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Raspberry PiでRTKLIBとBluetoothを使ってAgriBus-NAVIにNMEAデータを流す

Last updated at Posted at 2018-08-15

全体図(仮)

zerow-rtk (1).png

想定している利用シーン

  • スマホやWiFiルータから繋げられる基地局が近く(自分が実験した限りでは2km以内)にある
  • 基地局とトラクターのGPS受信機はRTKLIBでFIXできるように設定済み ttyACM0,115200,ubxフォーマット出力されていて、RaspberrPiで使用可能なものとして扱っています
  • トラクターにRaspberryPi zeroWを設置して、WiFiルータ等でネットに出られる
  • RTKLIBで処理した結果をNMEAとして出力し、Bluetooth(RN-42)でAndroidに送り、AgribusNAVIで使う

充電の都合

(株)農業情報設計社の提供しているAgriBus-NAVIはAndroidで使用可能な、トラクター農作業のGPS支援情報アプリです。
トラクターでの作業は作業速度が遅いため、どうしても長い作業時間が前提。そのため充電しながら動かしたい。

  • でもAndroidってmicroUSBが1個しかない。
  • USB-OTGという手もあるけど、USB供給電流が不足してシリアルUSBが不安定になったり、Androidの充電が減る速度に間に合わなかったりして色々微妙。
  • rtkgps+という手もあるけれど、SNR Maskや仰角マスクが指定できなかったりして微妙。 CPUの発熱やバッテリー消費も激しくなるし、熱暴走しやすくなる点も問題。 AgribusNAVI自体もかなり重いので、輪をかけて重くなる。(最近のAndroidだとスペックも上がってるでしょうから、違うのかもしれません)

いいとこ取りでAndroidのUSBは充電専用にして、RTKLIBはRaspberryPiで動かし、GPS受信機もRaspberryPiに接続、zeroWならWiFiあるからテザリングして基地局のデータをゲット、そしてAndroidへ流すシリアルを無線化できれば・・

そうだ、Bluetoothがあるじゃないか!

Bluetooth SPP対応モジュール

BluetoothにはSPP(Serial Port Profile)というプロファイルがあり、シリアル通信が可能。
(プロが使う測量用の機器にも、ここ数年の機材だとBluetooth SPP対応のものがあります。)
「充電の都合」にも書いたとおり、microUSBは充電専用にしておいて、BluetoothでRTKLIBが処理したGPS情報をゲットしよう!という作戦です。

RaspberryPi zeroW

「zeroWにはbluetoothあるんだから、それ使えば?」と思われた方、スペック確認を細かくなさってますね!
結論から言えば自分なりに調べて試しましたが、いまいち安定しませんでした。
安定稼働させる方法をご存知の方、ぜひご一報お願いします。

今回はWiFiのみ使います。

今回用意したもの

RN-42評価モジュール
FTDIのシリアルUSB変換チップが乗ってるので、ドライバ入れてTeraTermなどですぐに使える。
でも電源容量が不足しているのか、FTDI経由でデータ流すと不安定になりがち。USBは初期設定専用と割り切ったほうがいいかも。

先人がコマンドをまとめてくださっています。

RN-42モジュールのコマンド

通信速度や名前などが変更可能。初期設定は115.2kbpsなので、後述するRTKLIBの設定と合わせること。

RaspberryPiの設定

最低限の設定のみ。

  • WiFiの設定
    AgribusNAVIの実用面を考え、トラクターに乗ったときzeroWがネットに出るために、スマホやWiFiルータも登録しておきましょう。

  • シリアル通信の設定
    raspi-config→Interfacing Options→Serial→No→Yesでも可能になる?(未確認)

RN-42とRaspberryPiを接続

RN-42は秋月電子のマニュアルを参照。Raspberry PiのGPIOはググれば出てくるので省略。
最低限配線する必要があるのは、3.3V,GND,TXD,RXDのみです。

RTKLIB

現時点での最新版は rtklib 2.4.3b29ですが、コンパイルする際にちょっとコツが必要です。

$ sudo apt install -y gfortrun
$ cd ~/RTKLIB/lib/iers/gcc/
$ make
$ cd ~/RTKLIB/app/
$ make

設定ファイルの主要部分のみ抜粋

pos1-posmode       =kinematic
pos1-elmask        =20         # (deg)
pos1-snrmask_L1    =40,40,40,40,40,40,40,40,40
pos1-exclsats      =C02
pos1-navsys        =51 #GPS+QZSS+BDS
pos2-armode        =fix-and-hold
inpstr1-type       =serial     
inpstr2-type       =tcpcli     
inpstr1-path       =ttyACM0:115200:8:n:1:off #移動局のu-blox
inpstr2-path       =[基地局のアドレス]:[ポート番号]
inpstr1-format     =ubx        
inpstr2-format     =rtcm3      
outstr1-type       =serial
outstr1-path       =ttyAMA0:19200:8:n:1:off
outstr1-format     =nmea

RTKLIBは設定ファイルチェックが厳しいため、バックアップを忘れずに。
elmask,snrmaskはWindows版のRTKLIBでグラフ見ながら微調整してください。

自分はTW2710+M8Tの組み合わせで使用していますが、体感的にはそれぞれ15-20,40-42の間ぐらいがFIXしやすいようです。

Androidに接続

Androidの「設定」→bluetooth→RNBT-[MACアドレスの末端4桁]が出てくるので接続します。

RTKLIBの動作確認

RN-42からNMEAが流れてきてるかチェック

Serial Bluetooth Terminal

IMG_3638_01.png

Agribus-NAVIに接続

おつかれさまでした。

自動起動

/home/pi/rtkrcv
/home/pi/rtk.conf
RTKLIBをmakeして出来上がったファイルを上記の場所にコピーして配置されている、という前提です。

$ sudo apt install -y screen telnet
/etc/rc.local
sudo -u pi sh /home/pi/rtkrcv.sh 
/home/pi/rtkrcv.sh
#!/bin/sh

cd /home/pi
screen -AmdS rtkrcv ./rtkrcv  -o ./rtk.conf -s -p 2101 -w ""

telnetでrtkrcvの操作が可能。

$ telnet localhost 2101

パスワードはrtk.confに設定したものです。

シャットダウン処理の問題

RaspberryPiの仕様上、シャットダウンボタンの一つも無いので、GPIOに物理的なシャットダウンボタンを付け、自前でスクリプト書いてシャットダウンさせるか、ファイルシステムの破損覚悟で電源引っこ抜くかしかありません。

Alpine Linux

選択肢その1

FATフォーマットされているSDカードに、tar.gzを解凍するだけで使える超軽量Linuxディストリビューション。
クラウドとかDocker界隈では、容量が少なくて起動が早い特性が気に入られて人気なようです。
起動後はルートファイルシステムがtmpfsに展開されているため、電源ブッチしても大丈夫。
lbu commitを実行しない限りSDカードに変更内容を書き込まない仕様です。

一方でその軽量さを実現するためにBusyBox使われていたり、アレがないコレが無いという点もありますので一長一短。
この記事で使用しているRTKLIBはalpine-sdkを入れるだけでコンパイルできました。

aufs

選択肢その2

対策としてSDカードをLinuxのOS上で書き込み禁止にします。

RaspberryPi2 の SD カードを aufs と fsprotect で保護する
記事中にはありませんが、/boot/cmdline.txtに追記したfsprotectを削除すると、元の通り書き込みできるようになります。

kernelのビルドが必要なので、zeroWだと7時間くらいかかります。
そんなに待てるか!という方はpi3で行う(20〜30分位?)とか、Virtual Box等(i7とかなら数分)でのクロスコンパイルをおすすめします。

kernelのバージョンを固定する

せっかく作ったkernelもupdateで消し去ってくれたりするので、バージョンを固定しておきましょう。

# apt-mark hold raspberrypi-kernel

完成

下から順に12Vから5Vのレギュレータ、RaspberryPi zeroW、シリアルと5Vを引き回すだけの基盤、RN-42です。
12Vを直接RaspberryPiの5Vに入れると、電源ICから煙吹いて壊れます。(壊しました)
レギュレータは適当な7805とかでももちろんOKですが、実験してみたところ放熱板が必要な程度には発熱するので、今回はジャンク箱にあった適当なレギュレータを使いました。
また、バッテリーから直接12Vを取り出す場合、安全のためにヒューズボックスも別途必要です。

IMG_1036_01.JPG

忙しい人のためにイメージファイル作りました


https://drive.google.com/file/d/1XeHxPLVUDYVc8NkWpDiQIWl97ilXdE7f/view?usp=sharing

GoogleDriveの容量足りなくなったので公開停止しました。

---使い方
前記のイメージファイルをダウンロードする。どうにかしてSDカードに焼いてsshでログインする。
ユーザ名pi Pass raspberryでログイン後、sudo sh ./fsprotect.sh を実行。(しばらくかかります。Pi3とか使うと早いです。)
/boot/cmdline.txtの最後尾にfsprotectを入れる。

追記:スクリプト入れてたつもりが、awsインスタンスの彼方へと消えていってしまいました・・・。しばらく時間とれないので、後日組み直します。

オマケでpps(超高精度な時計)のkernelモジュールも有効化してあります。使い方はググってください。

設定ファイルなどに変更を加える場合は /boot/cmdline.txt の最後にあるfsprotectを消去してから、RaspberryPiに入れてください。
aufsを有効化するには同じ手順でfsprotectを書き込んでください。

ESP32 M5Stack用のNTRIP clientクラス

を作って公開されている方がいます。自分の環境では16時間程度安定して使えました。
https://twitter.com/love_richman/status/1067738209889611777

謝辞

岩崎、奥山、小野に下読みをしていだただき、岩崎には全体図のアイディアをいただきました。この場にて感謝の意を伝えます。(敬称略)

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