2017年にふとしたきっかけで困っている妊婦さんたちを手助けする助産師さん、看護師さん、お医者さん、社会福祉士さんたちの団体が手作りで運営していた電話相談サービスにTwilioのコンタクトセンターを寄贈したところ、皆さん社会起業家として大活躍されて、今ではなんと特定非営利団体として公共の事業としての妊娠葛藤相談を受け付けるサービスを提供するまでに成長したというすごい体験をしたのですが、2020年には逆に皆さんのお力を拝借して新たにまたTwilioを使って今度は生活が困窮された方を電話で支援するサービスを立ち上げました。
コロナ禍で困窮され「携帯電話」を失っている方々へ本人負担ゼロで電話をお渡しする「つながる電話」プロジェクトを開始。誰もがすまいや仕事へつながることができる社会の実現へ
コロナ禍で携帯電話を失った方へ本人負担ゼロで電話を提供する「つながる電話」
現代の社会では電話を受けられることが就職や住居の契約といった生活の根本となるサービスを受けるための最低条件となっています。しかし、経済的な事情や暴力などの被害から逃れてきた方々にとって電話の契約は敷居が高く難しいものであるため、本人の努力だけでは現状から脱出するための最初の一歩を踏み出すことさえままならないという事情があります。
そこで、各支援団体の皆さまと一緒に、事情のある皆さんに携帯電話を使ってもらおうというのがこのサービスです。
開発にあたってはいくつかの制限事項をもうけました。まず、社会的に弱い立場に置かれてしまいがちな人たちが安全に利用できるよう、発信先についてはこちらで指定した番号にしか電話をかけることができません。データ通信専用のSIMを利用することで通話は全て運用側のサーバでコントロールしています。
サーバ側は運用の人手があまりかけられないので、AWS上にAPI GatewayとLambdaで実装して基本的なサーバ管理の手間を省くことによりランニングコストを下げています。この構成の場合、通話数が一定数を超えるとコストがリニアに増えていくことになりますが、現在のところ特に問題とはなっていないようです。
iOS向けSDKを利用した電話といえばSansan社さんの事例などがありますが、仕組みとしてはだいぶ似たものになっていますね。iOSの電話帳まわりはAPIが非公開のものも多くあまり自由にできない難点がありますが、通話の受発信については電話状況がしっかりしていれば問題はないようなので(逆に格安SIMで電波状態が悪いと当然ながら厳しいことがあります)、ビジネス利用ももっと広がる可能性があると思います。特に日本はTwilioのSMSが基本的にいまだに国際SMSだったりするのでiOS/AndroidのSDKを使った面白いサービスを作って通知はAPNsやFCMに任せてしまう方が何かと便利かもしれません。
この手のプロジェクトって米国のTwilioだと経済的に支援を受けるプログラムがあったりするんですが、日本だとメールで申し込むことになっているのになかなか返信がなかったりして、誰もサポートしてくれそうにないし困ってるんですよね。またどっかのハッカソンにでも潜り込んで賞金をもらって寄付してしまおうかな。
さて、電話が結構うまくいっちゃったので、実はもうこの次のプランも着々と進めています。今度はwifiをなんとかしようというのがテーマです。こうご期待。