これはニフティ株式会社のAdventCalendar 12/3のために書かれた記事です。
#■概要
2020年9月に多摩大学大学院を卒業し、MBAを取得した。いわゆる社会人大学院とかビジネススクールとか呼ばれてるところ。
私にとっては非常によい学びになり、通ってよかったと思う。
ITエンジニアとして、MBAをキャリアに加えることにどういう価値がある/あったのか、共有。
キャリアに悩むITエンジニアの参考になれば。
#■この記事で書かれていること
- MBAとは
- 通学にあたっての様々なコスト
- 動機
- 得られた学びについて
- よかったこと、残念だったこと
#■この記事で書かれていないこと
- 技術的記事
- 通学生活について
- 授業の詳細について
- 様々な社会人大学院の比較
- MacBookAirについて
#■自己紹介
- 15年ほどヘルスケア系企業2社にITエンジニアとして勤務
- その間に、パッケージプロダクト製品、システムの企画、開発、導入PjM、ヘルスケアビックデータサービスの事業開発・顧客開拓などを経験
- 現在はニフティ株式会社にて管理職として勤務3年目
- 43歳
#■MBAとは
国内の社会人大学院では経営学修士のことを指すことが多い。グローバルでは国際認定資格としていくつかある。
私が取得したのも後者、多摩大学大学院では経営情報学修士。海外のMBAとは別物と感じている。
夜間休日に通う社会人大学院と、全日制の大学院がある。
#■通学のコスト
入学金、学費
国内の社会人大学院は、入学金、学費は合計で230万〜350万ぐらいが多い印象。
私の通った多摩大学大学院は2年間、合計で230万。
教育訓練給付制度が受けられる
大学院によっては専門実践教育訓練給付金を利用すると給付が受けられる。
受講費用の50%(年間上限40万円)+雇用されていれば修了後に受講費用の20%(年間上限16万円)が給付される。
年間上限なので、4月入学と9月入学で受けられる給付が少し違うかもしれない。正確には大学院の事務局に確認したほうがいい。
その他
その他、書籍代やフィールドワークを選択した場合の費用が必要となる。
書籍は授業や時期にも寄るが、3冊~10冊/月ぐらいだろうか。図書館やAmazon Studentプログラムなどをうまく活用したい。
#■なぜMBAを取ろうと思ったのか
###大学院に通う前に抱えていた問題
ITエンジニアとしてキャリアを築く中で問題を感じていたのは、ビジネスの知識や一般常識が皆無ということ。
若い頃はITスキルの高さで認められたい、と思っていたものの、当時のお客様や取引先の方々と関係が増えるに従って、自分は世間知らずだな・・と自覚するようになっていった。何が足りないのかすら分からない。
そもそもビジネスの知識/スキルって何・・?という状態だが、商談などでも話が噛み合わないのは感じ取っていた。
###きっかけ
そんな中で、
- ビジネススキルは社会人大学院で学べるということ
- 専門実践教育訓練給付金の対象になっている
- 意外と誰でも入れる
ということを知り、急激にモチベーションが高まり、入学へと至った。
#■MBAでの学び・得られたこと
###経営戦略、人的管理、マーケティング、会計・ファイナンスなど、ざーっと目を通せたこと
実業務に耐えられる知識や経験は得られるかどうかは本人の努力次第だが、正直な話、厳しい。ITエンジニアが会計やファイナンスを学んだからと言って、いきなり経営分析出来るレベルにはならないし、経理や経営企画の即戦力として活躍出来るようにもならない。
経営戦略やマーケティングを学んだからと言って、起業して成功できるわけでもない(可能性は高まるかもしれない)。
しかし、ITエンジニアから見て、それぞれを専門としている人たちが何を考えてどういう事をしているのか、ということは俯瞰して垣間見る事ができる。0が1になるのは大きい。
###客観的な視点を持てたこと
授業の1テーマで他業界・他職種の社会人学生とディスカッションすることにより、自分または自分が置かれた状況をより客観的に理解出来るようになる。
例えば、学生の1人(マーケティング担当者)とヒューマンリソース論についてディスカッションする、学生の1人(営業部長)と経営戦略・事業戦略についてディスカッションするときに、自分の強みをどう活かせるか、ということを考えるようになる。
###マインドセットの切り替わり
座学では経験出来ないような、様々な起業家・経営者、異業種、他職種の方々とのディスカッションやエスノグラフィ的なフィールドワークの経験、大学院の研究としてインタビューを通して、次第に自分のマインドセットが変わってくることが実感出来る。何事も行動してアウトプットしていくことが必要だと身を持って理解出来る。
基本的に、フィールドワークは新しい発見が多く、楽しい。
###様々な業界、職種の方々とのネットワーク
業務では関係を持てないであろう人たちと交流が持てる。社会人同士で同期や先輩後輩、先生と生徒、というつながりを持てるということは、大きい。もし近い業界、職種の方がいれば、より心強く感じるだろう。
#■苦労したこと
###金銭の工面
給付金が出るとは言え、一介のサラリーマンの小遣いで通うにはなかなかキツイ。食費の節約は当たり前だが、図書館などを利用して書籍代を浮かせる工夫も必要。ネットワーキングにもお金は必要。
###時間の工面
通学以外の時間で関連書籍を読み込み、レポート作成やチームでのディスカッションが必要になるので、とにかく時間が足りなくなる。Javaのプログラムは読めても決算書は読めるようにならない。単語に馴染みがないので読み込むのに酷く時間がかかる。VisualStudioCodeではなくKindleを効果的に使いこなす工夫が必要だろう。
残業の多いお勤め先だと調整に苦労するだろう。
平日夜、土日はほぼ潰れると思ったほうが良い。手を抜こうと思えばかなり楽になるが、なんのために通うのか考えると・・お察しくださいという感じ。
###家族への説明
結局はお金と時間を工面するために家族の理解が必要。
###論文の作成
仮説の構築や検証をしつつ資料集め、データ集めどのように積み重ねていくか、全てが未経験であり、手探りだった。
本やインターネットだけでは情報は集まらないのだと身を持って理解した。
ビジネススクールによっては論文執筆がない学校もあるので、よく検討すると良いと思う。
個人的には、一番学びにつながった。が、しんどい。
#■MBAを取ってよかったこと
ITエンジニアの活動領域は日に日に広がっている。
組織の中では、エンジニアの採用戦略や人材育成戦略も考える必要があるだろう。
WEBサービスを作る上では、マーケティング、販売戦略を意識しなければよいサービスは作れないだろう。
場合によっては、POやPdMと一緒に考える必要があるかもしれない。
ITに強いということは、それだけで強みになるが、それだけではつまらない。
2つ、3つ強みを育てることで、強みは更に強くなり、出来る事が増えていく。
そういう見方が出来るようになったことはよかった。
年収も増えた。
#■当初の期待と違っていたこと
すごい人達が通うところだと思っていたが、敷居はそこまで高くなかった。
いや、すごい人達が多いのは間違いないが、話してみると、やっぱりみんな人間だな、と思える。
会計・ファイナンスはやっぱり分からなかった。
#■まとめ
エンジニアが通うところではない、と切り捨てる必要はない。
一つの選択肢として検討の価値はあるのではないか。
学び直しが叫ばれる時代にあって、MBA取得も候補として検討してみてはどうだろうか。