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信号機の信号制御は想像以上に高性能だった

Last updated at Posted at 2023-11-13

MaaS1 の前に ITS2 はどういう仕組みなのか?

車を運転していると、深夜の国道はずっと青信号で気持ちよく走れたり、直線のバイパス道路なのに信号1つずつ止められてイライラしたりします。複数の信号が同期して制御されていそうなことはなんとなくわかるのですが、詳しく調べたことがありませんでした。
最近、Woven Cityとか新しい都市のカタチが模索されていますが、そういう将来の都市の信号はどんなふうに制御するのだろう?と思い、今の信号制御(ITS)がどうなっていて、どう変わっていくのか、MaaSとあわせて調べました。

なお、ベンダーロックインされていない全体的な情報を専門でない人が読めるようにまとめられていると思いますので、なるべく主体である行政側のホームページで公開されている資料へのリンクを集めました。

現在の信号制御

信号の制御方法などについては下記URLからダウンロードできる「警察によるITS」(PDF)の技術編にまとまっています。
都道府県にある交通管制センターが信号を集中制御しています。システムは機能ごとに分割されており、機能の追加・変更なども柔軟に対応できる作りのようです。

また、VICSの渋滞情報などはUTMS(Universal Traffic Management Systems:新交通管理システム)で配信されています。

右折感応制御やバス感応制御など、細かい制御をしてます。

特にジレンマ感応制御は重要そうで、論文もあり、自動運転にも関連してきます。

・【論文】ドライブレコーダーを活用した交差点黄信号における急停止判断要因の分析
 https://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/33-4-12.pdf

次世代の信号制御

交通管制センターによる集中制御からAIによる分散制御へ、制御方式を切替える技術が開発されてます。
AIは交通管制センターのようなクラウド側でなく、エッジ側の交通信号機に実装される様です。分散制御でシステムを小さく、かつ、応答を早くできるところが「軽やかな」ということでしょうか。

また、信号制御のアルゴリズムや通信方法にも進化があります。
モデラート制御からプロファイル信号制御になり、交差点に到達する車両を予測して信号を制御することで信号渋滞を抑制するそうです。この予測にAIが使われてます。
・道路交通流対策について
  4ページ 信号機のプロファイル化の概要
 https://www.env.go.jp/council/06earth/y0620-5b/900425023.pdf

次項にも関連しますが、信号情報だけでなく道路情報などを車両と通信するシステムが構築されています。スマートシティの基盤技術になりますが、VICSなどすでに実運用されているサービスもあるため本項で挙げます。

狭域通信(V2V:Vehicle-to-Vehicle, V2I:Vehicle-to-roadside-Infrastructure)で信号機と車両が通信する実証実験が行われています。
・通信型ITSによる公共交通優先型スマートシティの構築
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000714507.pdf

広域通信(V2N:Vehicle to Network)で信号機と宅配ロボットが通信する実証実験も行われています。
・令和2年度 NEDO「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」実証事例のご紹介
 https://www.nedo.go.jp/content/100948535.pdf

ただ、宅配ロボットで採算を取れるようになるには一段のコストダウンが必要なようです。下記ページから 関連情報のページに移り、関連調査の項の2つ目のPDFファイルに調査結果がまとめられています。

・令和4年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(自動配送ロボットの社会実装及び導入コスト削減に資する技術等に関する調査)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/deliveryrobot/r4_report.pdf

なお、狭域通信と広域通信のいずれを自動運転で利用するかは、まだ議論中のようです。
一長一短なのですが、重複する機能にムダな投資となるのは避けたいでしょう。

・協調型自動運転システムへの情報提供等の在り方に関する検討報告書 令和5年3月
 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/r4_kyoutyou_houkokusho.pdf

スマートシティ

前項はITSに閉じたシステムの資料へのリンクですが、本項はITSが効率的な経済活動を支える自動運転の基盤として組み込まれるスマートシティに関するリンクを集めました。

国交省のビジョン「2040、道路の景色が変わる ~人々の幸せにつながる道路~」では実現方法の記述はなく、信号のしの字も出てきませんが、どんなことを構想しているのか書かれています。

また、スマートシティのMaaSプロジェクトが紹介されています。
地域の課題をDXで解決することがスマートシティなので、小規模ですが地域ごとに特色のあるMaaSが開発されています。(いずれパッケージ化されて世界に売り込まれるものが出てきたりするのでしょうか……)

こちらの資料は2018年と古いですが、内閣の資料でスマートシティからITSに関連するSIPの成果に自動運転や情報の連携に関して2例紹介されています。
・スマートシティの構築を通じたSociety 5.0 の実現
 ・16ページの SIPの成果:自動走行(ダイナミックマップ)
 ・18ページの 分野間データ連携のイメージ(交通情報×災害情報)
 https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/dai2/shiryou1.pdf

なお、使用される地図情報には国交省の Project PLATEAU(プラトー)が使用されるといいなと思います。
遅延が少なく高速な5G/6Gネットワークが構築されるようになれば、ほぼリアルタイムで道路情報を得られるサービスが作られるようになると期待できます。

Web3.0はGoogleのような情報集約サービスではなくなる方向の様ですし、国内インフラの情報が Google Map など海外のサービスに独占される状況は良くない気がするというのもあります。

ドローンとITS

PLATEAUはITSより土木工事やドローンの方が活用できるようです。
ドローンは最近有人地帯での目視外飛行(レベル4)が解禁されたそうですが、飛ばすだけでも機体登録や申請が大変そうです。ドローンが過密になれば、3DのITSのようなサービスが必要になるのでしょうか。

スマートシティとITSについて別の資料

デジタル庁からはスーパーシティとITS・自動運転についてまとめた資料が出ています。この資料は技術的な話ではなく、企画する担当者へのチュートリアルのようです。

・デジタルを活用した交通社会の未来2022(PDF/3,616KB)
 ・35ページ〜 3.1 自動運転・運転支援
 ・38ページ〜 3.2 道路空間
 https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/22791050-006d-48fd-914d-e374c240a0bd/1ae00570/20220802_news_mobility_outline_01.pdf

ITS Japanからはスマートシティ/スーパーシティの基盤となるITSの具体例など将来像の資料が出ています。
・ITS 長期ビジョン 2030(2009 年改訂版) 特定非営利活動法人 ITS Japan
 ・21ページ 3.1.1 未来のモビリティ社会の姿 より
  22ページの 図 3.1-4 車の IT 化(2030 年)のリアルタイム路車間・車車間通信
 https://www.its-jp.org/wp-content/uploads/2010/08/vision2030_Final.pdf

ITSに関連する技術など

前項はITS関連としてスマートシティのMaaS関係の資料を集めましたが、本項はV2X(Vehicle to X)に関連する通信規格などのホームページのリンクを集めました。

・自動走行の実現及び普及に向けた取組報告と方針案 version7.0 参考資料 2023年3月23日
  In Car, Out Car両面でまとめられており、現在の状況を俯瞰するには良い資料と思います。V2Iによる自動運転の支援という形でITSが利用されるレベル4の実証実験が進めらているようです。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/jido_soko/pdf/20230323_jimukyokusannkoshiryo.pdf

セルラーV2Nは3GPPがまとめているようです。
・3GPP(Third Generation Partnership Project)の動向
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000683107.pdf

1つのサーバから複数の車両へ配信するMBMS規格 (5G broadcast)もあります。高速の道路情報の放送のような感じで使うのでしょう。
・MBMS(multimedia broadcast multicast service)の規格動向調査について
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000739577.pdf

「狭域通信 プロトコルスタック」のシートで ”国内向けの上位レイヤ仕様化が必要” とありますが、スマートシティ関係の資料などをざっとググったところでは、プロトコルはQUICやMQTT、セキュリティはTLS1.3か軽量暗号のASCONなどが当てはまるのかなと考えます。
座標データを通信するならデータフォーマットはMF-JSON形式でしょう。

・セルラー通信技術を用いたITS・自動運転の高度化に向けた課題調査 報告書 概要
  34ページ〜 狭域通信 プロトコルスタック
 https://itsforum.gr.jp/Public/J7Database/p62/Cellular_system_overview_201910.pdf

・「CRYPTREC 暗号技術ガイドライン(軽量暗号)」掲載の暗号方式に関する安全性評価の動向調査
https://www.cryptrec.go.jp/exreport/cryptrec-ex-3101-2021.pdf

まとめ

Society 5.0, Industry 4.0, Web 3.0全体として見るともっとたくさんの規格や技術が関連しますが、クラウド側はITSからは関係が薄れるため検討外とします。

最後に2つの実験を紹介して終わりにしますが、自動走行で管理されていない車両や人が交差点を横断する可能性がある限り、信号機の役割は無くならないと思います。信号機には もっと賢くなって 残ってほしいものです。

IOWN、デジタルツイン、深層学習で信号機を不要にする実験です。

下記ページの 令和3年度 交通信号機を活用した5Gネットワークの構築(PDF形式:1439KB)に実証実験の結果があります。

  1. Mobility as a Service:サービスとしてのモビリティ

  2. Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム

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