古いPCなどでは50ピンのSCSIのハードディスク(HDD)が使われていましたが、現在は入手できません。2021/01現在の代替手段は以下のような方法があるようです。
- RaSCSI
ラズパイを使ったHDDのエミュレーターです。GPIOでSCSIの処理を行っています。Linux上で動くものとBareMetal版があります。
- 変換番長
コンパクトフラッシュをSCSIとして使えるようにしているようです。
- SCSI2SD
SDをSCSIとして使えるようにしているようです。マイコンを使っていてオープンソースですが基板は売っているようです。国内ではあまり情報がありません。V5のほうはCypressのCY8C5267AXI(PSoC5)でV6の方はSTMのSTM32F205(ARMマイコン)とSiliconBlueのFPGAで構成されているように見えます。
- Tiny SCSI Emulator
SCSIコントローラーのNCR5380とTeensy 3.5を使ったモジュールです。HDDではないですが、NCR5380を使った電子工作は、こんなのもありました。
- ArdSCSino-stm32
stm32マイコンでSCSI HDをエミュレートするようなのですが、あまり詳しく調べていません。Arduino(AVR)ベースのArdSCSinoが元になってるようです。おそらくこれが最も安上がりなようなので、いつか試してみたいです。
- BlueSCSI
ArdSCSino-stm32からのforkのようです。
- FreeBSDのtarg
FreeBSDで動くSCSI targetです。サポートされているデバイスが限定されているので、あまり現実的ではありません。と思ったのですが貧乏なので、ありもので、これでやる事にしました。
他にもいくつかあるようです。
どれも結構な値段がするので、自作を考えた場合以下の方法が考えられます。
SCSI2SDの様にGPIOでマイコンで変換を行う。
部品取りやPCMCIAなどのSCSIチップを使ってマイコンで制御する。
SCSIチップを使った場合IDは一つしか処理できないですが、RaSCSIのようなGPIOを使って処理する場合は複数のIDの処理も可能です。
古いパソコンの動態保存
20世紀に作られた古いパソコンやワークステーションを使える状態で保存するにはいろいろ問題がある。
- コンデンサーの劣化&液漏れ
- バックアップ電池の消耗&液漏れ
- バックアップメモリの消失
- ケーブルの断線やコネクタの接触不良
- フロッピーやハードディスクなどの駆動系部品の故障
- プラ部品の劣化による破損
- 筐体の鍵の紛失
- フロッピーディスクなどの劣化
- ディスプレイやキーボードの確保
- CPUやメモリなど他の部品の故障
- OSやソフトウエアの紛失
- BIOSロック解除不能
- ソフトウエアライセンス
- などなど
ハードディスクはSASI,SCSI,パラレルIDE,SATAと変遷しSASI,SCSIやパラレルIDEドライブは入手困難になっています。
容量が大きい電解コンデンサーは膨張して容量抜けを起こすことがあるが、それよりも液漏れがたちがわるい。液漏れして細いパターンやスールホールが切れててしまうと致命的になることがある。
起動しないとか、たまに起動しないとかは、電源系の電解コンデンサーの問題の可能性があるので、分解して確認したほうが良いです。確認方法は電解コンデンサの上部が膨らんでいないか、また足の部分が汚れていないかです。
古いコンピュータのトラブルの多くは電解コンデンサーに起因する問題です。
「四級塩電解液使用電解コンデンサ」問題というのもあるようです。下の写真はMac Parformaの電源で、日本ケミコンのLXF 3300uF 16V x 2を外したところですが、このような汚れは四級塩電解液の漏れが原因です。
あまり利用しないCD-ROMなどのドライブは極端に冷えた状態で稼動させると、グリスが固まっていて破損する可能性があるので、暖かい時期に適度に動かすのがお勧めです。
USB以前のキーボードはADBやPS2などあったが現在は作られていない。またPC-9801などは独自仕様になっている。キーボードはパルスをかけてキーの状態をスキャンしているので、長い時間使用することにより、パターンがやせて、断線など修理不可能なケースもあります。チップマイコンなどを使ったオープンソースや、売り物のUSBキーボードの変換モジュールを利用するのも一つの手です。
昔のディスプレーはブラウン管でした。現代のディスプレーのLCDに接続する場合、変換コネクターやスキャンコンバーターが必要になるケースもあります。
ノート型でLCDが壊れている場合、直すのは難しいので外部ディスプレーを使う方法があります。
熱を発するチップはヒートシンクなどをつけるのも寿命を延ばす方策になるかもしれません。
古いハードディスクでエラーが出たものでも「わいぷたん」でいったん消したところ復活したケースもありました。これは「わいぷたん」でアクセスする事によりハードディスクの代替トラック処理が行われて不良部分がなくなるのかもしれません。やってみる価値はあります。
古いハードディスクには自己診断機能のSMARTがないので、「わいぷたん」でベリファイしてエラーが出ないか確認してみるのが良いです。
入手方法
- 昔買ったものを復活させる
- オークションなどで入手
- 修理業者から購入
- ゴミ捨て場から拾ってくる
今動いていても明日動かなくなるかもしれないので、オークションなどで入手するのは、お勧めしません。
何のためか?
- 業務上の必要
- 温故知新
- 趣味や古き良き時代へのノスタルジー
- などなど
どう使うか
- 当時のソフトウエアで使う (ex. MS-DOS...)
- 開発が続いているソフトウエアを使う (ex. FreeDOS...)
古いマシンは消費電力が大きいが、極端に大きいものは部品の劣化も激しく難しいかもしれない。2020年にゆりかもめの開業以来25年使われていたPC-9801が引退したというニュースがあった。一日20時間起動していたとして、20×365×25=182500時間となる。おそらく代替も用意して何度も修理したのではないだろうか。
古いマシンは消費電力に対してのCPU資源が小さいのでむやみに稼動させないようにしたほうが良いです。
現代のマシンとのデーター交換方法
- カセットテープインターフェース(FSK)を使う
- フロッピーを使う
- xmodemなどのシリアル通信を使う
- MOやテープを使う
- CD-ROMを使う
- tftp,ftpなどのネットワークを使う
- ネットワークのファイル共有を使う
1はWindowsなどのサウンド再生機能でデータを流し込むような事もできます。
2はPC-9801に2HDはIBM PCでは読めないので2DDを利用するなどの制限があります。
4,5,6,7はドライバーが無かったりすることもあり、1,2,3が現実的です。双方向の交換ができるのが理想ですが、ホストからターゲットへの転送だけで十分かもしれません。
古いCD-ROMドライブではCD-RWはほとんど読めませんし、CD-Rも読めないことがあります。
RaSCSIやtargではHDDイメージをLinuxやFreeBSDで操作できるので、それでファイル交換を行うこともできます。
クロス開発できる環境が用意できる事も重要です。
古いマシンは電源の劣化などで、火災になる可能性がありますので、十分な注意が必要です。臭い匂いがしたり、極端な異音が発生したときにはすぐに電源を切りましょう。
人がいないところでの可動は避け、万が一のために消火器を用意しておくのもよいでしょう。
CP/MやMSのソフトウエアはフリーになっているものもありますが、いくら古いものでも不正コピーはまずいので気をつけましょう。自分の権利を守るためにも、他人の権利を尊重することが重要です。
ダウンロードはライセンス違反の物もネット上にはありますし、ウイルス入りの可能性もあるので、十分注意しましょう。
「歴史的計算機の動態保存から得られる知見」という解説があり参考になります。