📖ドメイン周りの知識整理

業務でドメイン周りについて、詳しく調べる必要があった為、整理してみました。

ドメインの基本知識

ドメインとは

ドメインとは、世界規模で運用されている「DNS（Domain Name System）」で使用されるもので、リソースに対しての名前解決をする上での主要要素です。世界中のIPとドメインを紐づけて管理を行うことで、我々は、IPではなくドメインでWWWを利用することができます。

ドメイン名の基本構造

ドメイン名の基本部品は、「ラベル」 と 「ピリオド」 から構成されています。ラベルは英字(A～Z)、数字(0～9)、 ハイフン( - )が使用できます。アルファベットの大文字・小文字はすべて同じ文字として認識されます。

各ラベルの全体のサイズは64オクテット(byte)ですが、先頭の1オクテットはDNSの処理で予約されています。その為、一つのラベルで使用できる文字数は63文字(= 63オクテット)となります。

また、各ラベルをあわせたドメイン名全体の文字数は、255文字(= 255オクテット)となります。

日本語版 RFC1035 > 3. ドメイン名空間とRRの定義 > 3.1. 名前空間の定義

あらゆるラベル長オクテットの上位2ビットはゼロでなければならない。ラベル長フィールドの残りは6ビットであるから、ラベルは63オクテット以下に制限される。

実装をシンプルにするため、ドメイン名を表現するトータルオクテット数(すなわち、全ラベルのオクテットと、各ラベルのオクテット長の和)は255に制限される。

上記により、各ラベルの数は、最大で127個まで設定することが可能です👇

a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.a.example.com

ただ、ドメインのラベルは階層が深くなるほど管理が大変なので、多くて3〜4個に設定するのが現実的です。

各ラベルの呼び方ですが、ホスト名の一番右から、『第1レベルドメイン(トップレベルドメイン)』『第2レベルドメイン』『第3レベルドメイン』・・・『第nレベルドメイン』となります。

出典:ドメイン名のしくみ

サブドメインとマルチドメインのラベル構成

サブドメインとマルチドメインでは、ラベルの構成が異なります。サブドメインの場合「ホスト名(任意)」+「サブドメイン名」+「ドメイン名」で構成され、マルチドメインの場合「ホスト名(任意)」+「ドメイン名」で構成されます。

トップレベルドメインの種類は、属する国で判別する『国別コードトップレベルドメイン (ccTLD)』、用途や目的のテーマ毎に判別する『ジェネリックトップレベルドメイン (gTLD)』、インターネットのDNS運用で使用される『インフラ用トップレベルドメイン (.arpa)』に大別されます。

その他、ドメイン名の基本構造の詳細は👇を参照

ドメイン業界の基本構造

ドメイン業界の主な登場人物は、『ICCAN』『レジストリ』『レジストラ』『リセラー』『登録者(ユーザー)』です。

• ICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)
  • インターネットのドメイン名システムやIPアドレスの管理を行う非営利団体。
  • ドメイン名の登録やIPアドレスの配分、プロトコルの標準化を監視し、インターネットの安定性とセキュリティを確保する役割を担う。
  • 各国のccTLD（国別コードトップレベルドメイン）の運営も監督。
• レジストリ (Registry)
  • 特定のトップレベルドメイン（TLD）を管理する組織や企業。
  • ドメイン名の登録情報を保持し、DNSの管理、ドメインの登録や更新に関する技術的なサポートを提供。
  • 例えば、.comや.netなどのgTLDや、.jpなどのccTLDを運営。
  • 以下は、レジストリ事業者の一覧👇

• レジストラ (Registrar)
  • レジストリからドメイン名の登録権を取得し、一般のユーザーや企業に対してドメイン名の登録サービスを提供する業者。
  • 登録者（ユーザー）に対してドメイン名の取得、管理、更新の手続きのサポートを行う。
  • 例として、JPRS、お名前.comやゴンベイドメイン、スタードメイン等が挙げられる。
• リセラー (Reseller)
  • レジストラからドメイン名の登録サービスを仕入れ、独自のブランド名でユーザーに再販する仲介卸売的立場の事業者。
  • 自社のサービスやパッケージに含めてドメイン名を提供する場合が多く、通常は顧客サポートを行う。
  • リセラーはレジストラと契約して、ドメイン名の管理や販売を行う。
  • 例として、バリュードメインやムームードメイン、エックスドメイン等が挙げられる。
• ユーザー
  • ドメイン名を実際に取得する個人または法人。
  • ドメイン名の所有者として、サイトの運営やメールサービスなど、様々な用途で利用する。
  • ユーザーはレジストラまたは、リセラを通してドメインを購入する。
  • ユーザーはレジストラを通じてドメイン名を登録し、更新や管理の責任を持つ。

日本国内の唯一のレジストリであるJPRSは、『jp』トップレベルドメインを管理しています。

ドメインを運用する上での重要項目

個人や組織がドメインを扱う上で、前提となる重要項目があります。これら重要事項を検討せずにドメインの購入・運用をすると、不利益を被る恐れがあります。最低限の知識として頭に入れておきましょう。

経営面

• ブランド構築とマーケティング
  • ドメイン名は企業やブランドの「顔」として、ユーザーに印象を与えるため、覚えやすくわかりやすいドメインが重要。
  • ブランディングを意識したドメイン名選び、競合他社との差別化、ビジネスの信頼性に寄与することが求められます。
• SEO（検索エンジン最適化）
  • ドメイン名やドメインの歴史が検索エンジンの評価に影響しやすいため、SEOに効果的なドメイン名選びが必要。
  • キーワードを含むドメイン名や中古ドメインの選定は、SEO対策の一環として利用。
• ブランド保護とドメイン防衛策
  • 自社ブランドを守るため、類似ドメインや誤記ドメインを取得し、サイバー・スクワッティング（ドメイン占拠）からブランドを保護。
  • ドメインを悪用したフィッシング詐欺の防止も含めたブランド防衛が重要。
• ドメインの資産価値
  • ドメインは会社の資産として考慮され、ブランド価値を高めることで、ドメインの価値も上がる可能性がある。
  • プレミアムドメインや中古ドメインの購入は将来の転売価値も視野に入れた戦略。
• ドメインの更新管理
  • ドメインの更新を怠ると失効してしまい、ビジネスに大きな影響を与えるため、更新管理やバックオーダー対応も経営判断に関わる。
  • 長期契約にするか、短期で運用しつつ状況を見直すかを検討。
• ドメイン取得と運用コスト
  • ドメインの取得費用、更新費用、またはドメイン売買費用（中古ドメインやプレミアムドメインの購入費用など）を考慮。
  • 経営コストと比較して、ドメインの価値や収益性を検討する。
• 法的リスクとドメイン紛争管理
  • 競合や第三者からの訴訟リスクを避けるため、商標権の確認やドメイン紛争管理（UDRPなど）の理解が重要。
  • 法務部門との連携を通じて、侵害リスクを避けるための検討が必要。

技術面

• DNS設定と管理
  • ドメインネームシステム（DNS）を理解し、適切に設定・管理することで、ウェブサイトやメールの利用が安定的に行えるようにする。
  • ネームサーバー設定や、Aレコード、MXレコード、CNAMEなどの基本設定の知識が必要。
• ドメインとSSL/TLS証明書
  • ドメインに対してSSL/TLS証明書を適用することで、ユーザー通信を暗号化し、セキュリティを確保。
  • HTTPS対応により、信頼性の向上やSEOにおいてもプラスの効果がある。
• ドメイン移管手続き
  • ドメインの移管（他の登録事業者へ移行）を行う際の手続きに関する知識。
  • 移管コード（Auth Code）やロック設定、移管にかかる時間、移管後のドメイン状態などを把握する。
• ドメインの階層構造
  • トップレベルドメイン（TLD）、セカンドレベルドメイン（SLD）、サブドメインの階層構造を理解。
  • 特にサブドメインの利用方法を理解することで、SEO対策や多言語サイト運営などに役立てる。
• メール設定（MXレコードの設定）
  • メールの受信にはMXレコードの設定が必要であり、信頼性のあるメールの送受信環境を構築するために重要。
  • SPFやDKIM、DMARCなど、メールのセキュリティ設定に関する知識も求められる。
• ドメインセキュリティとプライバシー保護
  • ドメインのセキュリティ向上のためのロック機能や、Whoisプライバシー保護の活用。
  • サイバー攻撃への対策として、DNSSECなどの導入や、ドメインのDNSキャッシュポイズニング防止も考慮。
• アクセス解析とサブドメインの活用
  • サブドメインの活用によって、異なる用途（ブログ、ECサイト、地域別ページなど）を管理。
  • Google Analyticsやその他の解析ツールで、ドメインごと、サブドメインごとのアクセス解析を行う知識が必要。
• ドメインリダイレクト設定
  • 複数のドメインを所有している場合、メインドメインにリダイレクト設定（301リダイレクトや302リダイレクト）を行う。
  • リダイレクト設定によって、SEOの一貫性やユーザー体験を向上。

販売・購入形態から見たドメイン分類

メインドメイン

ドメインを購入する際に、必ず必要となるベースのドメインです。サブドメインの親となり、SEO・企業ブランドの基盤になります。また、運用面においては、あらゆるドメイン運用形態(= シングルドメイン・サブドメイン・マルチドメイン等)のベースにもなります。

中古ドメイン

中古ドメインとは、過去に誰か(= 個人/組織)が使用しおり、既に契約が切れているドメインです。SEOやブランド、認知度などが引き継がれている為、一からドメインを育ててゆくコストを抑えることができるメリットがあります。その反面、使用する際はそれらの評価項目に問題がないか、入念に調査する必要があります。詳しくは👇

また、中古ドメインの調達/購入形態は様々で、以下の通り分類できます。レジストラ・リセラー・ユーザーは、以下の方法でドメインを調達/購入します。

• ドメインオークション

  • 概要: 特定の中古ドメインが競売形式で販売され、入札により購入する形態。
  • 特徴: 人気のあるドメインには入札が集中し、最終的な落札額が高騰することもある。
  • 取扱サイト: GoDaddy Auctions、NameJet、Sedoなど。
  • メリット: 入札方式であるため、競り勝てば希少なドメインを取得可能。
  • デメリット: 人気ドメインは高額になることが多い。

• ドメイン売買マーケットプレイス

  • 概要: 中古ドメインが固定価格または交渉可能な価格でリストされ、購入希望者が直接購入する。
  • 特徴: 入札ではなく、価格があらかじめ提示されているため、入手までの手続きが早い。
  • 取扱サイト: Afternic、Flippa、Domain.comなど。
  • メリット: 入札競争がないためスムーズに購入でき、価格が明確。
  • デメリット: 希少ドメインは高額になることもあり、値引き交渉が難しいケースも。

• 直接交渉での購入

  • 概要: 所有者が管理する中古ドメインを直接交渉して購入する方法。
  • 特徴: ドメイン管理者の情報はWhois検索や専用サービスを通じて確認。
  • メリット: 所有者と直接交渉することで柔軟な価格交渉が可能。
  • デメリット: 交渉の手間がかかり、必ずしも合意に至るわけではない。

• ドロップキャッチ（再取得）サービス

  • 概要: 登録期限切れでリリースされる予定のドメインを自動で再取得するサービス。
  • 特徴: ドメインの更新がされずに期限切れでリリースされる直前に自動申請。
  • 取扱サイト: SnapNames、DropCatchなど。
  • メリット: 人気のあるドメインを比較的低価格で取得できるチャンスがある。
  • デメリット: 他のユーザーとの競合があるため、必ず取得できるわけではない。

• プレミアムドメイン販売

  • 概要: 登録企業やプロのドメイン業者が希少価値の高い中古ドメインを「プレミアムドメイン」として販売。
  • 特徴: 短い文字列や覚えやすい単語のドメインが多く、SEO効果やブランド力が期待される。
  • 取扱サイト: Sedo、GoDaddyなどのプレミアムドメインセクション。
  • メリット: ブランド構築やSEO対策に有利な高品質ドメインを取得できる。
  • デメリット: 高額で販売されることが多いため、予算が必要。

• バックオーダー予約

  • 概要: まだ期限切れになっていないドメインに対して、将来の取得希望を予約しておく方法。
  • 特徴: 対象ドメインが期限切れとなった際に、優先的に取得の申し込みが行われる。
  • 取扱サイト: GoDaddy Backorder、Domain.com Backorderなど。
  • メリット: 他のユーザーよりも取得可能性が高まる。
  • デメリット: 対象ドメインが期限切れにならなければ購入できない。

上記で挙げた調達/購入形態のうち、ドロップキャッチは、『AGP:登録猶予期間』という仕組みを悪用して、ドメインテイスティングを行う手法が、年々激しくなってきており、ICANNでも見直しのための議論が行われています。

運用形態からみたドメイン分類

Webサイト運用において、ドメインをどう運用するかによって、以下の通り分類ができます。また、各ドメインの運用上の特徴を、経営面(= SEO・ブランディング・ドメイン管理維持費用)と、技術面(= 証明書・DNS・セキュリティ)に分けて挙げていきます。

シングルドメイン

本ドメイン１本をベースにサービスや事業、サイトを展開する形態で、以下の特徴があります。

• SEO効果の集中：1つのドメインに全てのコンテンツが集約されるため、SEO効果が分散せず、効率的に検索エンジン評価を高めることができます。
• ブランド認知度の向上：単一のドメインを使用することで、ユーザーに一貫したブランドイメージを提供し、認知度を高めやすくなります。
• 管理の簡素化：1つのドメインのみを管理すればよいため、サイト運営や SSL 証明書の管理が比較的容易になります。

サブドメイン

サブドメインは、ある一つの個人/組織が、異なる事業内容・サービスを展開したい場合に使用されるドメインです。多くの場合、取得自体は無料で、ドメイン登録事業者の設定画面より作成することができ、すぐに取得できることが特徴です。

マルチドメインの例としてよく挙げられるのは、Yahoo!のサイトです。Yahoo!は様々な事業・サービスを展開しており、それら毎にドメインを分けてサイト運用しています。

上記ページの、各サービス項目の１つ目のURLを見ると、事業内容ごとにドメインを分けて運用していることが分かります。

サービス	URL
趣味・エンターテイメント	https://sports.yahoo.co.jp/
ニュース・マガジン	https://news.yahoo.co.jp/
ショッピング・グルメ	https://shopping.yahoo.co.jp/
地図・交通	https://transit.yahoo.co.jp/

サーバとドメインの論理的な関係は、1対1となっています。その為、ドメインごとにサーバ証明書を用意するか、ワイルドカード証明書を使用する必要があります。

マルチドメイン

マルチドメインは、サブドメインとは異なる観点、例えば同じブランド・サービスを、異なる言語、異なる地域で展開したい場合に利用できるものです。

サーバとドメインの論理的な関係は、1対多となっています。これにより、サーバ証明書は一つで、すべてのドメインをカバーできます。

その他

マルチドメインの利用シーン

記事を書いている中で、マルチドメインの利用シーンをもう少し掘り下げたかったので、以下整理してみました。

同じ組織でも、ブランドが異なる場合

ブランドとは、顧客にそのサービスや商品を認知させる目的で、名称・ロゴ・キャッチコピー・デザイン・イメージ等を組み合わせて創られた何らかの情報です。『何らかの情報』とは、ポスター・CM・キャンペーンなどです。

マルチドメインは、これらブランドを構成する要素のうち『名称・キャッチコピー』とそれに対する『イメージ』を前面に出くれる役割があると考えられます。

具体例として、DUSKINとミスタードーナツがあります。どちらも、同じ株式会社ダスキンが運営していますが、DUSKINは、清掃業者/掃除機のイメージで、ミスドはドーナツ店のイメージです。事業内容とキーワードの紐づけを顧客に印象づけるために、マルチドメインを使用しています。

物理的環境

同じブランドやサービスでも、展開する国毎に異なる制約がある為、提供される内容も異なる場合があります。

具体例として、Amazonの販売ページ。アメリカと日本では法律が異なります。パッと思いつくだけでも、プライバシー保護と個人情報の取り扱い・税金・コンテンツの規制対象・リターン・返品ポリシー等あります。

これらの違いは、システムの実装も大きく異なると考えられるため、サーバーを分けて(= マルチドメイン)で運用したほうが適切なると思います。

経営面から見た場合、サブドメインが青色、マルチドメインが赤色の役割をそれぞれ担っているように思いました。