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システムは使われてナンボ~プロマネが考えるべき定着化・活用促進のための勘所~

Last updated at Posted at 2020-03-18

♪私にはスタートだったの。あなたにはゴールでも(何も言えなくて...夏/J-WALK

昭和世代にはお馴染みのヒット曲のフレーズですが、私がシステム開発のPJをはじめる時いつも頭に思い浮かべる言葉です。
先日書いたこちらの記事は、リリース後に始まるエンジニア負担をどう最小化するかという話でしたが、今回は別の観点でリリース後に向き合うことになる「情報システムの定着化・活用促進」についてまとめてみました。

システムを作るだけがプロマネの仕事ではない

BI(Business Intelligence)システムに代表される「情報系システム」、今風にいうとSoE(システムオブエンゲージメント)システムの場合、システム機能をどう最適化するかも大切ですが、作ったシステムをどう活用するかも同じぐらい(またはそれ以上に)重要です。

組織における情報システムの活用・定着レベルをここで仮に「エンゲージメント」と呼ぶと、システムの価値を機能の充実度とエンゲージメントを両軸で考えることは、プロジェクトの成功に極めて大切な要素だと言えるでしょう。(下図参照)

使われてナンボ.png

ですが、冒頭の歌詞よろしく、特にベンダーとして開発プロジェクトに携わるメンバーの多くは、カットオーバーがPJのゴールになってしまうことが残念ながら少なくありません。言うまでもなくお客様はシステムのカットオーバーはむしろスタートであり、ある意味ここからが本当の勝負なのです。リーンな開発スタイル、つまり時間かけて100点ではなく素早く60点を取り、ユーザーの声を聞きながら点数を上げていくアプローチが増えた昨今、稼働後のシステムエンゲージメントをいかに高めるかは、システムの投資効果を最大化する上で非常に大切なポイントです。

またこのエンゲージメント向上活動は、いわゆるシステムの運用保守作業とは一線を画します。ユーザーへの窓口という点のみで運用保守チームにこのエンゲージメントの役割を担わせる組織も少なくありませんが、これは非常に問題です。まったく違う種類の業務であり、求められるスキルも異なります。両方できる人もいるかと思いますが、別の役割として体制も分けるのが効果的です。

#エンゲージメント向上の施策例

ここではエンゲージメントを高める施策例を見ていきます。

システム活用推進事務局(仮称)の設置

システムの運用保守と同様にエンゲージメント向上を専任とする体制が効果的です。
情シス部門メンバーだけではなく利用部門側メンバーを中心とした体制が望ましいです。

経営陣/幹部層へのアピール

大企業であればあるほどここが重要になりますが、影響力のある役職者にしっかり応援してもらう文脈作りは欠かせません。企画や開発フェーズから積極的に巻き込むことが必要になってきます。
実際に弊社であった事例ですが、まだシステムが出来上がっていない段階から、そのシステムのメリットを紹介するティザー動画を用意しクライアントの社長に見てもらったことがありました。動画制作には結構パワーがかかりましたが、結果社長から大絶賛を受け、その後の展開に大きな原動力となりました。コストはかかりましたが、トータルでは大きなメリットがあったと感じています。
やり方はどうあれ、経営層と握った上で現場に利用の号令をかけてもらうことと組織を動かすに上で非常に効果的ですので、使わない手はありません。

現場部門への丁寧かつ反復周知

基幹システムのようにそのシステムを使わなければ業務が回らないというものではない場合、提供側が期待するほど無条件に使ってくれるわけではありません。そのシステムの存在と効用を繰り返し周知していくことが大切です。まずは各利用部門の定例会議体行脚から始めるケースが多いかと思います。事前に部門の方に了承をいただいた上で紹介の時間をもらい、システムの目的やメリット、使い方などを短時間でまとめてプレゼンさせてもらいます。理想的には利用開始前、開発期間中に頭出しの機会を一度事前に挟めるのがより効果的です。社内コミュニケーションに腰が重いお客様も実はいらっしゃいますが、ここを後押しするのが我々のような外部パートナーの役割だと理解しています。

活用事例の収集・資料化・発信

上記のシステム活用推進事務局から定期的なメルマガや社内ブログを発信することは非常に効果的ですし、各種関連情報を一覧で見ることができる社内イントラページなどを作成運用することもお薦めしています。最近だと便利なシステムの使い方などをミニ動画にして公開されている会社もあります。
現場ユーザーにとってシステムを使う最も大きな動機は、実際に役に立つことです。具体的な成果事例ほどユーザーの気持ちを動かす情報はありません。よく利用してくれている部門や個人にヒアリングをして、その活用方法や具体的な成果をコンテンツにして発信することはとても効果的です。ちなみに弊社の事例で、実際に台本を用意しプロの俳優さんを使って活用促進動画を制作したこともありました。

問い合わせへの真摯な対応

システム稼働後は初歩的な問い合わせが多くなります。正直マニュアルに書いてある内容や、そもそもPCやブラウザの使い方レベルのことも活用事務局に質問がくることも少なくありません。ただそうした声に丁寧に向き合うことこそが、地道なファン獲得につながることもあります。カスタマーサポートの大切さはB2Cだけでなく社内でも同じなのです。もちろんよくある問い合わせはFAQなどのコーナーをイントラに用意し、より短期間に問題を解決できるようにしてあげることも効果的です。手前味噌ですが弊社の製品であるFAQチャットボットなどを活用するのも有効です。

閲覧ログに基づいた活用度分析

一方お客様先で意外とできていないのが、ログ情報に基づいた利用分析です。**「誰がいつどの機能をどれぐらい使っているのか?」**を丁寧に追いましょう。単なる風評だけでなく、こうした客観データに基づいて対策を考えないと思い付きの打ち手になってしまいます。ちなみにこの閲覧ログが取れる機能はエンゲージメントを高める上で重要な要件ですが、企画時点で考慮されていないことがあります。導入検討時に可能な限り漏らさないようにしましょう。

その他

他にもシステムの活用レベルに応じたシステム活用ランク認定制度を設定したり、活用状況のランキングを公開するなどゲーミフィケーションを利用することもあります。

#伝わらないのは伝える側の責任

以上総じて言えば社内を市場と見立てたリピーター確保のためのマーケティングコミュニケーション施策だとも言えます。
手法は上記含めいろいろありますが、結局一番の勘所は「粘り強さ」です。相手は同じ社員同士ですが、正直現場の協力姿勢が得にくいことも少なくありません。すべては「物事が伝わらなければ伝える側に問題がある」と捉え、腰を据えて取り組めるような体制を確立していただくことが重要だと言えるでしょう。

#情報システムは活用されてナンボ
エンゲージメントの大前提は作られたシステム(プロダクト)自体が良いものであることでは言うまでもありません。ただ良いプロダクトを創ることは、仕事の半分です。システムは誰かの課題を解決しビジネス成果をあげなければ存在価値はないに等しいのです。「活用されてナンボ」の精神をシステム開発に関わるメンバーは常に意識したいですし、その考えをプロジェクトに浸透させるのもプロマネの大切な役割だと思っています。


以上プロマネが考えるべき開発した情報システムのエンゲージメントについてまとめてみました。何かお役に立てられたら幸いです。

(PR)弊社では他社で開発されたものも含め、システムのエンゲージメントを高めるお手伝いも行っています。もし構築中のシステムの活用推進についてお悩みの場合は、是非こちらまでお問い合わせください。
システムに関する問い合わせ対応工数削減には弊社のFAQチャットボット「LOOGUE FAQ」も是非ご検討ください。
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