はじめに
今年、テスト実行者向けの研修講師を何度かやった。それもソフトウェアテストの経験がない人向けのものであった。私が講師として関わる前に既に前提知識や概念、心得え的なところは研修されていて、より実践的な内容の講義を私が受け持った。結構実務的な話も盛り込んだこともあって、ある質問を受けた。それはこんな内容であった。
テスト実施者の次に進むためにどんなことを意識したらよいか?
あまり想定していなかった質問だったがその場で考えて回答した。そこで回答したことは進む道がいくつかあるからそれによって必要なスキルも変わる。進む道は例えば、テスト設計者、テストマネジメント、自動化エンジニアなどがある。それぞれで必要なスキルも変わってくる。進む道は自分が何に興味があるか、何が好きか、何が得意そうかを見つけることが大事である。私のその場の回答はそんな感じだったが、もう少し言語化しておきたいと思いこの記事を書くことにした。
確かに進む道は色々ある
10年くらい前はテスト実行者の次はテスト実行管理者をやって、次にテスト設計者になってみたいなことが多かったと思う。でも今は次に進む道も色々と考えられる。そのままテスト設計者になることもあるだろうし、最近で言えば自動化エンジニアというのもある。実際先の質問をしてきた方も私の回答を受けてそこに興味があるような事を最後にコメントしていた。他にもテストという領域を飛び越える道もある。それはPMOや品質分析者など。それから開発者というのもあるし、企画者やUXデザイナーなどもある。これらはそれぞれ自分で興味がある方向に進めばいい。また、メンバーを見る立場の人であれば、そのテスト実施者が得意そうな道を示してあげることも必要かもしれない。ただそれにはテスト実施をしていて何に興味がありそうか、何が得意そうかを知る必要がある。実際にテスト実施者にはいろいろな人がいて、得意そうなこともそれぞれ違う。私もリーダーをやっていた時にそのメンバーが何に向いてそうか考えることがあった。その時のことも振り返って興味を持つ要素と進む道の関係を少し考えてみた。
#興味を持つ要素
とりあえず挙げてみるとこんな感じかなと思う。
- バグに興味がある
- 人やチームに興味がある
- プロセスやルールに興味がある
- ツールに興味がある
- データに興味がある
- プロダクトやサービスに興味がある
これらはテスト実施するうえで触れるものである。それぞれテスト実施時にどんな感じで興味を持つのか、これらに興味がある場合にどのような道が適しているかを考えてみる。
##バグに興味がある人
テスト実施をしていれば必ずと言っていいほど「バグ」に遭遇する。その中で「バグを検出してやろう」と意気込んでいたり、他メンバーが検出したバグ票を毎日眺めて「どのようなバグなのか」を把握したりするような人がこれに当たる。バグを検出するためにどのようなテストが必要なのかを考えていることになる。結果的に何をテストするかを考えるスキルが身に付きやすいし、得意である可能性が高い。そのため、テスト設計者
や探索的テストの実施者
といった道が向いているのかもしれない。
人やチームに興味がある人
テスト実施は同じチーム内のメンバーと進めることが多い。その時、別の相手をフォローしたり、有益な情報を与えたりすることが自然とできるような人がこれに当たる。そのような人はそのメンバーやチームが遭遇するかもしれない障害を事前に取り除くことをやっていることになる。結果的にメンバーが気持ちよく働けるようにすることや、チームがいい感じになったりすることのスキルが身に付きやすいし、得意である可能性が高い。そのため、テストマネージャー
、プロジェクトマネージャー
といったマネジメント関係の道が向いているのかもしれない。
プロセスやルールに興味がある人
テスト実施をしていれば様々なプロセスやルールに従うことになる。不具合報告におけるプロセスだったり、不具合票の記載ルールだったりである。ただプロセスやルールに従っていてもうまくいかないことがあったり、またはプロセスやルールが不十分であることもある。その時、そのプロセスやルールの問題点を挙げられたり、もっと良いプロセスやルールを思いつけたりできる人がこれに当たる。結果的にどうすれば上手く仕事を進められるかを考え、それを定めることのスキルが身に付きやすいし、得意である可能性が高い。そのため、プロセスやルールを決めたり、改善したりする人(例えばPMO(QAチーム内のPMOなども含む)
などの道が向いているのかもしれない。
ツールに興味がある人
テスト実施する際に様々なツールを利用することがある。Webアプリケーションもあれば、測定器や発生器といったハードウェアを伴うツールもある。それらのツールをうまく使いこなしたり、より効率的に使用するために工夫をするような人がこれに当たる。結果的にツールのうまい使い方や効率化をするためにいろいろ調査したり、試してみたりして、ツールを通して何らかの効率化や自動化を実現するようなスキルが身に付きやすいし、得意である可能性が高い。そのため、テスト自動化エンジニア
などの道が向いているのかもしれない。
データに興味がある人
テスト実施をしていれば多くのデータが生まれる。テスト実施工数、テストケースの消化件数、不具合件数など他にもいろいろとある。それらのデータを使って状況を正確に報告したり、わかりやすく伝えたりすることをうまくやっている人、やろうとしている人がこれに当たる。結果的にデータを効率よく正確に収集したり、データを目的に応じた視点で可視化したりするスキルが身に付きやすいし、得意である可能性が高い。そのため品質分析者
やプロジェクト状況を可視化する人(例えばPMOなど)
の道が向いているのかもしれない。
##プロダクトやサービスに興味がある人
テスト実施していればもちろん何らかのプロダクトやサービスに触れているはずである。そのものに興味があって、自分でそのようなプロダクトやサービスを作ってみたいと思う人もいるはずである。その場合は、テストやQAという領域ではなく開発側への道というのもある。プロダクトオーナーやプロダクトマネージャーなどもあるし、UXデザイナーや要求エンジニア、システムエンジニアやプログラマーなどである。但し、必要なスキルはテスト実施のスキル以上に多くの異なるスキルが必要にはなってくる。これはいきなりではなく別の道を経由してから目指してもいいのかもしれない。
#まとめ
ある質問をもとにテスト実施者が次の道を考える時、興味ポイントによってどのような道、キャリアがあるかを考えてみた。いま思っていることを言語化してみたがなかなか難しく、的確に言えていないと感じるところもまだ多い。なので引き続き考えてみようかなと思う。ただテスト実施者の次の道としてはいろいろあるし、その道を選ぶ際に何に興味を持っているかを知ることが重要である気はする。またもしメンバーを見る立場であれば、そのメンバーがどのような事が得意なのかを認識し、そのスキルを活かせる可能性のある道を示してあげることも大切である。
最後に私のことを振り返ってみると、私の興味ポイントは「バグ」であったかなと思う。どのような条件でこのバグが発生するのかを知ることが面白かった。そこから、そのためにどのようなテストケースを作ればいいのかという関心が加わり、テスト設計に興味を持った気がする。さて、あなたの興味ポイントは?