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AIQVE ONE ゲームテスト/QAAdvent Calendar 2021

Day 7

コンシューマガイドライン資料に出てくる「IARC」とは?

Last updated at Posted at 2021-12-06

概要

ここ1、2年の間でコンシューマの資料や技術情報等で目にする事が増えた**【IARC】**という言葉…
初見では良く意味が分からず「?」となったので、その意味や背景について色々と調べてみました。
主にコンシューマのテスト等に関わる方々の参考になれば幸いです。

そもそも「IARC」とは何か

IARCは "INTERNATIONAL AGE RATING COALITION" の頭文字をとった名称で、日本語でいうと "国際年齢評価連合" のこと。ゲームやアプリの年齢レーティングを審査するための国際組織です。
コンシューマのテスト作業で目にするようになったのが最近だった為、ごく新しい組織なのかと思いきや、公式ページを見ると『2013年に設立』と記載されています。
(意外にも8年も前に既に存在していた…)

さらに公式ページを読み進めていくと
 ・北米のESRBや欧州のPEGIなど各国/地域のレーティング団体が加盟して成り立っている
 ・開発者が質問に答える事で年齢レーティングが取得される(いわゆるセルフレーティング方式)
 ・このレーティング審査結果に応じて各加盟団体それぞれのレーティングに分類される
といった仕組みで運用されている旨が分かります。
しかもその審査費は"無料"(ちなみに日本のCEROレーティング審査は現状"有料"です)

IARCで審査を受ければ、各加盟団体の国/地域においてはレーティングを個別取得する必要性がないという事であり、1回の審査、しかも無料の審査で世界中で配信できるという非常に素晴らしい仕組みに思えます。

注意点/問題点

このIARC、各国のレーティング取得を一本化できるという点で非常に利便性が高いものとなりますが、実は万能ではありません。
以下の通り注意すべき事項が幾つかあります。

  • 対象となるのは「デジタルコンテンツ」のみ
    IARCはデジタルコンテンツのみを審査対象にしている為、ダウンロード配信タイトルでないと利用はできません。パッケージ販売を行うタイトルでは、結局のところ国/地域毎の審査機関によるレーティング取得が必須となります。
    大手ソフトメーカーが販売する有名タイトルなどはパッケージ版とDL版を両方併売する場合が多く有りますが、こういった売り方の場合、恩恵はあまり得られません。

  • リリース後のレーティング変更
    IARCは前述の通りセルフレーティング方式を採用しており、迅速なレーティング取得を実現していますが、これは「審査団体による事前の厳密な製品レビューを通っていない」という事でもあります。
    場合によってはリリース後の市場の反応等を受けてレーティングが修正される可能性があり、
     『レーティング変更によりプレイ出来なくなる年齢のユーザーが出てくる』
     『レーティング変更の結果、ストア配信が停止される』
    といった "ユーザー不利益" や "余計な対応コスト" 等が発生し得る、という事です。

こういった注意点/問題点を十分に理解した上で利用する必要があります。

日本における対応状況

日本国内で販売されるタイトルに関わる事が多い立場としては、やはり「日本でどういう対応状況なのか」が気になるところ。今現在の実状はどうなのでしょうか。

日本のレーティング審査機関といえば言わずと知れた「CERO」ですが、本記事作成時点(2021年12月)ではCEROはIARCに加盟していません。
つまり "IARCレーティングを基にCEROレーティングを分類" といった事は現状は出来ません。

しかし、これとは別でハードメーカー側がIARCに加盟しており、日本でもその利用範囲は広まってきています。
現にニンテンドーeショップにおいてCEROではなくIARCレーティングが表記されたソフトも販売されている状況で、これについては任天堂公式サイトでもユーザー向けの説明ページが用意されています。

ただ、調べた限りでは「日本国内のみのタイトルがIARCレーティング表記で配信されている」というパターンは確認出来ず、あくまで「IARC加盟団体の各国で配信されるゲームを日本でも配信する際に、CEROを取得せずにIARCを流用出来る場合がある」といった程度である模様です。

各プラットフォームのポリシーによって適用可能な条件/範囲は変わるものと思われますが、
少なくとも日本のニンテンドーeショップ及びPlayStation™Storeにおいては、まだまだCEROレーティングでの配信が大多数、というのが本記事作成時点での実状です。

さいごに

  • 海外ソフトメーカーからすれば、わざわざCEROを取得せずにIARCで日本向けに配信できる事はかなりのメリットであり、IARCの利用範囲が広まることで海外ゲームの日本向けリリースの敷居が低くなっている点は大きな利点と言えそうです

  • もし今後CEROがIARCに加盟する様な事があれば、日本国内のみで配信されるタイトルに関してもレーティング取得手続きが非常に高速化&簡便化されることが期待できると思われます

  • CEROでは一つ一つを人の目で見て高い精度で審査されており、日本ゲーム市場においてはこの審査手法によって定められたレーティングが定着している現状があります。IARCが広まるにつれ、CEROとは異なる基準で審査されたゲームの表現について問題視する声が出てくる可能性も大いにあり、これは今後の動向を注視していきたいところです

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