概要
裁判というものは普通生活しているとなじみのない世界ですが、法律事務所にとっては日常の仕事の場になります。実際のな裁判の流れは、『事実認定』というプロセスが入り、認定された事実をもとに裁判所が法律や判例を参照して、判断を行っていくというのが実際の流れになります。
裁判所は判例を出すと、法律解釈に対して、影響を与えることから、非常に前例主義であり、過去からの法律解釈の積み上げも重視する傾向にあると思います。
AIを法律事務所が利用する例がありますが、本記事は、証拠の判定の中で、手書きメモの変造の判断にAzureのCustom Visionを使用するということを考えてみました。変造や捏造の立証は難しいことから、実際はその手の証拠が提出される場合も残念ながら多くあります。
本件の内容は、裁判所に提出していますが、現在は審理がこれからなので結果は先になりそうです。
裁判の流れ
下級審おこなわれる裁判の多くは、事実認定で結論決まってきます。事実を争うことが主眼になり、自身の主張を証明するために証拠がすべてそろっているわけではないので、間接的な証拠を使ったり、複数の事実から、必要な事実が推定されることを狙った作成を立てたり等、担当弁護士の腕が反映される部分ではないかと思います。
筆跡鑑定
日記や手書きメモが証拠として提出される場面はよくありますし、言った言わないという揉め方は日常のどのような場面で誰でも直面する問題ではないかと思います。ただ、よほど揉めることを想定していない限り、録音しているわけではないので、揉めた場合にはまめに記録を残している方が有利になります。
問題は単なる行き違いだったらただの揉めごとなのですが、計画的に捏造されている場合や後で都合よく書き換えられている場合、なかなか反論が難しいことを多くあります。筆跡鑑定の専門家はとても高額になる事情から、大きな案件でなければ、中々お願いしにくい事情もあります。鑑定士にお願いすると同じ人が書いた比較用のデータを要求されます。
鑑定士への提出資料を見ていると、やっていることは、機械学習ではないかと思ったのが記事のアイデアになります。
本件の提出資料の一部ですが、下記のように元々数字だったものを数字以外に書き換えています。30という数字が記述されていたら、まずい状況になるので、書き換えたようです。
数字の変造は領収書などの会計の世界でもあり得る話です。
Custom Vision Serviceの利用
内容はDeepLearningのサンプルで必ず使用されるMINISTを思い出しますが、MINISTのデータから判定させると必ずしも良い結果が得られるとは限らないです。
本件でも実行してしてみましたが、口の字は見た目0に近い場合があるので、0のように判断してしまう場合もあります。FC層を取り出して転移学習する方法もありますが、それをやるなら、汎用の画像認識と変わらなくなるので、Custom Visionを試すことにしました。
Azure Custom Vision Serviceは汎用のサービスなので、通常の筆跡鑑定を頼んだ場合と違い、判断にかたよりが入りません。また、筆跡鑑定はとても高価なので、個人の訴訟などには非常に使いにくいサービスになります。
参照用のデータは大きくとれませんでしたが、7-8枚程度準備しました。
0のデータ
口のデータ
判定結果になります。
0と判断してよいと考えられ、提出資料は変造されていると推定されました。
結論
汎用的なサービスが充実してきたので、応用はアイデア次第ではないかと思います。客観性の表現が難しい世界に画像認識は客観性を持ち込めるため、この分野は有効ではないかと考えています。