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この記事は インフォマティカ Advent Calendar 2023 Day 22 の記事として書かれています。

はじめに

娘「出た!先入観」
父「経験値だ」

糖質ゼロのビールを買ってきた娘と父親の会話、ビールのCMのワンシーンですが、見たことある方も多いのではないでしょうか。

(その前の会話)
娘「パパ ビール買ってきたよ 新しいの!」
父「それ糖質ゼロだろ?俺はそういうの飲まないんだよ」

めんどくさいオヤジにありがちなセリフですが、糖質が気になるお年頃の私も、糖質ゼロをいろいろ試しているので、その気持ちは分かります。私だったらきっと、そこまで言えば飲まないでしょう。しかし、このCMのイケオジは、ちゃんと糖質ゼロのビールを飲んだので、娘と楽しいひとときを過ごすことができました。最高です。

ここからわかることは、イケオジであると以下のようないいことがあるということです。

  • 娘と楽しい時間を過ごすことができる
  • 新しい商品があると、娘が父親の喜ぶ顔を思い出し、買ってきてくれる
  • 経験にとらわれず、知識を自然にアップデートし続けることができる

しかし、多くの人はこれができません。

  • 世界は変わり続けている
  • 多様性を尊重すべき

このいずれについても、誰もが YES と答えるでしょう。しかし実際は、職場、家庭などいろいろな場所で、「若いやつは何も知らない」「そのやり方じゃダメだよ」「結婚したほうが良いよ」などの、年齢マウント、経験値マウント、既婚マウントが横行しています。理由は、自分が正しいバイアスがかかっているなどなど、いろいろとあるでしょう。

では、ここで言うイケオジは何が違うのでしょうか。外面も重要ですが、内面としては以下の要素が不可欠です。

  • 相手をリスペクトできる
  • 知的好奇心が強い
  • 柔軟な考え方ができる

これを一つづつ見ていきましょう。
一流の選手やアーティストが周りの人にリスペクトを持って接する姿を見て、感動したことはないでしょうか。スケールを小さくすると、娘の「それな」という脊髄反射的な返しや、「だいじょぶそ?」という煽りにも動じず、リスペクトを持って接することができる大人になりたいものです。また、知的好奇心が強く、流行を自分なりに解釈し、取り入れている人も魅力的に映るでしょう。
では、最後の「柔軟な考え方ができる」はどういう意味でしょうか。柔軟という言葉は辞書的にはおおよそ以下のような意味です。

  • やわらかく、しなやかなさま。
  • 一つの立場や考え方にこだわらず、その場に応じた処置・判断のできるさま。

一つ目の意味は分かりますが、二つ目の「一つの立場や考え方にこだわらず」はどうでしょう。大人は経験を積み、傾向を読んでうまく対応する術を覚えたり、議論を通じて自分の考えを持つため、自分なりの型が出来てきます。ですが、逆にその型にとらわれてしまい、その場に応じた処置・判断が難しくなるケースも増えていきます。失敗さえしなければいい、という人もいるかもしれませんが、低位安定にいると削られていくので、V字回復を遂げたいところです。このような局面で重要になってくるのが、アンラーンというスキルです。

アンラーンとは

アンラーンのスペルは、"unlearn" です。学ばない、ではなく、辞書的には以下のような意味です。

  • (学んだことを意識的に)忘れる
  • (知識・先入観・習慣などを)捨て去る

新たに学ぶために、「自然と」ではなく、「意識的に」今までの知識・経験そして先入観などを捨てるということです。今まで価値があると信じていたものを捨てる、居心地の良い場所から一歩外に出るには、勇気が必要で痛みを伴います。ですが、新しい刺激を受け、学び直すことで新しい状況に適応する、その場にあった最適な選択ができるようになります。そのため、この「痛み」はある程度知識と経験を得て、成功体験を重ねた大人たちがさらにステップアップするための「成長痛」であると言えるでしょう。
その場にあった最適な選択ができるようになる、というこのスキルは、デジタルトランスフォーメーション(DX)に必要不可欠です。その説明をするために、まずDXの意味についておさらいしたいと思います。

DXとは

経済産業省では、DXの定義を、「ビジネス環境の激しい変化に対応し、顧客のニーズを元にデータを利活用してビジネスモデル、組織・文化を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。
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この中に重要なポイントはいくつかありますが、まずビジネスモデルの変革について触れたいと思います。

ビジネスモデルの変革を行うための経営手法のひとつに、「両利きの経営」があります。既存事業を深めていく「知の深化」と、新規事業を開拓する「知の探索」の両方を同時に回していくというものです。
両方を同時に回していくのは、異なる分野の知識を組み合わせることからイノベーションは生まれるためです。こうして、新しい分野の知識を探求する行為を「知の探索」と呼びます。一方で、自社内の知識を深め、製品やサービスの向上につなげることを「知の深化」と言います。日本企業は「知の深化」に長けているのですが、逆に「知の深化」に偏りがちということが課題です。
以下は日米の組織文化に関するデータですが、以下の点で大きく日米間で差異があります。

  • 職位間や部門間を含め社内の風通しがよく、情報共有がうまくいっている
  • リスクを取り、チャレンジすることが尊重される
  • さまざまな挑戦の機会があり、中長期的な自己の成長が期待できる

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日本では情報共有と挑戦の機会が不十分かつ評価が減点主義などリスクを取るのが難しい状況なのでしょうか、「知の探索」を行う土壌があるとは言えません。
「知の深化」を極めても、特定領域だけでは市場での差別化が難しい上、ビジネス環境の変化に柔軟に対応することができません。そのため、日本においては「知の探索」を実践するために、組織文化の改革が必要であることを強く認識する必要があります。
また、デジタル競争力ランキングでは日本はだんだん順位を落としているのですが、その中で組織文化に関連する「機会と容易への即応力」は64カ国中62位、「企業のアジリティ」、「ビッグデータと分析の活用」はともに最下位という結果となっています。また、データ活用に関連する「デジタル/技術スキル」も最下位です。

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昨年1位だったデンマークと比較すると、明らかに特性が異なり、日本はDXに必要な能力が欠けており、かつ総合的に低下しているという極めて深刻な状況です。
日本政府としても危機感を持ち様々な取り組みをしていますが、その一つにDXレポートというものがあります。

DXレポートとは

経済産業省は日本企業の現状を分析し、日本におけるDXを推進するために必要な取り組みなどをDXレポートとしてまとめています。

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最初のDXレポートによると、日本の企業はレガシーシステムのブラックボックス化などの問題への対応を行い、経営を変革することが必要ということです。そして、コロナ禍でDXの本質はレガシー企業文化の脱却であることが明確になった後のDXレポート2.2によると、個社でのDXは困難であり、産業界として取り組まなければならない課題というように深刻度を増した表現となっています。
その課題に対応するためには、DX推進に向けた「行動指針」を個社から産業全体へ広げ、同じ価値観をもつ企業が相互に高め合っていくために、経営者おのおのが以下のような「デジタル産業宣言」を策定し、外部に発信していくべきということです。

デジタル産業宣言とは

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その「行動指針」の軸は以下の五点です。

  1. ビジョン:成功体験や柵(しがらみ)を捨て、新たに実現すべきビジョンを目指している
  2. 価値:開発コストではなく、創出価値を重視している
  3. オープン:自社に閉じるのではなく、あらゆるプレイヤーとつながっている
  4. 継続:失敗して撤退するのではなく、試行錯誤を繰り返し、前進し続ける
  5. 経営者:デジタルによるビジネス創造は経営者のミッションであることを自覚している

やはり重視すべきは、最初に挙げられているもの、すなわち「ビジョン」です。このビジョンを描くためにまずやるべきこと、すなわちDX推進の一丁目一番地は、「成功体験や柵を捨てる」ことです。
ですが、単に「成功体験や柵を捨てる」というと、経営者の方たちが今まで重ねてきた努力や苦労を、古い、価値がないと切り捨てるようにも聞こえてしまいます。「若いやつは何もわかってない」と言われ、無用な分断を引き起こしてしまうかもしれませんが、決してそうではありません。

第3回 デジタル産業への 変革に向けた研究会

上記資料中に「成功体験のアンラーン」という表現があるように、日本におけるDX推進の一丁目一番地は、成功体験、そして柵を虚心坦懐に見つめなおし、不要または時代に合わないものを選択的に捨て去り、新たな学びを得て、イノベーションを起こすという「アンラーンのサイクルを回すこと」です。
それにより、今まで描いてきた軌跡の延長線上ではなく、思い描くベクトルに向けて未来をプロットすることが出来るはずです。
ただし、ビジョンを持つことは必要不可欠ですが、ここでは同じビジョンを持つ仲間とともに「レガシー組織文化を変革」すべきことが最重要課題であることを意識している必要があります。
このデジタル産業宣言などを踏まえて、DX推進のために具体的にできることを検討していきます。

エンジニアができること

ユーザ企業やベンダー企業などの所属に関係なく、DX推進の観点でやるべきこと考えます。

  • 柔軟な考え方を身につける
  • 組織文化の変革
  • 人とつながる
  • 柔軟な考え方を身につける

成功体験や柵をアンラーンする、と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、考え方のクセを治す、とも言えます。成功体験や柵からは簡単に抜けられないので、日常の身近なことで小さい変化を多く重ねていき、変化に体を慣らすという方法もあります。
最初に糖質ゼロビールの話をしましたが、それぐらい小さい話から、たとえば好きな曲、好きな服、好きな食べ物、嫌いな場所、苦手なスポーツなどの好み、こだわりにとらわれず、選択肢を広く持ち、新しいことにチャレンジする、いつも選択しないことをあえてやることで思考の固定化に陥らず、フレキシビリティを保つということです。
また、他人をリスペクトし、話を傾聴するという姿勢も重要です。「人の話を最後まで聞く」ことは年を重ねるにつれて難しくなってきます。会話が自分の思うパターンにはまらなくてイライラするのではなく、相手に関心を持ち、フラットな心で相手が伝えたいことを受け止めましょう。

  • 組織文化の変革

知の探索というチャレンジは未知の領域に足を踏み入れることになるため、この方法で良いのかという不安がつきまといます。また、今までの成功体験・常識を捨て去るには勇気が必要です。さらに、日本ではリスクを取り、チャレンジすることが尊重されにくいので、なおさら変革に対して消極的になってしまいがちです。
このような状況でチームのパフォーマンスを向上させるには、チームの心理的安全性を高めるのが効果的です。心理的安全性とは、チームメンバの誰もが、新しいアイデアを出したり質問したり、問題点を指摘してもバカにされたり批判されない、すなわち「このチームなら率直に言いたいことが言える」と思える心理状態を作ることです。こちらについてはGoogleで調査した結果が発表されており、最後にリンクがありますので、ぜひ一度目を通していただければと思います。
リーダーが主導して心理的安全性が高いチームづくりを進めていくのが効率的ですが、メンバでも他のメンバの発言を引き出す、他のメンバの意見を尊重している態度を見せる、もしくは自分が積極的にアイデアを出す、懸念を表明するなどして率直に意見が言える雰囲気作りをすることは可能です。ビジョンは必要ですが、ビジョンだけでは人は動かないので、現場を回していくことを一人でも多くの人が意識して取り組むことが重要です。また、「べき論」を好む人も少なくないですが、絶対的ではなく、組織や局面によって変わるもので、主観的なものにすぎません。分断を招きやすいので、とらわれすぎないようにしましょう。

  • 人とつながる

よく使う製品・サービスのユーザコミュニティ、または所属する業界のセミナーに参加し、他社の成功事例を収集する、また自社の成功事例を共有するなどして相互研鑽を図るということが、エンジニアとしての価値向上だけではなく、ユーザコミュニティや業界の活性化にもつながります。

インフォマティカができること

一般論ではなく、インフォマティカとして一体何ができるのか?というご意見もあると思いますので、弊社がDX推進のためにできることもお伝えいたします。

  • 価値の創出
  • 人をつなげる
  • 企業のアジリティ向上
  • 価値の創出

ユーザ企業とDXを一体的に推進するパートナーとして、モダンアーキテクチャ、ベストプラクティスや成功事例をもとに、アカウントチームでお客様のデータ戦略を推進していくための提案をさせていただきます。また、カスタマーサクセスチームでも活用のための取り組みについてご提案させていただきます。

  • 人をつなげる

インフォマティカではIWT(Informatica World Tour)やユーザカンファレンスなど、インフォマティカのビジョンをお伝えしたり、ユーザ企業の成功事例を共有するイベントを開催しています。先日のユーザカンファレンスでは、データ連携、API連携、マスタデータ管理、データガバナンスなどのテーマに分けてディスカッションを行ったのですが、参加者の方からはユーザ企業の方々の取り組みを聞けて参考になった、また同じ悩みを抱えているということがわかり安心した、などの声をいただいています。ユーザ企業の方々をつなげるだけでなく、牽引できるよう、今後もユーザ観点を重視した取り組みを行っていきます。

  • 企業のアジリティ向上

企業のアジリティ向上には、知の探索を行うため柔軟に利用、拡張できるデータマネジメントプラットフォームが必要です。インフォマティカはAWS、Azure、GCPなどのクラウドをベースとしたクラウドサービスを提供しており、IPU(Informatica Processing Unit)ベースの課金でIDMCのすべてのサービス・コネクタが利用可能であるため、ビジネス・ユースケースに最適な利用が可能です。また、DXレポート2.1でも言及されているように、ユーザ企業はアジリティ向上のために、ベンダー企業任せから内製化への移行が必要です。インフォマティカはIDMCに関するトレーニング・サービスの提供や認定資格制度を設けており、ユーザ企業のIT対応能力の向上のご支援をさせていただきます。

最後に

人生100年時代と言われる現代において、少子高齢化の日本を支えるため、われわれには長く働くことが求められます。知識と経験をアップデートしつづけることで、さまざまな分断を乗り越え、世代や国境を超えて多くの人々と一緒に仕事もプライベートも楽しんでいけたらいいですね。

今年のクリスマスイブは、私はチャリティーサンタとしていろいろな家庭を訪問します。子どもたちに「ニセモノ!」と言われた場合の対応も、運営メンバの大学生の子たちのご指導のもと、ロールプレイングを重ねてバッチリです。
街かどでサンタクロースを見かけたら、ぜひ声をかけてみてください。

それでは、メリークリスマス!

参考リンク

おことわり(Disclaimer)

投稿する記事は私個人の見解であり所属する会社の公式な見解ではありません。
All articles I post onto Qiita are based on just my personal understanding or opinion. That means the articles are not expressed as an official opinion of the company I am belonging to or have belonged to.

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