はじめに
はじめまして。レアゾンHD・開発本部の中津留です。
前職では、工場向けの画像検査システムや組込みシステムなどの仕事をしていた開発エンジニアです。
弊社に入ってからは、なんちゃってPMにキャリアチェンジしています。そこで気づいた学びをポエムにしました。
業務フローの最適化が成功への鍵
近年、業務改善と効率化の手段としてAIへの関心が高まっています。しかし、AIはあらゆるビジネス上の課題に対する万能薬であるという認識は誤りです。本稿では、AI導入を検討する前に、既存の業務フローを徹底的に分析し、最適化することの重要性を主張します。この結論はPREP法を用いて説明され、業務効率化におけるAIの役割と、AIに頼らずに業務改善を達成した事例を比較分析することで裏付けられます。
結論
安易なAI導入ではなく、業務フローの洗い出しと最適化が重要である
AI導入を検討する前に、組織はまず既存の業務プロセスを詳細に分析し、最適化することに注力すべきです。高度なAIであっても、明確に定義されたインプットとワークフローがなければ、有意義な成果を期待することはできません。多くの場合、業務プロセスの最適化自体が、AIに頼ることなく大幅な効率向上につながる可能性があります。
理由1:AI導入の成功は、最適化された業務プロセスに大きく依存する
AI導入に成功している企業の事例を見ると、その多くが効率化されたワークフローを基盤としていることがわかります。AIは、既存の洗練されたプロセスをさらに強化する役割を果たすことが多いのです。
事例1:パナソニック - 「ConnectAI」による社内生産性向上
パナソニックは、OpenAIの大規模言語モデルを基盤とするAIアシスタント「ConnectAI」を導入し、従業員の生産性向上を図りました。導入前の具体的な業務フローは明示されていませんが、情報検索、戦略立案、製品開発といった業務に多くの時間を費やしていたことが示唆されています。「ConnectAI」導入後、これらのタスクが自動化され、1年間で全国内従業員において18万6千時間もの労働時間削減を達成しました。利用頻度も増加し、当初は検索エンジンのような簡単な用途が中心でしたが、戦略策定や製品企画といったより複雑な業務にも活用されるようになり、一部では1時間以上の生産性向上につながっています。製造業特有の材料や製造プロセスに関する専門的な質問への利用も増えています。この事例から、AIアシスタントの成功的な統合と利用の増加は、従業員がAIを効果的に活用できる確立されたワークフローが存在していたことを示唆しています。利用用途の進化は、既存の業務プロセスにAIが適切に組み込まれ、適応されていることを示唆しています。1
事例2:オムロン - 製造業におけるAI活用
オムロンは製造プロセスにおいてAIを活用し、効率化と品質向上を実現しています。導入前の具体的な製造ワークフローは詳細には述べられていませんが、リアルタイムでのデータ分析や最適化が少ない、より伝統的なアプローチであったと考えられます。AI導入後は、製造プロセス中のデータをリアルタイムで分析し、生産ラインの最適化、異常検知と予知保全、品質向上に貢献しています。人間と機械の協調作業による高度な自動化も実現し、ロボットが反復作業を担い、人間はより創造的な業務に集中できるようになりました。製造拠点のデジタルエンジニアリングにバーチャル技術を導入し、リモート監視やシミュレーションによる効率化と柔軟性の向上も図られています。リアルタイムでのデータ分析と生産ラインの最適化の実現は、オムロンがAI統合の基盤となるデータ収集と処理のメカニズムを確立していたことを示唆しています。
事例3:セブン-イレブン - AIによる商品企画
セブン-イレブンは、商品企画に生成AIを活用し、効率化と売上増加に成功しました。導入前は、店舗数の多さと多様な商品ラインナップのため、新商品企画は困難を伴い、時間とリソースを要する手作業が中心であったと考えられます。AI導入後は、市場データとSNS上の消費者の反応を分析し、需要の高い商品を特定し、新たな商品アイデアを生み出すことで、商品企画プロセスを自動化しました。AIが提案した新商品は好評を得ており、売上増加に貢献しています。商品企画の効率が向上し、商品開発にかかる時間とリソースが大幅に削減されました。販売データやSNSの反応を効果的に分析する能力は、セブン-イレブンがこれらの情報を収集し、整理するためのシステムを整備しており、AIがそれを活用できたことを示唆しています。
事例4:LINE - ソフトウェア開発におけるAI活用
LINEでは、ソフトウェア開発において生成AIを活用し、エンジニアの業務効率化を図っています。導入前は、エンジニアがルーチンなコーディング作業、コードレビュー、エラー検出などに時間を費やしていました。AI導入後は、コード記述の提案、エラー検出、最適化対応などが自動化され、エンジニア一人あたり1日1~2時間の作業時間削減を実現しました。これにより、空いた時間を新たなサービスの考案といった付加価値の高い業務に充てています。LINEのエンジニアチーム内に確立されたコーディング慣行とワークフローが存在したことが、AIツールのスムーズな統合と活用を可能にしたと考えられます。
表1:AI導入の成功とプロセスの役割
企業名 | 業界 | AIの用途 | AIによって可能になった主なプロセス変化 | 導入前のプロセスの成熟度 (定性的評価) | プロセスに関連する主な成功要因 |
---|---|---|---|---|---|
パナソニック | 製造業 | 社内生産性向上 | 情報検索、戦略立案、製品企画の自動化による時間短縮 | 中~高 | 既存の業務フローにAIが効果的に統合されたこと、従業員がAIを活用する能力 |
オムロン | 製造業 | 製造プロセス最適化 | リアルタイムデータ分析による生産ライン最適化、異常検知 | 中 | データ収集と処理のメカニズムが確立されていたこと |
セブン-イレブン | 小売業 | 商品企画 | 市場データ分析とトレンド予測による商品企画の自動化 | 中 | 販売データと消費者データの収集・整理システム |
LINE | IT | ソフトウェア開発 | コード提案、エラー検出、最適化の自動化 | 高 | 確立された開発プロセスとワークフロー |
理由2:プロセス中心の戦略による効率化の実現(AIなし)
AIに頼らずとも、業務プロセスの最適化に焦点を当てることで、効率と生産性を大幅に向上させることが可能です。プロセス改善手法、AI以外のテクノロジー導入、組織体制の変更などによって、多くの企業が業務効率化に成功しています。
事例1:株式会社建新 - 柔軟な働き方の導入
戸建住宅の分譲販売を行う株式会社建新は、「ALL-Win」を企業理念に掲げ、残業時間削減と完全週休3日制を目指し、働き方改革を推進しました。具体的な施策として、月1回の週休3日制の試行導入、始業前後のPC自動制御、残業事前申請制、労働時間モニタリング、現場管理ツールのデジタル化などを実施しました。その結果、月平均残業時間は2019年度の40時間から2021年には約20時間にまで減少し、営業利益は約200%増加、新卒採用応募者数も9倍に増加しました。この事例は、明確な目標設定、プロセス変更(残業の事前申請など)、そしてAI以外のテクノロジー(デジタルツール)の活用が、AIなしでも大きな効率改善につながることを示しています。
事例2:NECネッツエスアイ株式会社 - テレワークの推進
ネットワークソリューション事業を行うNECネッツエスアイ株式会社は、テレワークの推進により業務効率化と生産性向上を実現しました。2007年からペーパーレス化を推進し、2015年からはテレワークの実証実験を行うなど、段階的な取り組みを進めてきました。ペーパーレス化、フリーアドレス制の導入、在宅勤務の実証実験、業務進捗管理ツールの開発、サテライトオフィスの開設などを経て、全従業員を対象としたテレワークを本格運用しています。この事例は、段階的な検証と現場の意見を取り入れながら、着実にプロセス変更を進めることで、AIに頼らずとも効率化を実現できることを示しています。
事例3:株式会社唐沢農機サービス - 情報共有とマニュアル化
インターネット上で農機のマーケットプレイスを運営する株式会社唐沢農機サービスでは、顧客対応の効率化と均一化を図るため、属人化していた情報を共有化し、詳細な業務マニュアルを作成しました。これにより、迅速かつ的確な顧客対応が可能になり、月平均残業時間は約20時間から8時間に短縮、未経験者やパート従業員の雇用も容易になりました。この事例は、業務プロセスの標準化と情報へのアクセス改善が、AIなしでも業務効率を大幅に向上させることを示しています。
事例4:鹿島建設株式会社 - ERPシステム「HUE SCMシリーズ」の導入
鹿島建設株式会社は、20年以上運用してきた自社開発の基幹システムをERPパッケージ「HUE SCMシリーズ」で刷新しました。これにより、年間100万枚の書類削減というペーパーレス化を達成し、クラウド運用によるテレワークも推進されました。この事例は、AIではないものの、包括的なシステムを導入し、業務プロセスをデジタル化することで、大幅な効率改善と働き方の変革を実現できることを示しています。
表2:AIなしでの業務効率化成功事例
企業名 | 業界 | 効率化の課題 | 最適化の方法 | 主な成果 |
---|---|---|---|---|
株式会社建新 | 不動産業 | 残業時間の削減、完全週休3日制への移行 | 柔軟な働き方の導入、業務プロセスの見直し、デジタルツールの活用 | 残業時間の大幅削減、営業利益の増加、採用応募者数の増加 |
NECネッツエスアイ株式会社 | IT | 業務効率と生産性の向上 | テレワークの推進、ペーパーレス化、フリーアドレス制の導入 | テレワークの本格運用、通勤負担の軽減、従業員満足度の向上 |
株式会社唐沢農機サービス | EC | 顧客対応の遅延と属人化 | 業務マニュアルの作成と情報共有の促進 | 迅速かつ的確な顧客対応、残業時間の削減、人材育成の効率化 |
鹿島建設株式会社 | 建設業 | 複雑で老朽化した基幹システムの刷新 | ERPシステムの導入とペーパーレス化の推進 | 年間100万枚の書類削減、テレワークの推進、情報アクセスの向上 |
具体例:早すぎるAI導入の危険性
データ不足や最適化されていない業務フローのままAIを導入すると、期待される効果が得られないばかりか、業務の混乱を招く可能性もあります。
以下はデータ不足または低品質なデータによる失敗例です
- 不正取引検知AIの失敗 : ある金融機関が不正取引を検知するAIシステムを開発しましたが、実際の不正取引データが極端に少なかったため、誤検知が多く発生し、既存のルールベースのシステムに戻すことになりました。AIモデルの学習には十分な量のデータが必要であり、データが不足すると精度が低下します。
- 製造業における故障予測AIの失敗 : 製造業の企業が工場のセンサーデータを用いて製品の故障を予測するAIモデルを開発しましたが、センサーデータに異常値や欠損値が多く含まれていたため、正確な故障予測ができず、誤った判断を下してしまう可能性がありました。データの質も量と同様に重要です。
- 製造計画AIの失敗 : ある半導体メーカーが製造工程の一部でAIを活用しようとしましたが、プロジェクト途中で方針が二転三転し、必要なデータが十分に取得できず、AIの有効性を十分に発揮できませんでした。AI導入の目的と必要なデータを明確にすることが重要です。
最適化されていない業務フローとの不整合による失敗例 - カスタマーサポート自動化AIの失敗 : ある企業がコスト削減を目的にAIを活用した自動応答システムを導入しましたが、顧客体験の向上を考慮せず、自動応答の誤回答が多発したため顧客満足度が大幅に低下し、導入後6ヶ月でシステムが廃止されました。既存の業務フローを十分に分析せずにAIを導入すると、顧客満足度を損なう可能性があります。
- コンテンツ作成における生成AIの失敗 : ある企業では、すでにテンプレート制作や定型化が進んでいたにもかかわらず、生成AIを導入した結果、プロセスが複雑化し、導入前よりも人員の稼働が増加してしまいました。既存の業務プロセスとの整合性を考慮せずにAIを導入すると、逆効果になることがあります。
- ユーザーの協力が得られないAI導入の失敗 : IT部門だけでAI導入プロジェクトが進められ、現場の担当者がその価値を理解しない場合、AIツールは活用されず、宝の持ち腐れとなってしまいます。AI導入を成功させるには、現場の意見を聞き、共に作り上げていくことが重要です。
したがって、まずは業務フローを見直し、最適化を図ることが、真の業務改善につながる。AI導入は、その後の選択肢の一つとして検討すべきである。
安易なAI導入ではなく、まず既存の業務フローを徹底的に洗い出し、最適化することが、持続可能で効果的な業務改善への道筋です。AI導入で成功している事例の多くは、事前に業務フローが整理・最適化されています。また、AIに頼らずとも、業務プロセスの改善、テクノロジーの導入(AI以外)、組織体制の変更などによって、顕著な業務効率化を達成している企業も数多く存在します。一方、データが不足していたり、既存の業務フローとの整合性が取れていない状況でAIを導入すると、期待される効果が得られないばかりか、業務の混乱を招き、投資が無駄になる可能性さえあります。
したがって、まずは業務フローを見直し、最適化を図ることが、真の業務改善につながります。AI導入は、その後の選択肢の一つとして検討すべきです。最適化されたビジネスプロセスは、将来的なAI導入の際にも、その効果を最大限に引き出すための強固な基盤となるでしょう。
結論:プロセスを優先することで持続的な影響を
デジタル変革への取り組みにおいて、プロセス最適化に焦点を当てることは、長期的な利益をもたらす基盤となります。適切に最適化された業務プロセスを持つ組織は、将来的にAIの力を効果的に活用するための準備が整っていると言えるでしょう。
ということで、Geminiに記事を作成してもらいました。我ながらうまく書けていると思います。
AIとハサミは使いようの時代ですね。
さて伝えたかった内容としては、問いの設定によってAIの真価が問われるという話です。
初めてのタスクを振り返ってみた内容を先日、LayerX様のイベントで発表してきました。
今回の糧としては、巨視的な視点が足らず、対処療法になってしまったことです。
以下が一般的な広告代理店のバリューチェーン(業務フロー)です。
チェーンの各段階には担当者がアサインされていますが、それぞれが認識している問題点は異なっているのが実情です。
つまるところ、今回の経験から得られた教訓は、まさにこのバリューチェーンマネジメントの重要性にある、ということになりますね。
当日の様子は以下のyoutubeにて公開されています。
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