国内初のOracle Cloud Infrastructure本が発売されたよ
2021年7月21日にOracle Cloud Infrastructureの市販書籍が出版されました。これまで英語の書籍は4~5冊(資格本を除く)あったのだけれど、日本語版の書籍は2冊目。今回、献本していただいたので書評を書きます。
「Oracle Cloud Infrastructure徹底入門 Oracle Cloudの基本からインフラ設計・構築まで」(翔泳社)。著者は日本オラクルの方々。464ページで3,828円なり。

目次はこちら
◇第1部:Oracle Cloud概要・主要サービスの理解
・第1章:Oracle Cloudの基本知識
・第2章:まずは触ってみよう
・第3章:認証・認可(IAM/IDCS)
・第4章:仮想クラウド・ネットワーク(VCN)
・第5章:コンピュート・サービス
・第6章:ストレージ・サービス
・第7章:データベース・サービス
・第8章:ロード・バランサ
・第9章:その他のサービス
◇第2部:OCIを利用したシステム設計
・第10章:クラウドでのシステム設計のポイント
・第11章:ネットワーク設計
・第12章:可用性設計
・第13章:セキュリティ
・第14章:運用設計
・第15章:移行設計
書評を書くよ
基本的にはOracle Cloud InfrastructureのIaaS部分(Compute, Network, Storage, IAM)を主体にした本で、当然Oracleデータベースについても書かれている。
パブリック・クラウドの書籍で悩ましいのが進化の早さだ。サービスの種類や機能、画面もバンバン変わっていくので陳腐化が激しい。そんなこともあり、画面ショットや具体的な手順を載せているのはホンのわずか。陳腐化しづらい、アーキテクチャや設計の考え方を中心に取り上げている。
「第1部:Oracle Cloud概要・主要サービスの理解」
ここではOracle Cloud Infrastructureを使用するうえでの基礎知識が書かれている。クラウド初心者やAWSやAzureのユーザーなら、ひととおり目を通せば、Oracle Cloud Infrastructureがどのようなものなのか理解できるだろう。
Oracle社や日本オラクル社が出しているホワイトペーパー類に書かれていることも多いが、同一時点の記述で簡潔にまとまっているのがメリットだろう。
欲を言えば、AWSやAzureとの比較があると理想的なのだが...。たとえば、ネットワークまわりは似ていても少し違う部分があるとか。
「第2部:OCIを利用したシステム設計」
ここが本書のアピールポイントだろう。顧客とのQAやコンサルで蓄積したノウハウが投入されている。
ネットワークや可用性、セキュリティなどの観点で設計の考え方を説明し、図表を多く使いわかりやすく解説している。さらにサンプル要件ごとの実装例を解説しているので、これまで学んだことの整理になる。また、将来的に予定されている新機能に言及しているのもGoodだ。
運用設計ではOracle Management Cloudを紹介すると共に、2020年10月に発表したOracle Cloud Observability and Management Platformに少しだけ触れている。執筆時点では詳細が明らかになっていなかったので仕方ないがOracle Management Cloudは無くてもよかったような気がする。
というかOracle Cloud Observability and Management Platformがわかりにくいので、なんとかしてほしい。>Oracle
まとめ
すでにバリバリOracle Cloud Infrastructureを使いこなしているユーザーには不要かもしれないが、初心者や中級者には参考になる部分は多いはずだ。また、比較的変わりづらい部分を中心に書いていることもあって、3~4年は十分に使っていけるだろう。
当然、新機能とのギャップは生まれるが、以下のドキュメントを読むことで吸収できるはずだ。
あらためて振り返って見ると、意外にもOracle Database(Autonomous Database含む)の記述が少ない。オンプレミスとの違いが少ないことや、とくにAutonomous Databaseは変化の可能性があるからだろうか。
なんだか提灯記事のようになってしまったが、クラウドにしては色あせない部分を取り上げた良書と言えるだろう。
ちなみにOracle Cloud Infrastructureのマニュアルは、日本語版だけでなく、念のため英語版もチェックすること。とくに新機能の部分は、英語と日本語で乖離があることが多いので要注意だ。
マニュアルはWeb(HTML)なのでページをクリックするのが面倒という人にはPDF版がオススメだ。日本語版は無いが、PDFだと縦スクロールだけなので早く読める。