概要
「おもてなし幻想」という本を読んだので感想を書く。
感想
基本的にはオペレーター向け、カスタマーサポート向けに書かれた本の内容であった。
しかし小売りにも通用するといった他業種の話題もあり、システムエンジニアにも通ずるものがあるのではないか?と思ったので、そのあたりを深く掘り下げて感想を書く。
タクシーの例
まず概略として日本の文化である「おもてなし」は今の時代には適していない、という趣旨の内容であった。
本にはタクシーの例が載っていた。
日本のタクシーは驚くほど多くの決済手段が用意されていて、お客さんは好きな決済で支払いができる。
しかし自身が現金しか持っていないのであればそれらは「おせっかい」でしかない。
またカードや電子決済であってもサインが必要であったり、領収書が印刷されるのをじっと待つ必要があったりする。
それに対してUBERは一切何の手間もかからずに乗車して降車することができる。
日本のタクシーは丁寧だけれど手間を強いるのだ
これがこの本で述べている「おもてなし」≒「おせっかい」の図である。
そしてこれはエンジニア界隈にも同じことが言えるのではないか?と考えた。
顧客努力の低減
顧客努力指数(CES)が大事だよという話。
丁寧な説明やおもてなしをするよりも、ユーザーにいかにストレスを感じさせずに(努力いらずに)システム/製品を使ってもらえるか、が1番ロイヤリティに寄与するという話。
システムエンジニアの例
例えば今自分が担当しているアプリケーションに新人エンジニアがアサインされた。
よくある問い合わせをまとめ、ログの見方やDBの見方をまとめて教育をした。
これはとても丁寧なおもてなしだと思う。
ただ実際には新人はその手順を読んで自分で理解する努力が必要だし、アサイン時に説明されたことを実際の問い合わせ時まで覚えているかと言われると難しい。
この場合に本当に必要なものは「よくある問い合わせをなくすこと」である。
そうすればその問い合わせ自体を引き継ぐ必要はなくなり、新人は開発に専念することができる。
(実際にはそんなに簡単じゃないことは重々承知だが)
開発する時も同様で「とにかくたくさんログを出す」というおもてなしより、「この機能でエラーが出たら自動でリトライし、可能な限り手動リカバリをさせない」などの努力低減の方が大事である。
ユーザーに「エラーが発生しました!」のメッセージを丁寧に出したところでユーザーからすると「で、どうすりゃええねん」という話。
エラーを丁寧に出すよりも「エラーを発生させない」「発生しても自動でリトライ/リカバリする」の方が余程有用である。(もちろんその機能による)
開発者からする顧客とは
- 実際にシステムを使うユーザー
- オペレーター
- 後任の担当者
- しばらくして開発時の記憶をなくした自分自身
であることを忘れてはならない。
まとめ
「おもてなし」という手厚いケアを頑張るべきではなく
頑張らなくていいように頑張るべきだ、という結論になった。
これはまさにエンジニア(プログラマー)の3大美徳である「怠慢・短気・傲慢」そのものじゃないか、と私は思う。