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fs2 の並行処理 〜 Topic+Signal編

Last updated at Posted at 2019-01-24

前回は、Scala の Streaming I/O ライブラリ fs2 のキューを紹介した。今回はトピックとシグナルについて。

はじめに

fs2 の並行処理関連パッケージ fs2.concurrency には、QueueTopicBalanceBroadcastSignal といった concurrency primitives がある。前回の記事で紹介した Queue に続いて、今回は TopicSignal について書く。

トピックとは

トピック とは、Publish/Subscribe モデル1の非同期メッセージングの一つで、トピックと呼ばれる論理チャンネルに対してある発行者がデータを発行すると、そのトピックを購読している全ての購読者がそのデータを受信するというもの。fs2 では、ストリームベースの実装が Topic[F[_], A] クラスで提供されている。

シグナルとは

ここでのシグナル はストリーム間でデータの更新を通知する仕組みで、ストリームの中止を指示するために使う(注:必ずしもトピックと併用されているわけではない)。

fs2 では RefSignal を併せ持つ SignallingRef が提供されている。Ref2 は、cats.effect で提供されているトレイトで、いわばアトミックに読み書きできる「非同期並行ミュータブル参照」といったもの。Signal は fs2の concurrent primitive の一つで、F の文脈(effect) で読み出される値(この場合 Boolean 値)の容れもの。

お題

  • 一つのトピックを、3つの購読者 A、B、C が購読している
  • コンソールから文字列を入力すると発行者がトピックに発行する。
  • 3つの購読者はそれぞれトピックから読み出して、指定秒数だけ待ってから標準出力に書き出す。
  • コンソールにコマンド文字列 ":q" を入力すると、プログラムが終了する。

以下のような構成になる。

                                   / [購読者A] >>> [標準出力]
[標準入力] >>> [発行者] >>> [トピック] ー [購読者B] >>> [標準出力]
                                   \ [購読者C] >>> [標準出力]

実装

公式ガイドの "Single Publisher / Multiple Subscriber" サンプルを参考にしながら実装する。

fs2 のバージョンは ver 2.0.0。動くソースはここに置いた。

標準入力からのストリーム

前回のキューのサンプルコードとほぼ同じ。ただし終了コマンド ":q" を読むと、それ以上読み込むのをやめる。

def stdinStream[F[_]: Sync : ContextShift](implicit bl: Blocker): Stream[F, String] =
  io.stdin[F](4096, bl)
    .through(text.utf8Decode)
    .through(text.lines)
    .map(_.trim)
    .filter(_.nonEmpty)
    .takeWhile(_ != ":q", takeFailure = true) // ":q" まで読み込む

標準出力へのストリーム

1行の文字列を標準出力に書き出すストリーム。

def printlnStream[F[_]: Sync : ContextShift](line: String)
  (implicit bl: Blocker): Stream[F, Unit] =
    Stream(s"$line\n")
      .through(text.utf8Encode)
      .through(io.stdout[F](bl))

イベント/トピック/シグナル

トピックに発行するデータ型として、ここでは以下のような3種類のイベントを定義する。

sealed trait Event
case object Start               extends Event // 開始イベント
case class  Text(value: String) extends Event // 文字列イベント
case object Quit                extends Event // 終了イベント

公式サンプルに倣って、下のような EventService クラスにトピックとシグナルを置いた。関連するストリーム publishersubscriberstart(後述)もこのクラスに置いた。

class EventService[F[_] : ContextShift : Timer : Concurrent]
  (topic: Topic[F, Event], haltWhenTrue: SignallingRef[F, Boolean])
  (implicit ec: Blocker) {
  ...
  def publisher: Stream[F, Unit] = ???
  def subscriber(id: String, d: FiniteDuration): Stream[F, Unit] = ???
  def start: Stream[F, INothing] = ???
  ...

発行者

発行側のストリーム publisher は以下のようになる。

def publisher: Stream[F, Unit] = stdinStream flatMap {
  case ":q" => topic.publish1(Quit).eval
  case s    => topic.publish1(Text(s"$s")).eval
} interruptWhen haltWhenTrue

まず、上で定義した標準入力からの文字列行ストリーム stdinStream を読み込んで、Text イベントとしてトピックに発行。ただし、終了を指示するコマンド ":q" が入力されたときは、Quit イベントを発行する。また Stream#interruptWhen メソッドを使って、シグナル haltWhenTrue の値が true になったときに、ストリーム読み込みを終了するようにしている。

購読者

購読側のストリームは、購読者の識別 id とともに「時間のかかる処理」をエミュレートする秒数を受け取って、購読者を生成する。

def subscriber(id: String, d: FiniteDuration): Stream[F, Unit] =
  topic.subscribe(maxQueued = 1) flatMap {
    case Start   => printlnStream(s"#$id started")
    case Text(s) => Stream.sleep_[F](d) ++ printlnStream(s"#$id processing text event: $s")
    case Quit    => haltWhenTrue.set(true).eval
  }

Text イベントでは、指定秒数だけ sleep してから、識別子とともに文字列を出力している。

開始ストリーム

このストリームでは、発行者と購読者(×3)を並行実行させている。

def start: Stream[F, INothing] = {
  val subscribers: Stream[F, Unit] =
    Stream(("A", 1.second), ("B", 2.second), ("C", 3.second))
      .map { case (id, d) => subscriber(id, d) }
      .parJoin(3)
  Stream(publisher concurrently subscribers) parJoin 3 drain
}

3つ購読者 A、B、C の所用秒数は、それぞれ 1秒、2秒、3秒と指定した。

全体をまとめるストリーム

前回定義した ConcurrencyTestApp のメソッド stream を、以下のように実装した。このメソッドで、トピック、シグナル、サービスが組み合わされた一つのストリームになる (eval は、前回も使っていた Stream.eval を適用する拡張メソッド)。

override def stream[F[_] : Concurrent : Timer : ContextShift]
  (implicit bl: Blocker): Stream[F, Unit] = {
    for {
      topic   <- Topic[F, Event](Start).eval
      signal  <- SignallingRef(false).eval
      _       <- new EventService[F](topic, signal).start
    } yield ()
  }

一応補足すると、Topic[F, Event](Start) の型は F[Topic[F, Event]] で、これを eval3 すると Stream[F, Topic[F, Event]] 型となり、さらに <- の左辺で求める型 Topic[F, Event] が得られる。SignallinRef を生成している行も同様。

実行結果

以下のような挙動になる(コメントはあとで書き足したもの)。

#B started                       // プログラム開始直後
#C started                       // A、B、C がどの順で実行されるかはその時々で異なりうる
#A started
test                             // "test" と入力した
#A processing text event: test   // 1 秒後に 購読者A が出力
#B processing text event: test   // 2 秒後に 購読者B が出力
#C processing text event: test   // 3 秒後に 購読者C が出力
hello                            // 同様に "hello"
#A processing text event: hello
#B processing text event: hello
#C processing text event: hello
:q                               // 終了コマンド ":q" を入力した

Process finished with exit code 0 // 終わった

おわりに

次は v1.0.0 で追加された Balance と Broadcast について。

  1. Wikipedia: 出版-購読型モデル

  2. cats.effect の公式ガイドに詳しい。もとは fs2 にあったものをマイグレートしたらしい。

  3. F[T] => Stream[F, T]

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