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研修における「評価」

Last updated at Posted at 2015-08-12

はじめに

研修をつくって、届けていくうえで、「評価」というのは実にデリケートな問題だ。
やり過ごしてしまえればこのうえなく楽なことはない。

と、常々考えていたところに、この記事がかなり刺さる内容だったので、研修における「評価」についてちょっと考えてみた。
【品質工学から見た日本の教育の疑問点】
http://brevis.exblog.jp/19817386/

カリキュラムの評価と受講者の評価

研修における評価対象には、カリキュラムと受講者の2つがある。
前者はいわゆる講義や講師の質。
後者は、言葉を選ばずに言えば、その研修を受けた受講者の出来不出来のこと。
ちなみに、受講者に対して講義後のアンケートで「この講義はどうでしたか?」と聞くのは、前者であって後者ではない。(「受講者による」評価ではないということ)

上記の記事は、後者の必要性を述べていて、かつその目的は、受講者を峻別するためではなく、カリキュラムの品質評価のためである、と。

研修をインプット-プロセス-アウトプットの枠組みで捉えるならば、
* インプット:受講前の受講者
* プロセス:カリキュラム
* アウトプット:受講後の受講者
となるわけで、前者はプロセスを、後者はアウトプットを評価しましょう、ということなのだろう。
そしてもちろん、「何のため」かと問われれば、「アウトプットを評価する⇒その結果をプロセス改善のためにフィードバックする⇒アウトプットの質を上げる」となり、結局はひとつの目的に収斂していくのだ。

満足度と到達度

さきほどの、受講者に対して講義後のアンケートで「この講義はどうでしたか?」と聞くのは、受講者自身が感じる主観的な「満足度」を評価している。
一方、理解度確認テストを実施するときに評価しているのは、受講者の「(カリキュラムが設定したゴールへの)到達度」である。(そう、カリキュラムには事前に「ゴール」を設定しなければならない!)
こちらは、受講者自身が結果を作為的に操作することができない、という点においては客観的なものだ。

満足度を高めることは、到達度を高めるためのひとつの方策ではあるけれども、両者はあくまで別の観点なので、別々に評価しなければならない。
そして、「受講者を研修に送り出す側(=受講後の受講者を受け入れる側)(≒現場)」の人々にとっての関心事は、あくまで到達度なのだ。

繰り返しになるが、この到達度も、その目的は受講者の峻別ではなく、カリキュラムというプロセスの改善のためのものになる。

アセスメントとフィードバック

評価の目的というか、用途というか、「その評価結果を受講者に伝達することによってなにを期待するのか」という点でも共存させなければいけない観点がある。

アセスメントとはすなわち査定なので、評価者が被評価者に対して、評価結果を一方的に伝達して終わり。「査定」で辞書を引くと「金額・等級・合否などを調査したうえで決定すること」とあるので、評価者と被評価者の関係が一方的で、被評価者にとって評価結果は所与のものであり、それに対する反応が求められていないことがわかると思う。

一方、フィードバックは、「被評価者が自身の評価結果を知ることにより、自身の到達度と改善点を認識し、次の改善行動につなげる」ことが目的となる。
この「自身の到達度と改善点を認識」するためには、被評価者自身の内省が必要なのだけれど、これが難しいので、他者(研修の場合は講師などの評価者)が介入して内省を支援する。

アセスメントとフィードバックも、どちらが良い・悪いの問題ではない。
受講者の成長という究極的な目的のためにはフィードバックが必要なのは明らかだけれど、有効なフィードバックをするためには、妥当な評価方法によって導かれる、正確かつ受講者の納得度の高い評価結果が欠かせない。
「妥当な評価方法によって導かれる、正確かつ受講者の納得度の高い評価結果」を形作る行為がアセスメントに他ならない。

加えて、「受講者を研修に送り出す側(=受講後の受講者を受け入れる側)(≒現場)」の人々にとって必要なのは、アセスメントという「最終結果」なのだ。

おわりに

「評価」と一言で括られているけれど、そのなかにはいろんな立場の人のいろんな思いが交錯していて、そしてそれらはどれも大事なことで、八方美人と言われるかも知れないけど、バランスさせていかなきゃいけない。

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