はじめに
わたしは数学力を身につけたい。
計算能力の向上や厳密性を追求したいということではなく。
ソフトウェア工学側の立場から。数学を自分の「🧑💻力」にとりこみたい。
そのための数学ということを考えています。
数学と物理と工学の関係
数学
- 抽象的な概念を用いて問題を定式化し、解決するための言語やツールを提供する
- 数学的モデリングを通じて、物理的現象や工学的問題を表現することができる
- 理論的な背景や複雑な計算において、数学は基盤となるフレームワークを提供する
物理
- 自然界の基本原則や法則を理解し、これを定量的に説明する学問
- 数学は物理現象を記述するための言語として使用される
- 物理法則は、実際の工学問題を解決するための基礎知識を提供する
工学
- 物理学と数学の原理を応用して、実用的な技術やシステムを開発する学問
- 実世界の問題を解決するために、数学的なモデルや物理法則を利用して設計や製造を行う
- 工学は理論を実践に移し、具体的な製品やプロセスを生み出すことに重点を置いている
まとめると
数学は問題を形式化し、物理はそれを理解し、工学はそれを現実のものにする。
こんな感じか。
現実とモデルと理論の関係
"現実"の観察から"モデル"が構築され、"モデル"を通じて"理論"が形成され、"理論"は新たな予測をもたらし、それが"現実"の世界で検証されるというサイクルが繰り返されます。
この関係性では、"モデル"は"現実"を簡略化し解釈するための中間的なステップであり、"理論"はより広い範囲の現象を説明し、予測するための枠組みを提供します。
モデル
- モデルは、現実世界の現象を簡略化し、理解しやすい形で表現したもの
- モデルは、特定の条件や仮定の下で現実を再現し、因果関係やメカニズムを説明するために使用される
- データを基に構築され、予測を立てるための道具としても機能する
理論
- 理論は、広範な観察結果に基づく一般化された原則や法則
- 理論はモデル以上に抽象的であり、さまざまな現象を統一的に説明することを目指す
- 予測を行い、新たな観察や実験を通じて検証されるべきもの
仮説立てのためのアブダクション・アプローチ
アブダクション
- アブダクション(abduction)は推論の一形態
- 観察された事実から最も可能性の高い説明を導き出すプロセス
- 不完全な情報から最も説得力のある仮説を推測する方法と考えられている
科学におけるアブダクションの役割
アブダクションは科学的方法論において重要な役割を果たします。それは新しい理論やモデルの生成において初期の推論を行うことで、何を検証すべきか、どのような新しい観察を探すべきかを導くのに役立つからです。
無限とも言える可能性の中から「筋がよい仮説」を選ぶこと。これを科学者は脳内で行なっています。
アブダクションは直感や創造性に依存することが多く、論理的な帰納や演繹とは異なるアプローチを提供します。
「現実とモデルと理論の関係」におけるアブダクション
画像に、以下のような流れを示しています。
- 観察: 現実の現象やデータが観察されます。
- 仮説立て: 観察された事実に基づいて仮説を立てます。この段階では、推理が行われ、何が観察された現象を引き起こしたのかについての最も妥当な説明を導き出すためにアブダクションが用いられます。
- モデル化: 仮説をもとにモデルを作成します。このモデルは、観察された現実を説明し、予測を行うための枠組みを提供します。
- 検証: モデルを詳細に検証し、拡張して検証し、より広範囲の現象を説明する理論が形成されます。
数学と物理学の絡み合い
数学のすごさ
- 数学では、正しいことはつねに正しい
- 例えば、昔の理論が否定されることがない
- 数学は、普遍的にどこでも正しい
- 数学は日常とはかけ離れた世界でも、記述可能である
- 極小の世界でも宇宙でもブラックホールでも、数学にさえなれば、どこでも正しい理論が作れる
物理的な直観💡
- 論理だけでは、意味があることができない。面白いことが見付けられない
- 新しい理論・定理を見付けるのには、論理だけでは不十分。直観が必要
- 物理的な直観が新しいことを見付けるのに、しばしば役に立つ (歴史的にもそう)
- 数学的に厳密な裏付けのない場の量子論に基づいて、豊かな数学が生み出されてきた
数学と物理学の絡み合い
- 日常から離れた物理 (弦、ブラックホール、ビックバン..) は実験ではチェックできない
- 実験できないことでも、数学は記述する力を持っている
- 数学的な論理の整合性のみが理論の正しさを保証する
- 論理の整合性だけでは面白いことが見付けられない
- 物理的な直観がしばしば面白い数学的な理論を作る
- 数学的な厳密な証明がなされていなくても物理や工学では利用しているものがある(例.ナビエ-ストークス方程式)
まとめ
- 数学は問題を形式化し、物理はそれを理解し、工学はそれを現実のものにするという関係がある
- この3つの分野は互いに影響を与え、促進しあいながら、技術の進歩や新しい発明を可能にしている
- 例えば、飛行機の設計において、数学は構造の最適化や流体力学の計算に使われ、物理は飛行原理や材料特性を理解するために、そして工学はこれらの知識を実際の飛行機の設計や製造に応用している
参考資料
数学と物理学の絡み合い - 中島 啓
https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/TeX/osaka2006.pdf
予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」数学者、偏微分方程式を語る【学術対談】
https://www.youtube.com/watch?v=esXNiukF8OM
アブダクション: 仮説と発見の論理 – 米盛 裕二 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4326153938