はじめに
この記事では、
-
numpy
配列と互換性のある関数の使用 -
numpy.vectorize
の使用 - 標準のforループの使用
の3通りの処理の違いについて解説します。
先に結論を言うと、「numpy
配列と互換性のある関数の使用」するのが一番早くて可読性も良いです。
(昔は、numpy.vectorize
を無意識的に使ってましたが、実は不要ではないかと思うに至ってます。)
ベンチマークテストの例
短いコードです。ここでは、f(x) = 1/x という計算を3通りに方法で計算して、速度を計測します。
import numpy as np
import time
# 関数の定義 (Numpy配列と互換性のある関数)
def reciprocal(x):
return 1 / x
# Numpy.vectorizeを使った関数
reciprocal_vectorized = np.vectorize(reciprocal)
# データの生成
data = np.random.random(1000000) # 100万個のランダムデータ
# Numpy互換性のある関数のベンチマーク
start = time.time()
result_numpy = reciprocal(data)
end = time.time()
print(f"Numpy Function: {end - start} seconds")
# Numpy.vectorize関数のベンチマーク
start = time.time()
result_vectorized = reciprocal_vectorized(data)
end = time.time()
print(f"Vectorized Function: {end - start} seconds")
# Forループのベンチマーク
start = time.time()
result_loop = [reciprocal(x) for x in data]
end = time.time()
print(f"For Loop: {end - start} seconds")
速度計測結果
実行結果の一例は、
Numpy Function: 0.0053 seconds
Vectorized Function: 0.1438 seconds
For Loop: 0.1485 seconds
となり、「numpy
配列と互換性のある関数の使用」が一番速いです。
解説
1. Numpy 配列と互換性のある関数
numpy
配列と互換性のある関数は、配列の各要素に対して一度に操作を適用できるように設計されています。これにより、一つ一つの要素を個別に処理する必要がなく、計算処理が高速化されます。
# Numpy互換性のある関数のベンチマーク
start = time.time()
result_numpy = reciprocal(data)
end = time.time()
print(f"Numpy Function: {end - start} seconds")
特徴
- 要素ごとの操作: 配列の各要素に対して同時に操作を行います。
- パフォーマンス: numpy の内部最適化により、計算が高速に行われます。
- コードの簡潔さ: forループを書く必要がなく、コードが簡潔になります。
2. numpy.vectorize
numpy.vectorize
は、通常のPython関数を「ベクトル化」するラッパーです。これにより、非ベクトル化関数を numpy 配列に適用できるようになりますが、実際のところ、内部的には要素ごとにforループを行っています。
のソースコードを見ると、
class vectorize:
"""
vectorize(pyfunc=np._NoValue, otypes=None, doc=None, excluded=None,
cache=False, signature=None)
"""
# この辺り?
for index in np.ndindex(*broadcast_shape):
results = func(*(arg[index] for arg in args))
で、for loop で実装されてるような気がしますが、、深追いはしてません。
# Numpy.vectorize関数のベンチマーク
start = time.time()
result_vectorized = reciprocal_vectorized(data)
end = time.time()
print(f"Vectorized Function: {end - start} seconds")
特徴
- ユーザーフレンドリー: 既存のPython関数を変更せずに numpy 配列に適用できます。
- パフォーマンス: 実際のベクトル化ほどの速度向上はありません。
- 柔軟性: 任意のPython関数に適用できます。
3. 標準のforループ
標準のforループを使用して numpy 配列の各要素に対して操作を行うこともできます。これは最も直感的な方法ですが、パフォーマンスの観点からは最も非効率的です。
# Forループのベンチマーク
start = time.time()
result_loop = [reciprocal(x) for x in data]
end = time.time()
print(f"For Loop: {end - start} seconds")
特徴
- 直感的: Pythonの基本的な構文を使用します。
- パフォーマンス: 非常に低速です。
- 柔軟性: どのような操作も実装できます。
numpy 配列と互換性のある方法で定義された関数とは?
ある関数が numpy の配列操作に対応しているとは、配列に対して要素ごと(element-wise)の演算が可能であるという意味です。これは numpy の重要な特徴の一つで、複数のデータポイントに対して同時に計算を行うことを可能にします。
関数が numpy 配列と互換性を持つための要件
- 要素ごとの演算: 関数内で使用される演算が要素ごとに適用されるべきです。例えば、+, -, *, / などの基本的な算術演算は numpy 配列の各要素に個別に適用されます。
- numpy 関数の使用: 数学的な操作を行う際には、numpy が提供する関数を使用することが望ましいです。これらの関数は配列に対して効率的に動作し、ベクトル化された計算をサポートします。例えば、
np.sqrt
,np.log
,np.exp
などです。 - 配列への対応: 関数はスカラー値だけでなく、numpy 配列を引数として受け取れるように設計されるべきです。このようにすることで、単一の数値だけでなく、数値の配列に対しても関数を適用できます。
要するに、numpy配列の中身の一つの要素が関数に渡された時に、エラーがなく動くような関数であれば大丈夫です。
2次元の2変数関数を用いた具体例
def func(a, b):
return a ** 2 + b ** 4
という2つの変数をもつ関数を考えます。この関数は、四則演算だけで閉じているので、numpy 配列と互換性を持つための要件を満たしています。
a = np.array([[1., 2.], [3., 4.]])
b = np.array([[5., 6.], [7., 8.]])
for onea, oneb in zip([1, 2, 3, 4],[5, 6, 7, 8]):
print(f"func({onea},{oneb}) = {func(onea,oneb)}")
を実行すると、
func(1,5) = 626
func(2,6) = 1300
func(3,7) = 2410
func(4,8) = 4112
という計算結果が返ってきます。
これを、一気に計算するには、
func(a,b)
として、一気に配列を入れるだけ良いです。結果は、
[[ 626. 1300.]
[2410. 4112.]]
となり、for loop で一つずつ計算した結果と完璧に一致します。
この記事の中身は、
で実行できます。