この記事はコミュニティで質問するときのコツやマインドセットを当方の意見として紹介したものです。ここに書かれていることは「こころがけ」「ヒント」「助言」にすぎません。法律のようにこれを守る必要もありませんし、他人がこれを守ってないからといって怒るべきではありません。
気持ちよくコミュニティを運営、参加するために、こんなコトを当方が考えている、というポエムです。あくまで参考に、ということを念頭に置いてください。
はじめに
下記の素晴らしい記事を読んだことがある方は、どれほどいるでしょうか?
過去、技術者の情報共有は掲示板(BBS)や、メーリングリストでした。その時代に、結城浩先生が公開された記事と記憶しております。更新履歴を拝見すると、2001年ごろのようですね。約20年経っても色褪せない素晴らしい情報を公開いただいて深く感謝をしたいと思います。
当記事は、上記を参考にしております。リスペクトしている、と表現してもよいでしょう。紹介した記事を初めて知った方は、是非ともリンク先を確認してください。
とお願いしても...
読んでないでしょ、あなた。
って方が居ることも当方は想定しています。
いいんですよ。怒ったりなんてしません。
当方が推奨した記事を読む・読まない、ソレは各位の自由ですよね。
大丈夫、その点は此方も理解しています。
1点だけ。
次のコトだけは相互理解として共有しておきたいと思うのです。
「質問する自由」があるように「回答する自由」もあります。
つまり「回答しない自由」もある、というコトです。
おたがい、にんげんだもの。
コミュニティは互助会です
当記事でコミュニティと表現している対象は「有志で運営しているコミュニティ」になります。例えば、PBIJP、JPAUG、LogicFlow-ja、JPPUG などをイメージして書いています。もしかすると、企業が提供しているコミュニティスペースでも活用いただける内容かもしれませんが、そこは各位の判断にお任せします。
さて。重要なことなので、繰り返しておきます。
コミュニティへ参加した貴方には支援を求める自由があります。
コミュニティメンバーにはそれに"応える自由"も”応えない自由”もあります。
技術系メーリングリストは、サポートセンターではありません。 つまり、そのメーリングリストに参加している人々は、 あなたの問題を解決するための義務は持っていません。 回答のメールを出す義務も持っていません。 たくさんメールを出して1つも返事が来なくても、 苦情や文句をいってはいけません。 自分の質問には必ず回答メールがくるはずだ、 返事が来ないのはおかしい、ぷんぷん…と怒ってはいけません。
上記”メーリングリスト”という文字列を、コミュニティへ置き換えてください。
コミュニティは業務や義務ではありません。ある種の「互助会」です。
「相互扶助」と表現しても良いと思います。
相互扶助(そうごふじょ)とは、社会・組織の構成員同士が互いに助け合うこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E4%BA%92%E6%89%B6%E5%8A%A9
では、どうしたらいいか?の参考例は冒頭で紹介した結城先生の記事に書いてあります。ご確認ください。
より良い相互扶助のために
質問をする際、回答をする際に気を付けておくべきかな、と考えているポイントをまとめます。
コミュニティのルールを把握しましょう
各コミュニティにはルールが少なからず存在します。明文化されているモノがあれば確認しておきましょう。例として、Japan Power Apps UserGroup (JPAUG) のメンバー規範は下記になります。
JapanPowerAppsUserGroup/GuideLine
加えて、勉強会において「その回における特有のルールなど」が設けられる場合があります。基本的には募集ページで案内されることが多いです。少なくとも、明記されているルールや主催からのお願い事項は必ず目を通して把握するようにお願いいたします。
結城先生も案内されておりますが、郷に入れば郷に従えです。参加する、しているコミュニティの方針には従いましょう。
あえて明記しておきますが各コミュニティ方針以前に、公序良俗に反するような行為は謹んでください。基本的には「他人の迷惑にならない行動」をとっていれば問題ないハズです。
質問する前に自分で調べましょう・試しましょう
「あれ?エラーになるなぁ。(検索や、色々試すこともせず)すぐに有志のコミュニティで質問しよう。」
残念ながら、それで回答を得られる可能性は低いでしょう。もし、回答があったら、回答してくれた広い心の持ち主と、巡り会えたという幸運に最大の感謝を表すべきだと思います。
- エラーになった
- 関数が書けない
- どうやって実装したらいいかわからない
- 作ったけど意図した動きをしてくれない
- etc...
まずは自分で調べてみてください。Power Platform のいずれかを利用している、ということは貴方のパソコンはインターネットへ接続されているはずです。
検索しましょう。エラーの内容だったり、やりたいことだったり、検索キーワードも自分で考えてみてください。日本語の情報だけ、かいつまんでちゃダメですよ?英語の情報もちゃんとチェックしてみましょう。貴方が困ってる・悩んでるということは、全世界の誰かが同じように困ったり、悩んでる可能性があります。と、言うコトは解決へみちびく情報発信をしてくれているヒトがいる可能性もあります。検索して調べて試す、その過程で得られる情報も貴重な経験になると思います。
少し強い言い方をすると『調べてわかることは質問しない』です。
とは言え。
独学でやっているなど、周囲と認識合わせができない状況の方も居るでしょう。調べた結果〇〇って理解したけどソレでいいのかな?(不安)ってなる気持ち、よくわかります。そういう時こそコミュニティで「コレを調べて、この参考情報で勉強して〇〇って認識したんですけど、私の認識ってあってますか?」と具体的に問いかけてみるか、Blog や Twitter などでハッシュタグつけて情報発信してみてください。きっと、貴方の発信した情報に対して何らかの反応がある、かもしれません。
質問する際は具体的に
「〇〇がエラーで動きません!」
しか書いてない場合。
そうですか、それは残念でした。としか当方は思いません。
助けてあげよう、という気持ちになるか?
うーん、皆さんはどうですか?
コミュニティメンバーはエスパーではありません。質問した方の環境、状況、どういうコトがやりたいのか、その理由は?発生したエラーメッセージは?等々、全く知らない状態です。自分自身が質問したいと思った時は『その質問が、前提条件も何も知らない相手に理解してもらえるか?』を質問の投稿ボタンを押す前に考えてください。
前述の『自分でここまで調べた』という情報もあわせて共有するとよいでしょう。回答者が「ここまでは理解してそうだな」という判断などが可能になります。
具体的に、とは?
例えば、下記のような情報があると助けが入りやすいです。
- どういうコトを実現したいのか?チャレンジしているのか?
- 上記No.1 の理由(Why)や目的
- 意図した動作をしていない場合などは、具体的な症例と再現手順
- 動作確認している環境(ブラウザーは?スマホは?Verは?)
- ここまで調べたコトや試したコト
スクリーンショットや、データソースの設計情報なども可能であれば添付しましょう。
※くれぐれも情報漏洩につながるような画像や内容を公開しないようにお願いしますね!
しかし、文章がやたら長くなるのも困ります。要点をとらえたわかりやすい文章だと、助けてくれる人が現れやすいと個人的には考えています。
作り方やテクニックを質問する際は、可能な限り「なぜ、ソレをやりたいのか?」(Why=理由)もあわせて記載することをおススメします。当方が参加しているコミュニティでは「前向きにがんばっている方が困ってる課題」を”解決に導く”コトが大好きなメンバーが多いと思っています。解決したい課題や、改善したい業務など、目的や理由を明確にしてくれると思わぬ解決案が提示される可能性があります。
例えば、当方だったら
エラーが発生して前に進めない場合、当方だったら”こう書くかな”という例です。
Power Apps キャンバスアプリで、Excel をデータソースにしているアプリを作成しています。ある日、突然アプリが動かなくなったのですが、何か解決の糸口などご存じの方がいれば助けていただけると幸いです。
再現手順:Form コントロールで値を入力して SubmitForm すると必ずエラーになります。
発生するエラー:[エラーメッセージ]
試してみたコト:
1)アプリの再発行 → 再発行してもエラーになりました
2)他のブラウザーで実行 → Edge、Chrome、スマホでも全てエラーです
調べてみたこと:
参考URLが提示できれば
→ 上記記事を参考に調べてみましたが改善には至りませんでした。
※可能であればエラーのスクリーンショットを添付
これをみて「データソースのExcelを削除しちゃってませんか?」って伝えようかな、って思った方、素晴らしい、正解です。(データソースの Excel ファイル消した場合は、一覧画面などで検索した際にもエラーになるハズなんですが、質問者は気づいてないって感じも意図的に演出してみました)
これが、
作ったアプリがエラーで動きません。どうしたらいいですか?
だけだったら、どうですか?
「そうですか、それは残念でした」(様々な意味で)って思っちゃいますよね。
で、助けようと思いますか?
お仕事なら根ほり葉ほりヒアリングしますが・・・ねぇ。。。
貴方が参加しているコミュニティの質問で、こういう「もしかしてコレがヒントになるかも?」という場面を見かけた際は「可能性の話題だけど、コレかもしれないよ」って伝えてあげてください。確信がなくても問題ありません。質問者が切羽詰まって視野が狭くなっているコトも多々あります。貴方の何気ないひと言が解決への光になる可能性もあります。
質問する際の注意点
当方の観測範囲内で「こういう質問の仕方が嫌いなヒト多いよね」って例をいくつか案内しておきます。なお、主義主張はメンバー各々で異なるため絶対解はありません。あくまで参考として確認ください。
-
「初心者なのですが」から始まる
初めはミンナ初心者です。なので「で?」と思う方が多いようです。
書きたくなる気持ちはわかりますが、削れるなら無いほうが良いでしょう。
具体的に「Power Apps で Filter は使えますが、ForAll が全然わかりません」等だと質問者のレベル感がわかるのでアリかもしれません。 -
「何を言っているのかわかりません」という質問
前述のような”具体的ではない質問”などが該当します。
他人が読んでわからない文章では、誰も応えることができません。 -
マルチポストは NG です
同じ質問を複数のコミュニティ等へ同時期に流すことは禁忌だと考える流派に属しています。
情報が散乱するので間違いなく嫌われるでしょう。当方もマルチポストは大嫌いです。 -
「答えてくれて当然」のような態度
繰り返しますがコミュニティはサポートセンターではありません。
本人は気づいてないのかもしれませんが、高圧的な文章を書く方がまれに観測されます。
その文章でサポートしたくなるか?第三者を頼ってでもチェックしたほうが良いでしょう。
口頭で会話するよりも、文章だと冷たく感じる場合が多いそうです。「文章 冷たく感じる」などで調べてみてください。業務や私生活でも役立つ情報がきっと見つかることでしょう。
応答がもらえたら
ズバリ!の回答がもらえることもあるでしょうし、ヒントだけ出してくれる方もいるでしょう。一緒にあーでもない、こーでもないと悩んでくれたり、試してくれる方がいるかもしれません。解決にみちびいてくれる回答なのか否かは状況によって異なります。どんな応答であったとしても、とても大切な2つのお願いがあります。
お願い1:回答者へ感謝の意を
回答をしてくれた方へ 『感謝』 をあらわしてください。
お仕事でも義務でもないコミュニティにおける助け合い、ソレに対する報酬は「感謝」と「賞賛」の2つです。インターネットを介したコミュニケーションの場では感謝は文字で表してはじめて相手へ届きます。心の中で思っているだけでは伝わりません。ぜひ、ひと言「ありがとうございました」だけでも良いので感謝の言葉を添えてほしいと思います。
もちろん、お仕事であろうとも助けてくれたら感謝や賞賛の意をあらわしたほうが良いと思います。お互い気持ちよく生きていきたいものですよね。
お願い2:結果を共有してください
質問しました → 回答がありました → ありがとう!試してみます → 音沙汰無し・・・。
あれ?そういえば、あの質問者さんは解決できたんだろうか?(回答者
となっているシーンも散見します。解決案やアイデアをもらったら、是非とも試してみてください。そして、その試した結果が OK なのか NG なのかに関わらず結果を共有してほしいです。情報共有してくれることで、未来の誰かが同じコトでツマづいた時、貴方の質問と解決策をみて救われる可能性があります。
もう1つ可能であれば...情報発信をお願いします
2つって言ったのに、3つ目です。これは”可能であればご検討ください”というお願い事項です。
上記の「結果を共有してください」に通じるのですが、試したコトやツマづいたコトなどを Blog に書く、コミュニティ勉強会などで発表する、などの情報発信をお願いしたいと思います。
まだ見ぬ未来の仲間が、貴方の困ったが解決したことにより救われる可能性があります。結果ダメでした、でもかまいません。そのダメだったパターンは事前に回避できる、という1つのナレッジですよね。結果「どうなったか?」という結論と言いますか、状況の共有をお願いしたいと思います。これも、1つの恩送りだと当方は考えます。
蛇足
以前、こんな内容で LT 登壇したこともあります。
ご参考までにどうぞ。
業務に関する場合は然るべき対処をお願いします
Power Platform だけに限定した話題ではありませんが、みなさんのお困りゴトを解決する支援を「仕事」としている方々がいます。広い意味で、当方の本職もソレに該当します。
コミュニティ勉強会などのタイミングあれば、セミナー講師だったりプロ開発者だったり「普段は有償で技術や知識・知見を提供する」立場の方であっても無償で対応してくれる場面があります。(当方も以下略)
そのような方々は、おそらく過去にコミュニティ等の先輩方から助けてもらった経験を、そのまま同じようにしています。つまり、恩送りですね。誰かにコミュニティで助けてもらったら、助けてくれた方への感謝と、助けてもらった貴方が未来のまだ見ぬ”困っている人”を同じように助けを出す等をしてほしいと思います。
極まれに、1から10まで手取り足取り全部教えてほしい、というような・・・例えば、セミナー講師の方に「技術を教えてください(しかもタダで)」と言っている、そんなのがたまに居ます。コミュニティ勉強会なら全部タダで教えてくれるって言うから、何でもカンでも質問しちゃえば業務が進むぜ、みたいな。意図的なのか、無自覚なのかはわかりませんが、ホントに居るんですよ。”そういうの”は気配を察してスルーするなどの対応をするのですが...。他の方に迷惑なので非常によろしくないです。
然るべきサポートを受けるタメには、然るべき対価を払うことも必要である
という点はご認識をお願いしたいと思います。
”このヒトだったら教えてくれるかも!(しかもタダで)”のノリで、コミュニティメンバーへ無許可でダイレクトメッセージなどを送って質問をする方もいるそうです。質問をうけた側が受け付ける意思を示していない場合、それは完全に相手の好意をアテにしたフリーライドを期待しているモノだと当方は思ってしまいます。
フリー‐ライド(free ride)
■抜粋
利益は享受するが、そのために必要な費用は出さないこと。学校給食は食べるが、給食費は払わない行為などについていう
https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%89-621302
他の参加者も学べるように広くオープンな場で情報共有をしてほしいと思う次第です。業務に関わる内容で、オープンにできないのであれば然るべき相手に然るべき手続きをしたうえで、然るべき対価をお支払いになって助けてもらってください。
回答者の立場でも思いやりを
間違ったコトを言ったらイヤだから回答しないでおこう・・・という方も居るでしょう。もったいない。勇気を出して、調べてあげたコトや、知ってるコトだったら回答してあげてほしいです。
ただ、回答をする際に1つだけお願いがあります。
「そんなの〇〇をxxxすりゃできますよ」
相手のレベルを無視した投げっぱなしジャーマンのような回答はお控えください。相手も人間なのですから、思いやりをもった回答をお願いしたいと思います。
まとめ
コミュニティはある種の「互助会」です。
「相互扶助」と表現しても良いと思います。
お互いが協力しあってこそ成り立つものだと考えています。
義理も縁もない他人に何かを頼むとき「協力してくれるべき」とか「してくるだろう」とか甘い見通し持ってる奴は絶対失敗するわ。協力って期待するものでも要求するものでもなくて、巧く引き出すものなのよ。
図書館戦争 より
少し利己的な雰囲気もありますが、当方は上記の台詞が好きです。うまく協力を引き出すためにはどうしたらよいか?上記セリフのように「してくれるべき」とか「してくれるだろう」ではダメでしょうねぇ。質問したんだから誰か助けてくれる”だろう”とか、じゃダメな可能性高いですよ、と案内した認識です。では、どうしたらいいか?は、もう必要ありませんよね。
お互いに敬意をもって、感謝と思いやりに満ちたコミュニティは居心地が良いものです。
「恩送り(Pay it forward)」
良い言葉です。
それでは、皆さま。素晴らしい Power Platform Life を!