はじめに
私は普段、スクラム開発を導入しているチームで開発者として働いています。
所属チームに対しては、以前から雰囲気の良いチームであり、各人が開発をしながら成長できる環境が整っている、とポジティブな印象を持っていました。
しかしそれはあくまで個人の感覚であり、他のメンバーがどのように感じているのか、チームが一般的に見ても望ましい状態にあるのかを知るきっかけはありませんでした。
そこで今回、Columinityというツールを用いてチーム診断を実施してみました。
本記事では、Columinityとは何か、また、その診断結果を基にチームでどのようなワークを実施したかについて紹介します。
Columinityとは
チームワークの質を明らかにすることで、チームの改善を支援するツールです。
今回はAgile/Scrum Team Effectivenessモデルを用いて診断を実施しました。
このモデルは、What Makes Scrum Teams Effective? A scientific investigation of 1.200 Scrum teams(日本語版)で紹介されている研究に立脚しています。この研究では、実際のスクラムチームのデータを収集し、それに基づいてスクラムチームの有効性に寄与する要因を抽出することで、以下のようなモデルを作成しました。
(引用元:https://dl.acm.org/doi/10.1145/3571849?ref=ServantWorksInc)
ColuminityのAgile/Scrum Team Effectivenessモデルを選択して、表示される多数の設問に回答していくことで、このモデルに沿ってチームの質を測定することができます。また、チーム単位でメンバーの回答を集計して、チームの平均スコアを確認できます。
Columinityの結果を用いたチーム内ワーク
所属チームの診断結果は以下のようになりました。この結果を参考にしながら、各人がチームに対して感じている印象や課題について共有し、スコアの低い項目を改善するための方法について議論を行いました。
議論した内容についていくつか紹介します。
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Continuous Improvement
Psychological Safety や Lack of Team Conflict のスコアが高く、ばらつきも少ないことから、メンバー間の関係性としては良いものを築けていることがわかりました。一方で、低いスコアとなった Metric Usage に関しては、現状チームのプロダクトを頻繁に測定する術を持てていないことが影響しました。今後、定量的かつ継続的に使える指標を導入できないか検討していこう、という話にまとまりました。 -
Stakeholder Concern
Sprint Review Quality について特にばらつきが大きい結果となりました。高頻度でステークホルダーをスプリントレビューに招待しフィードバックを得ようとしている、というチームの行動を考慮して高いスコアをつけたメンバーがいる一方、実際にはステークホルダーからのフィードバックが質の高いものだとは言えないからと、低いスコアをつけたメンバーもいました。今後はスプリントのインクリメントの説明に終始するのではなく、背景や目的をより丁寧に繰り返し伝えていくことで、ステークホルダーからの関心を高めていきたい、という結論になりました。 -
Responsiveness
Release Frequency の低さが全項目の中で最も顕著に現れました。プロダクトの性質上、頻繁にリリースすることは難しいのですが、スコープの一部分だけでもなるべく早くユーザーに試用してもらえるようにしていきたい、という意見が出ました。
おわりに
Columinityによる診断が、チームに対する漠然とした印象を要素に分解して考慮・議論するきっかけになると感じました。診断結果を見て満足するのではなく、次の行動につなげ、チームをより良くしていけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。