先日からオランダの私立大学"AIHR Academy"のe-Learningの一つである”Strategic HR Metric”を受講し、修了証を手に入れたので、ざっくりAIHR Academyについてレビューしてみる。

[そもそも] People Analyticsとは?
経営課題を解決するために、組織で働く人のデータを収集して可視化・分析し、得られたインサイトを経営や個人の決定プロセスに生かすこと。
欧米から始まった考え方で、企業の生産性と成果を高める手法として日本でも注目が集まっているが、人の行動という複雑さや、組織ごとに異なる個別事情、経営課題と個人の行動が直接的に関係していない(間接的な関係である)などといった背景から、欧米諸国に比べ、日本の企業ではまだまだ浸透が進んでいない。
Qiitaのタグも"PeopleAnalytics"の投稿が1件(2019/7/7現在)というのが悲しい。
とはいえ、これは日本のPeople Analyticsが進んでいないという事情以外にも、従業員のデータがその会社にとってコンフィデンシャルであったり、個人情報に関わる為…という背景もあることとは思うが。
「当社の従業員のデータを分析してみた」なんてQiitaに投稿をしてみたら、下手すれば懲戒ものである。
日本におけるPeople Analyticsの学習環境
上記の背景もあり、インターネットでなんでも情報が手に入る時代であるが、こと "People Analytics" については日本における情報がまだまだ限られている。学習環境も同様。
2019年7月7日現在、Amazonで「ピープルアナリティクス」と検索すると検索結果は3件、"People Analytics"と検索すると検索結果は312件。中身は精査していないが、日本語と英語での学習環境は歴然である。
と、「日本語における学習環境」は脆弱であるが、このユビキタス社会、言語を問わなければ「日本における学習環境」も豊富である。
業務上の必要性、および個人的な興味もあり、1年ほど前から、これとかこれといった、洋書やe-learningを中心にPeople Analyticsをインプットしてきている。
ただ、書籍の一冊一冊や、e-Learning単品だと、どうしても「広く浅い」または「深く狭い」知識になりがちであり、「広く深く」体系が整理されたシリーズもののe-Learningを受講したく、適切なものを探していた。
People Analyticsのe-Learning
私が受講したAIHR Academyの他にも、MyHRfutureというe-Learningがあったり、米国人材マネジメント協会のSHRM(Society of Human Resource Management)にもPeople Analyticsのe-Learningがあったりする。
余談だが、MyHRfutureのブログは内容がすごい良い。記事そのもののクオリティも高いが、月1回の「今月のおすすめ記事」で、良記事をまとめて紹介してくれるのが助かる。
そのほかにもe-Learningはいくつかあるが、13のコースに200時間のe-Learning、統計やR、インテグリティ(誠実さ)までカバーする幅広い内容はAIHR Academyをおいて他にはなく、AIHR Academyのe-Learningを受講することとした。
※英語のリスニング力が低い私にとって、全編英語字幕と比較的ゆっくりな英語で話してくれること、スライド資料が全部ダウンロードできることもありがたかった。
AIHR AcademyのUI・UX
AIHR Academyを受講し始めたのは2019年6月19日と比較的最近であり、13コース200時間を全て修了してはいない。むしろ終わりが見えない
全てのコースを評価できるわけではないのだが、うち1つのコース"Strategic HR Metrics"を修了した上でのUI・UXなどについてレビューしてみたい。
購入〜初回ログイン
購入はもちろんクレジットカードも使え、日本からの購入になんの問題もない。ログインはFacebook IDと連携し、数分で購入とログインが完了。今回私は全部入りコースを購入したが、1つ1つのコースが個別で購入できるのも、目的が明確な人にとってはありがたいだろう。
購入後どこからも領収書がダウンロードできなかったので、サポートにメールで「ハイ、インボイスくれないか?」とGoogle翻訳文で送ったら、割と迅速に送ってくれた。サポートも悪くない。
購入後、PC上で初回ログインはブラウザから容易に開始できたのだが、スマートフォンからのログインが意外に難儀した。
"Mighty Network"というビジネスユースのコミュニティアプリをダウンロードし、PCからコードをSMSで送ることで初めてMidhty NetworkのAIHR Academyにアクセスできるという作りになっている。これがわからず、スマホアプリだけでどうにかログインしようとしていた。分かってしまえば簡単。
基本的なUI
Mighty Networkというコミュニティ上で動作しているためか、みんな大好きUdemyなどe-Learning専用のWebアプリと比べると少々やりづらい。
前回受講したコースの続きからやりたいという時に、いちいち「コース一覧」→「該当コース選択」→「前回の続きのステップを選択」→「動画閲覧」という流れになっているためだ。
この辺、Udemyはワンクリックで前回の続きから始められるUIは素晴らしいと思う。
e-Learningの動画閲覧もUdemyなどと比べると少々操作性に難あり。聞き逃したときに10秒戻る、進むなどをワンクリックで行いたいのだが、シークバーでしか行えず、左右キーでは1秒戻る、1秒進になってしまう。1秒だけ戻ってどうしろというのか。
Udemyで言う所の「しおりとコメント」機能がないのも残念だが、スライドが全部ダウンロードできるので、これはまあ問題ないかも。
コースの内容
そもそも"Strategic HR Metrics"の内容を13コース中最初に受講したのは、紹介ページに"Data-driven HR starts by defining and implementing the right HR metrics."と、データ・ドリブンHRを始めることは正しいHRの指標を定めることである…という内容に私も共感しており、スタートはまず指標を設定することからと考えたため。
そもそもなぜHR(および経営)に指標が必要なのか、あるべき指標の定め方、ステークホルダーを巻き込み、分析し、課題の根本的な原因を突き止めていくのかといった内容が非常に腹落ちのする内容としてまとめられていた。
コースの修了
"Strategic HR Metrics"は、20分ほどの動画を20本ほど閲覧することで修了となる。
テストはあるのだが、テストに合格していなくても進める。CourseraのPeople Analyticsコースとかはまあまあ難しい選択式のテストを3回以内に合格しないと修了できなくなるなど、ガチで落としにきておりヒヤヒヤしたこともあるので、少々ヌルい。
テストの先に進んだら、"Congratulation!" と、講師たちがクラッカー鳴らして卒業パーティをやってくれる動画が流された。くだらないがちょっと嬉しい。(笑)
修了証が発行されるのはUdemyやCoursera同様だが、Web上で公開されるのではなく、メールで送られてくるので、Linkedinなどに修了証ごとUPすることができない…これ、なんとかするやり方あるのだろうか。
次のコース
"Strategic HR Metrics"を修了できたわけだが、次に何を学ぶべきか…。
最近の興味でいうと"Natural Language Processing"、前から勉強したいと思ってなかなかできていないのは"Data Science in R"、ビジネス的な観点で見ると"People Analytics Strategy"といったところ。
コースが13コースと多彩なため、次に何をやるべきかを悩むことができるのも、AIHR Academyの良いところである。
e-Learningとしてのトップベンダーではないため、UdemyやCourseraといったe-Learningの大御所にUIやUXで劣る部分はあるのだが、"People Analytics"という専門領域に特化した上での内容は、AIHR Academyのクオリティは高いものがあるように思える。
学びをまとめるためにも、また次のコースを修了した頃に、続きの記事でも書いてみようと思う。多分