この記事では 以下を示します.
下で$p$は$n$以下の素数全体を走ります.
$$
\sum_{p \le n} \frac1{p} > \log \log (n+1) - \log 2.
$$
この記事はほぼWikipediaのProof that the series exhibits log-log growthの項のコピーです.
証明
証明は5つのステップに分かれています.
Step 1)
$$
\sum_{i=1}^n \frac1{i} \le (\prod_{p\le n} (1 + \frac1{p})) \times (\sum_{k=1}^n\frac1{k^2})
$$
が成り立つこと. ここで, 右辺の$p$は$n$以下の素数全体を走る.
実際, 自然数$i$は互いに相違なる素数$q_1, q_2, \ldots, q_l$及び自然数$k$を用いて 一意的に
$$
i = q_1q_2 \cdots q_l \times k^2
$$
と表すことができる.
ここで $1/i$の項は
$$
(1 + \frac1{q_1}) (1 + \frac1{q_2}) \cdots (1 + \frac1{q_l}) \times \frac1{k^2}
$$
に現れる.
Step 2)
$$
\log(n+1) < \sum_{i=1}^n \frac1{i}
$$
が成り立つこと.
実際
\begin{align*}
\log(n+1)
&= \int_1^{n+1} \frac1{x}dx \\
&= \sum_{i=1}^n \int_i^{i+1} \frac1{x} dx \\
&< \sum_{i=1}^n \frac1{i}.
\end{align*}
Step3)
$$
\sum_{k=1}^n \frac1{k^2}
$$
は収束し, その収束値は2以下である.
実際
\begin{align*}
\sum_{k=1}^n \frac1{k^2}
&= \frac1{1^2} + \frac1{2^2} + \frac1{3^2} + \cdots + \frac1{n^2} \\
& \le \frac1{1^2} + \frac1{2(2-1)} + \frac1{3(3-2)} + \cdots + \frac1{n(n-1)} \\
&= 1 + \sum_{k=2}^n \frac1{k(k-1)} \\
&= 1 + \sum_{k=2}^n (\frac1{k-1} - \frac1{k}) \\
&= 2 - \frac1{n} < 2.
\end{align*}
よって
$$
\sum_{k=1}^n \frac1{k^2}
$$
は単調増加かつ上に有界なので収束し, その値は2以下である.
Step 4)
$$
1 + x < \exp (x) \\ \\ (x > 0)
$$
が成り立つこと.
$f(x) = \exp(x) - (1 + x)$とおくと
$$
f^\prime(x) = \exp(x) - 1 > 0 \ \ (x > 0)
$$
なので $f$は単調増加である.
よって
$$
f(x) > f(0) = 0 \ \ (x > 0).
$$
Step 5) 以上を用いて
\begin{align*}
\log(n+1)
&< \sum_{i=1}^n \frac1{i} \\
&\le (\prod_{p\le n} (1 + \frac1{p})) \times (\sum_{k=1}^n \frac1{k^2}) \\
&< 2\prod_{p \le n} \exp(\frac1{p}) \\
&= 2\exp(\sum_{p\le n} \frac1{p}).
\end{align*}
以上によって,
\begin{align*}
\sum_{p \le n} \frac1{p} > \log\log(n+1) - \log 2
\end{align*}
が示された.
補足
$$\sum_{k=1}^\infty \frac1{k^2}$$
の値を求める問題はバーゼル問題と呼ばれている.
現在ではその値は
$$
\sum_{k=1}^\infty \frac1{k^2} = \frac{\pi^2}{6}
$$
であることが知られている.
この値を使うと, 上と同様に
\begin{align*}
\sum_{p \le n} \frac1{p} > \log\log(n+1) - \log \frac{\pi^2}{6}
\end{align*}
を示すことができる.