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ニッセイ情報テクノロジー PS事業推進室Advent Calendar 2024

Day 12

回帰分析の主要な手法とその特徴​

Last updated at Posted at 2024-11-28

はじめに​

機械学習において、回帰分析は連続値を予測するための重要な手法です。今回は、機械学習初心者にも馴染みやすい 線形回帰, リッジ回帰, ラッソ回帰 といった基本的な手法から、実用性の高い ランダムフォレスト回帰, 勾配ブースティング回帰(GBDT) 、さらに少し高度な ガウス過程回帰(GPR) まで、代表的な回帰手法の特徴やメリット・デメリットを解説します。また、各手法の違いと使い分けについてもご紹介します。​

1. 回帰分析とは?​

回帰分析(Regression Analysis)は、入力となる特徴量から連続値の出力(目的変数)を予測するための機械学習手法です。例えば、不動産の価格予測や株価予測、温度予測など、 連続的な数値を予測 したい場合に使用されます。​

回帰分析の基本的な流れ​

  1. データの収集と前処理:データの欠損値処理や異常値の除去、特徴量エンジニアリングなどを行います。​

  2. モデルの選択と学習:データに適した回帰モデルを選び、学習させます。​

  3. モデルの評価とチューニング:適切な評価指標を用いてモデルの性能を評価し、必要に応じてハイパーパラメータの調整などを行います。​

  4. 新しいデータに対する予測:学習済みモデルを用いて、未知のデータに対する予測を行います。​

2. 主な回帰手法とその特徴​

ここからは、代表的な回帰手法を取り上げて解説します。​

2.1. 線形回帰(Linear Regression)​

線形回帰は最も基本的な回帰手法で、目的変数を特徴量の線形結合で表現します。単純ながら強力で、データに線形性がある場合に有効です。​

モデル式:​

$$​
y = \beta_0 + \beta_1 x_1 + \beta_2 x_2 + \cdots + \beta_n x_n​
$$​

  • $ y $:予測したい対象の値
  • $ x_1, x_2, \cdots,x_n$:予測に使用する特徴量
  • $ \beta_0 $:切片(定数項)
  • $ \beta_1, \beta_2, \cdots, \beta_n $:各特徴量の係数
メリット:​

• 実装が容易で、結果の解釈が簡単​

• 計算が高速であり、大規模データにも適用しやすい​

デメリット:​

• データに非線形性がある場合、精度が低下​

• 外れ値の影響を受けやすい​

2.2. リッジ回帰(Ridge Regression)​

リッジ回帰は、線形回帰にL2正則化を加え、過学習を防止する手法です。係数の大きさにペナルティを加えることで、モデルの複雑さを抑制します。​

モデル式:​

​$$
\text{minimize} \lbrace \sum_{i=1}^{n} (y_i - \hat{y_i})^2 + \alpha \sum_{j=1}^{p} \beta_j^2 \rbrace
$$

  • $ y_i $:実際の値
  • $ \hat{y_i} $:予測値
  • $ n $:データ数
  • $ \alpha $:正則化の強さを制御するパラメータ
  • $ \beta_j $:回帰係数
  • $ p $:特徴量の数
メリット:​

• 過学習を防ぐ効果があり、汎化性能を向上​

• すべての特徴量を使用するため、特徴量間の相関を扱いやすい​

デメリット:​

• 特徴量の係数は0にはならず、不要な特徴量を完全に無視できない​

• 線形モデルの範囲に限定される​

2.3. ラッソ回帰(Lasso Regression)​

ラッソ回帰は、線形回帰にL1正則化を加えた手法です。リッジ回帰と同様に過学習を防ぎつつ、不要な特徴量の係数を0にすることで特徴量選択を可能にします。​

モデル式:​

​$$
\text{minimize} \lbrace \sum_{i=1}^{n} (y_i - \hat{y}i)^2 + \alpha \sum_{j=1}^{p} |\beta_j| \rbrace
$$

  • $ y_i $:実際の値
  • $ \hat{y_i} $:予測値
  • $ n $:データ数
  • $ \alpha $:正則化の強さを制御するパラメータ
  • $ \beta_j $:回帰係数
  • $ p $:特徴量の数
メリット:​

• 不要な特徴量の係数が0になるため、モデルの解釈性が高まる​

• 過学習を防ぎ、汎化性能を向上​

デメリット:​

• 特徴量選択を行う際に、有用な特徴量までもが削除される可能性がある​

• 線形モデルの範囲に限定される​

2.4. ランダムフォレスト回帰(Random Forest Regression)​

ランダムフォレスト回帰は、複数の決定木をアンサンブルした回帰手法です。各決定木が出した予測値の平均を最終予測とすることで、過学習を防ぎます。​

仕組み:​

• データをブートストラップサンプリングし、複数の決定木を構築​

• 各決定木の予測結果の平均を最終予測とする​

メリット:​

• 過学習に強く、汎化性能が高い​

• 非線形性を捉えられる​

• 大量の特徴量に対応可能​

デメリット:​

• モデルの解釈が難しい​

• 大規模データに対しては学習時間が長くなる可能性がある​

​2.5. 勾配ブースティング回帰(Gradient Boosting Regression, GBDT)​

勾配ブースティング回帰は、モデルの誤差を逐次補正しながらアンサンブルを構築する手法です。XGBoost、LightGBM、CatBoostなどが代表的な実装として知られています。​

仕組み:​

• 決定木を逐次構築し、前のステップの予測誤差を補正​

• 全ての決定木の予測結果を加算して最終予測とする​

メリット:​

• 高い予測精度を発揮し、Kaggleなどのコンペティションでもしばしば上位に入るモデル​

• 非線形性を捉えられる​

• 特徴量重要度の評価が可能​

デメリット:​

• モデルの学習時間が比較的長い​

• 適切なハイパーパラメータの設定が必要​

2.6. ガウス過程回帰(Gaussian Process Regression)​

ガウス過程回帰(GPR) は、データ点間の関係性を確率的に学習し、新しいデータに対する予測値を求める手法です。単なる予測値だけでなく、その予測がどの程度信頼できるか(予測の確からしさ)も同時に計算できる特徴があります。​

仕組み:​

• データの関係性が、正規分布(釣鐘型の分布)のような滑らかな性質を持つと仮定​

• 似ている特徴を持つデータ同士は似た値になりやすい、という性質を数式(カーネル関数)で表現します​

メリット:​

• 予測とともにどの程度信頼できるか(予測の確からしさ)も評価できる​

• 柔軟な非線形モデルを構築可能​

デメリット:​

• データ数が増えると計算量が$O(N^3)$と膨大になる​

• カーネルの選択とハイパーパラメータチューニングが難しい​

​​

​3. 各回帰手法のメリット・デメリットと使い分け​

手法 メリット デメリット 適用例
線形回帰 ・シンプルで解釈しやすい​
・計算が高速
・データに線形性がないと精度が低下​
・外れ値に敏感 ​
特徴量と目的変数が直線的な関係を持つ場合​
リッジ回帰​ ・過学習を防ぐ
・全ての特徴量を活用
・不要な特徴量の係数が0にならない​
・線形性に限定される
特徴量が多く、相関がある場合​
ラッソ回帰 ・特徴量選択が可能​
・過学習を防ぐ​
・有用な特徴量まで0になる可能性​
・線形性に限定される
特徴量選択が必要な場合
ランダムフォレスト回帰 ・過学習に強い
・非線形性を捉える
・モデルの解釈が難しい
・計算リソースを多く消費する​
複雑なデータに対して堅牢なモデルが必要な場合
勾配ブースティング回帰​ ・高い予測精度​
・非線形性を捉える
・特徴量重要度の評価が可能 ​
・モデルの解釈が難しい​
・計算リソースを多く消費する​
高精度な予測が要求される場合
ガウス過程回帰 ・予測と不確実性を同時に評価​
・柔軟な非線形モデル​
・データ数が増えると計算量が多い
・パラメータチューニングが難しい​
データの不確実性を考慮しつつ予測したい場合​

回帰手法の使い分け方​

線形回帰・リッジ回帰・ラッソ回帰:データが線形であると仮定でき、解釈性が重視される場合に適しています。​

ランダムフォレスト回帰・勾配ブースティング回帰:非線形性が存在し、より高精度な予測が必要な場合に適しています。また、特徴量の重要度を確認しやすいという利点もあります。​

ガウス過程回帰:予測と同時に不確実性を評価したい場合や、データのサンプル数が比較的少ない場合に適しています。ただし、大規模なデータセットに対しては計算負荷が大きくなる点に注意が必要です。

4. まとめ​

今回は、代表的な回帰手法である線形回帰, リッジ回帰, ラッソ回帰, ランダムフォレスト回帰, 勾配ブースティング回帰(GBDT), そしてガウス過程回帰を取り上げ、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しました。​

線形回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰は、簡単で解釈しやすいモデルですが、データに線形性がない場合はパフォーマンスが低下します。​

ランダムフォレスト回帰と勾配ブースティング回帰は、非線形な関係を捉えることができ、高い予測精度を出しやすい反面、学習時間が長くなる場合があります。

ガウス過程回帰は、不確実性の評価を可能にし、柔軟なモデルを構築できますが、計算コストが大きくなりがちです。​

使い分けのポイント:​

• モデルの解釈性が重要な場合は、線形回帰系の手法を検討します。​

• 非線形性が強く、より高精度な予測が必要な場合は、ランダムフォレスト回帰や勾配ブースティング回帰を検討します。​

• 予測の不確実性も考慮に入れたい場合やデータサイズが小さい場合は、ガウス過程回帰を検討します。​


最適な回帰手法の選択は、データの性質や問題の要件に応じて行う必要があります。実際の問題に取り組む際には、複数の回帰モデルを試し、評価指標に基づいて最適なモデルを選択することが一般的です。この記事が、回帰分析の手法選択の際の参考になれば幸いです。​

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