概要
ビジネス現場でのLLMの活用について、各社で利用できる環境が整備されてきています。
文章の要約や翻訳など、ちょっとした作業支援として使えそうですが、一方でアイデア創出のためのツールとして、ブレインストーミングに利用することを試してみました。今回はLLMを使って独りでブレインストーミングを行う方法と、そのメリットについてご紹介します。
なぜLLMがブレインストーミングに適していると思ったのか?
- 多数の人を集めなくても一人でいつでもブレインストーミングセッションを開始できます。必要であれば複数の参加者をLLMに用意してもらうこともできます。
- LLMは要約を作成することに長けていますので、セッションの纏めを過不足なく、一瞬で作成してくれます。
- ブレインストーミングセッションでは、相手の意見を論破するのではなく、共感できる意見を拾って拡張します。これによって自分一人では気づけなかったアイデアを広げていきます。LLMの問題点として良くハルシネーションが挙げられますが、これを弱点としてではなくアイデアを拡張するきっかけと捉えます。
自己ブレインストーミングのやり方
以下ではGPT4.0を使っています。最初に方法論を確認します。
You
KJ法について教えてください。ChatGPT
KJ法(別名:アフィニティ・ダイアグラム)は、日本の文化人類学者である川喜田次郎によって考案された、情報の整理や問題解決を助けるための手法です。… KJ法を実行する基本的なステップは以下の通りです:
- データ収集:問題に関連する情報、意見、観察結果などを収集します。
- カードへの書き出し:収集した各情報を個別のカードや付箋に簡潔に書きだします。
- グルーピング:関連性のあるカードを集め、グループを形成します。このプロセスでは、直感的な判断も活用されます。
- ラベル付け:各グループに、その内容を表すラベルや見出しを付けます。
- 関係性の整理と構造化:グループ間の関係性を明らかにし、全体としての構造や図式を作成します。
…
ブレインストーミングセッションを開始するプロンプトを入力します。
LLMが勝手にセッションを進めてしまわないように、また反復的なやり取りとなる様にします。
You
今からKJ法を試してみたいと思います。ブレインストーミングセッションの相手をしてください。# 議論のテーマ
人口が減りつつある町の活性化について# あなたの性格
常識にとらわれず自由に発想する# 条件
- KJ法の次のステップに進むタイミングは私が指定します。ChatGPT
議論の開始
ブレインストーミングの相手として、私は自由な発想で貢献しますが、プロセスを進めるのはあなたの指示に従います。
...
では「人口が減りつつある町の活性化」について、アイデアを自由に出してみましょう。私からいくつかアイデアを出しますので、それに対してあなたもアイデアを追加してください。
以下、議論を進めます。ある程度意見が出そろったら、次のステップに進めます
You
次のステップに進みたいと思います。カードへの書き出しに進んでください。ChatGPT
次のステップカードへの書き出しに進みます。ここでは今まで出たアイデアや提案を個別のカード(この場合はリスト形式での項目)にまとめます。これにより、視覚的にアイデアを整理し、次のグルーピングステップでの作業を容易にします。...
箇条書きの内容を見て、良ければ次に進みます。
You
ではグルーピングに進んでください。ChatGPT
グルーピングのステップでは、先ほどカードに書き込んだアイデアやテーマを関連性に基づいて分類します。ここではアイデアを大きく3つのグループにまとめてみます。グループ1: …
グループ2: …
グループ3: …次に各グループにラベルを付け、さらにこの情報をどのように活用するかについて話し合いましょう。進めてよろしいですか?
グループ分けに合意できるか確認して次に進みます。
ここでグループ分けに介入しても良いと思います。
You
進めてください。ChatGPT
各グループにラベルを付け、それぞれのグループがどのように町の活性化に貢献できるかを明確にすることで、具体的なアクションプランへと繋げていきます。ラベル付けとアクションプランの提案
...
最後はアイデアを纏めてもらい、そのアイデアを実践するアクションプランを作成してもらうことができました。ここまで十数分ぐらいだったでしょうか。
自分自身も結構頭を使った感じがしました。
やってみた印象
正直、実際のブレインストーミングよりも役に立つように感じました。
普通、会議の議事録などを読むと、自分の発言のニュアンスが微妙に違っていたり、十分に反映されなかったりすることがあります。LLMとのブレインストーミングでは非常にフェアに意見を取り入れて過不足なくまとめてくれます。
また自分の意見を受けて、LLMが偏りのないアイデアの拡張をしてくれるために、議論が建設的に進められます。
これはLLMが、否定的な意見やネガティブな表現ではなく、前向きな表現のデータ学習によって構築されているからだと考えられます。
ブレインストーミング以外のディスカッション
ブレインストーミングとは別な種類の議論として、ディベートや夫婦げんかのケースを試してみたのですが、いずれも最後は前向きな意見に集約したり、けんか相手に同調されて謝られたり、という結果になりました。
LLMは否定的な意見や相手の意見へのネガティブな反論をしないようにトレーニングされているため、否定的な意見を述べたり、感情的な反論をやって見せることがあまり得意ではないのかと考えられます。
まとめ
単にLLMにアイデアを出してもらう場合、出てきた意見の正確さをチェックする必要があり、ハルシネーションが問題となります。上で述べたようにブレインストーミングでは、仮に相手の意見に間違いがあってもアイデアを拡張するきっかけとして捉えることができます。また相手の意見を偏りなく採用しまとめることもLLMは非常にうまく、普通の人の能力を超えているレベルだと感じます。
最初はブレインストーミングがいろいろと考えられる活用アイデアの一つだと思っていたのですが、内容が良かったことに加え、よく考えてみると「相手の意見を尊重しつつ、アイデアを拡張し、隔たりなくまとめる」という一連のプロセスがLLMに向いたタスクなんじゃないかと思いました。
その意味で、これはLLM活用の本命といっていいのではないかと思った次第です。
厳密なブレインストーミングのステップを辿らずとも、ブレインストーミング的なやり方で、自分のアイデアを拡張したり、抜け漏れの点検をして補強していく形で創造を促すことが、業務などで使っていく上で向いているのではないかと思いました。
ご意見、コメントがあればお聞かせください。