量子誤り訂正とは
量子ビットの状態を保護し、計算の信頼性を確保するためのメカニズムです。
量子コンピューティングにおける重要な技術でです。
基本的な理解
- 量子ビットは非常に壊れやすく、環境との相互作用で簡単に状態が変化する
- 古典的なビットと異なり、単純なコピーができない(no-cloning定理)
量子誤り訂正とは
- 量子コンピュータを構成する量子ビット(qubits)には間違いが起こりやすく、修正しなければ計算が無駄になる可能性がある
- 対応策として、誤りを犯しやすい複数の量子ビットを「論理量子ビット」と呼ばれる改良された1つの量子ビットに統合し、計算に使用する
- 論理量子ビットの量子ビットの数を増やせば、エラーを起こしにくくすることができる
物理キュービットと論理キュービット
-
物理キュービット:実際のハードウェアとして存在する量子ビット。外部環境からのノイズや誤りの影響を受けやすく、不安定。
-
論理キュービット:複数の物理キュービットを組み合わせて作られる、エラー訂正された理想的な量子ビット。一般的に1つの論理キュービットを作るには1,000個以上の物理キュービットが必要
代表的な誤り訂正コード
- サーフェスコード:2次元格子状に配置された量子ビットを使用
- ステアンコード:7つの量子ビットを使って1つの論理量子ビットを構成
- ベーコン・ショアコード:9つの量子ビットを使用する方式
現状の課題
- 多数の物理量子ビットが必要(オーバーヘッドが大きい)
- エラー訂正自体の操作による新たな誤りの導入
- エラー訂正の実装コスト
- 1024ビット数の因数分解には
- 2000論理キュービットが必要
- Googleのアプローチでは300万物理キュービットが必要
- 10^-6のエラー率でも1000回のエラーが予想される
- 物理量子ビットのエラー率を下げる必要性
近年の量子エラー訂正技術の前進
近年、量子コンピュータの量子エラー訂正技術の分野で大きな前進があった
2024年のMicrosoftとQuantinuumの論文。量子ビットの仮想化と呼ばれる技術を使ってエラーレートを低減する大きな進歩を遂げたと発表。論理量子ビットのエラーを物理量子ビットのエラーの800分の1にしたとした。
2025年には何が起こりそう??
- 新世代の超伝導量子ビット技術
- 量子誤り耐性を本質的に持つ新設計
- Alice & Bob社が2025年に実用デバイス発表を予定
- 光子の量子状態を直接利用
- Quantum Circuits Inc.が2025年に実証機公開予定
- NISQデバイスからの転換
- ハイブリッドアルゴリズムの限界が明確化
用語まとめ
カテゴリ | 用語 | 説明 |
---|---|---|
アーキテクチャ | フォンノイマンアーキテクチャ | 記憶、演算、制御、入出力の機能を分離した計算機の基本設計 |
アルゴリズム | ハイブリッドアルゴリズム | 古典コンピュータと量子コンピュータを組み合わせた計算手法 |
エラー訂正 | キャットキュービット | 量子誤り耐性を本質的に持つように設計された量子ビット |
エラー訂正 | クリフォードゲート | 量子エラー訂正で保護可能な基本的な量子ゲートのセット |
エラー訂正 | サーフェスコード | 2次元格子構造を利用した量子エラー訂正手法 |
エラー訂正 | トーラスコード | Kitaevが考案した、トーラス(ドーナツ)形状の位相的量子エラー訂正コード |
エラー訂正 | ボゾニックコード | 光子の量子状態を直接利用したエラー訂正手法 |
エラー訂正 | 魔法状態 | ノイズのある物理状態から生成される高品質な論理量子状態 |
ゲート操作 | Toffoliゲート | 3量子ビットの制御NOTゲート。ユニバーサル量子計算に必要 |
ゲート操作 | トランスバーサルゲート | エラーの伝播を最小限に抑える特殊な量子ゲート操作 |
ゲート操作 | パリティチェック | 量子状態の偶奇性を確認するエラー検出手法 |
ゲート操作 | z回転 | 量子状態のz軸周りの回転操作 |
性能指標 | NISQ | Noisy Intermediate-Scale Quantum(ノイズのある中規模量子コンピュータ) |
装置 | AlphaQubitデコーダー | DeepMindが開発した量子状態を解析するAIシステム |
装置 | デュアルレールキュービット | 二重の量子状態経路を持つ新型の量子ビット設計 |
物理現象 | 位相反転 | 量子状態の波動関数の符号が反転するエラー |
物理現象 | ビット反転 | 0と1の状態が入れ替わるエラー |