.6, 10.1], [125.7, 10.2]]}]}
Feature ジオメトリに属性情報を関連付けたオブジェクト {"type": "Feature", "geometry": {"type": "Point", "coordinates": [125.6, 10.1]}, "properties": {"name": "Dinagat Islands"}}
FeatureCollection 複数のFeatureオブジェクトを集めたもの {"type": "FeatureCollection", "features": [{"type": "Feature", "geometry": {"type": "Point", "coordinates": [125.6, 10.1]}, "properties": {"name": "Dinagat Islands"}}]}

2.空間インデックスの利用

地理空間データベース内で地理情報の検索とアクセスの効率を向上させるために、空間データに対して特化されたインデックスを作成し使用します。

空間インデックスは、空間オブジェクト間の位置関係(例えば、距離、接触、包含など)を効率的にクエリするために設計されています。

空間インデックスの主な種類

種類 特徴 適用シナリオ
R-tree 階層的な木構造を使用して矩形領域に基づいて空間オブジェクトをグルーピングする。 空間オブジェクト間の位置関係を迅速に判定する必要がある空間検索。
Quadtree 二次元空間を再帰的に4つの象限に分割してデータを格納する木構造。 地図のタイル表示や画像処理など、二次元空間を効率的に扱う場合。
Geohash 空間データを一次元の文字列にエンコードし、近接する空間オブジェクトが類似した文字列になるように設計。 距離計算や範囲検索が頻繁に行われる場合に、簡潔な表現で空間検索を行いたいシナリオ。
B-tree ベースの空間インデックス B-treeを拡張して空間データを扱う。一部の地理情報システムで採用されている。 リレーショナルデータベースでの空間データ管理において、標準的なSQLクエリとの互換性を保ちつつ空間検索を行いたい場合。

以下は、PostGIS(PostgreSQLの地理空間拡張)を使用した場合の空間インデックス作成の一般的な例です。

geomカラムに対してGiST(Generalized Search Tree)を使用して空間インデックスspatial_indexを作成しています。

-- テーブルの作成
CREATE TABLE spatial_table (
    id SERIAL PRIMARY KEY,
    geom GEOMETRY(Point, 4326) -- 空間データカラムの定義
);

-- 空間インデックスの作成
CREATE INDEX spatial_index
ON spatial_table
USING GIST (geom);

3.パフォーマンス最適化

地理情報システム(GIS)や地理空間データを扱う場合、基本的には データ量が膨大で複雑な空間クエリが必要になったりするため、パフォーマンスの最適化が重要になります。

そのため、データ構造の最適化やインデックスの使用などはもちろん、キャッシングや並列処理と分散処理なども駆使したパフォーマンス最適化が求められます。

また地理情報を扱うことに特化したDBサービスを使用することも検討します。

地理情報を専門に扱うNoSQLデータベース

名称 説明
MongoDB 地理空間インデックスとクエリ機能をサポートするドキュメント指向のNoSQLデータベース。地理空間データの格納と地理的クエリをサポート。
Couchbase 地理空間データのインデックス作成とクエリをサポートする分散型NoSQLデータベース。リアルタイムの地理空間データ分析とモバイルアプリケーションの地理情報サービスに適している。
Elasticsearch 高度な検索機能を提供する分散型検索エンジン。地理空間データのインデクシングと地理空間クエリをサポート。

クラウドベースの地理空間データサービス

名称 説明
GCP BigQuery GIS 大規模な地理空間データセットの分析を行うサービス。SQLを使用して地理空間データをクエリし、データの視覚化や分析を行う。
AWS Amazon Location Service 地図の作成、位置情報の取得、地理空間クエリの実行など、地理情報サービスの構築を容易にするサービス。
Azure Azure Maps 地理空間分析、地図のレンダリング、交通情報の提供など、多様な地理情報サービスを提供するクラウドベースのプラットフォーム。

RDBとの比較

小規模から中規模のプロジェクト、または既存のRDBを活用して地理情報を扱う必要がある場合は、RDBが良い選択肢になることが多いです。しかし、非常に大量のデータをリアルタイムで処理する必要がある場合や、高度な地理空間分析機能が求められる場合は、専門の地理情報システム(GIS)データベースやクラウドサービスを検討する価値があります。

プロジェクトの規模、データの複雑さ、リアルタイム処理の必要性 など、プロジェクト固有の要件を考慮することが重要です。

特性/サービス RDB NoSQL DB cloudService
データモデル 表形式、固定スキーマ ドキュメント指向、キーバリュー、柔軟スキーマ サービスによるが、柔軟スキーマを採用することが多い
スケーラビリティ 制限あり、スケールアップ主体 高い、スケールアウト主体 非常に高い、自動スケーリング可能
パフォーマンス 中規模データセット向け 大規模データセットや高速クエリに最適 大規模データセット分析向け、高速処理可能
地理空間機能 空間インデックス、GIS関数 空間インデックス、地理空間クエリ可能 高度な地理空間分析、地図作成、位置情報サービス提供
管理と運用の複雑さ 管理が必要、インフラの維持管理が必須 管理は比較的簡単だが、スケールに応じた運用が必要 管理が最小限、クラウドプロバイダがインフラ管理
コスト ハードウェア、ライセンス費用が主 ストレージとトランザクション量に基づくコスト 使用量に基づくコスト、スケールに伴うコスト増加を自動最適化
トランザクションの整合性とデータの一貫性 高い、ACID特性を提供 データモデルに依存するが、一般にRDBほど厳格ではない サービスによるが、高い一貫性と耐久性を提供可能
ユースケース 中規模の地理情報システム、複雑なトランザクション管理が必要な場合 リアルタイムの地理空間データ処理、大規模なデータセットの分析 大規模な地理空間データセットの分析、クラウドネイティブアプリケーション開発

さいごに

幾何学は英語で「geometry」 "geo":土地、"metry":測量 です。

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