この記事は Advent Calendar 2020 - Qiita の16日目の記事です。
はじめまして。株式会社フォトシンスでメカ開発・設計を担当しております y_nagnag - Qiita と申します。
2020年10月からこの会社で働き始めました。
Advent Calendar書いてみるか!と息巻いてみたものの「うーん、、何書こう?」と頓挫して早数週間。。。
結果、「せっかく記事にするのであれば自分のための備忘録的なものにしよう!」と考え、メカ設計に従事する上で私なりに重要だと考えていることを書くことにしました。
メカ設計って?
メカ設計って何やってるかよく分からないと言われることがありますが、例えるならば「自分でピースをデザインしてパズルを完成させるような行為」だと思っています。
製品の外観デザインや仕様からパズルの完成像は決まってきますが、それを実現するための部品であるピースは「無」の状態から始まります。そのため、パズルを完成させるためにどんな部品が必要か/どんな部品構成をとるべきかを、性能、強度、耐久性、量産性、価格、etc.から多角的な視点で捉えて考え、1つ1つピースを作っていかないといけません。高次元なパズルゲームだと思っていただけると、少しは興味が湧くかもしれません。
この高次元なパズルゲームを解くためには「物理現象を捉える/知る」「思考実験をする」「多角的に考え最適解を求める」ことが重要だと私は考えています。以降に述べていきたいと思います。
物理現象を捉える/知る
ハードウェアの部分を設計している以上は物理現象が常に付きまとってきます。そのため、必要最低限な知識として物理現象を知っておく必要があります。ここでいう物理現象とは落下すると衝撃を受ける、熱は上に逃げていく、光は屈折したり反射したりする、といった物理学の話です。ここが分かっていないとメカの設計はできません。
実際に部品を設計すると試作して部品の出来栄えや機能の確認をするのですが、試験していく中で何かしら問題が起きることがあります。例えば、30cm落下させた時にプラスチック部品にクラックが入ってしまったとか。ここで、問題の原因を特定をしなくてはならないのですが、現物/現場/現象の3つを正確に捉える必要があります(探偵みたいですね)。理由は単純で、現物/現場/現象の3つが揃うことで初めて問題が生じるからです。
今回の例えで話すと、
現物:プラスチック部品
現場:30cm落下させる
現象:???
結果:クラックが発生
となります。
ここでは現象に当てはまるヒントは現場にありそうですね。大体の人は現場の「落下」から、現象は「衝撃である」と結びつけます。
このように3つを正しく結びつけることができれば原因の特定につながり問題解決の糸口になります。また、問題となった物理現象は表面的にではなく、本質的な部分で捉え上位概念化して知識として頭の引き出しにしまっておきましょう。そうすることで似たような問題が起きたときに対処しやすくなり、別の製品や部品を設計する時に失敗しづらくなります。
思考実験をする
物理現象が伴ってくる以上は現物で確認する必要があります。メカ設計者の中には「とりあえず試作しよう!」ってタイプの人がいると思いますが、私はこの考えに割と否定的です。なぜなら、大抵このパターンは捉えるべき物理現象をあらかじめ把握できておらず無意味な試作になる場合が多いからです。そのため、試作をする前には質の高い思考実験を必ずするべきだと考えています。思考実験とはなんぞやって話になりますが、頭の中で実験場を展開しイメージ実験をすることです。
思考実験をする際のポイントとしては「深い思考を短時間に」です。
深い思考は前項で述べた上位概念化できている物理現象の知識量によって質が決まってくると思います。なぜなら、想像上で展開できる物理現象の引き出しが多いほど現実に則してくるからです。自身の思考実験が現実と一致するレベルまでできていると質が高いと言えるでしょう。
時間をかけてはいけない理由は一つの現象にのめり込んでしまい視野狭窄に陥りやすいからです。メカ設計は高次元のパズルゲームであるため、1次元だけにフォーカスしていては成り立たちません。常に多角的に捉えるためのポイントとして、「あえて時間をかけない」という方が正しいかもしれません。
思考実験を経て「確証が得られる」or「これ以上は分からない」レベルになった時点で実際のシミュレーションもしくは試作に踏み切って確認するようにしましょう。これによって、無駄な試作にかける時間とお金を節約できますし、何よりも確認しなくてはならないことがハッキリするので、効率的かつ効果的に試作を実施することができると思います。
また、試作確認の際に想定外の問題が起きた場合は前項で述べたことを経て知識のアップデートをしましょう。そうすることで、次回からの思考実験の質が上がっていくと思いますし、品質トラブルを起こしにくい設計ができるようなってくると思います。
多角的に考え最適解を求める
メカ設計は高次元なパズルゲームだと述べさせていただきました。高次元である以上、多角的に捉えて思考しなくてはなりません。この時に、絶対にやってはいけないという訳ではないんですが、設計した部品に対して「正解/間違い」の2値で考えてはいけないと私は思っています。理由は自由度の高さ故に唯一解は基本的に出てこないからです。
1つの次元だけで考えれば「正解/間違い」の2値で考えて良いのかもしれません。例えば、強度という面だけで考えれば十分に満足しているので正解ですと言えるかもしれません。
しかし実際には性能、耐久性、価格、など多角的に捉えていくと全てにおいて正解という訳ではないことに気がつきます。1つ1つの次元で良し悪しを持ったグラデーションのある解になっている場合が多いです。
そのため、出てきたグラデーションのある解の良し悪しは、製品が晒される環境において最適であるか否かで判断するべきだと私は考えています。
「正解を叩き出す」というよりは「あらゆる次元で通用する最適解にもっていく」という考え方で臨んでいる方が常に多角的に捉えられるので問題を起こしにくいです。上述した思考実験にも通ずる話になります。
製品が晒される環境は規格として握られてる場合が多いですが、できればお客様が使用されている現場に赴いて確認し、製品が晒される環境がどういった状況なのかを自身の中でしっかり握っておくことが大事です。
またもう一つポイントとして、多角的に考える際に「製品の未来像」や「市場問題が起きた時のバックアッププラン」も含めて考えれるとベストです。「今の流れから察するにこの製品の未来はこうかなぁ」「製品規格上満足しているけど、こんな問題起きないだろうか」という観点も含めて考えておくと、市場から出てきた要望やトラブルに対して迅速に対応できる仕掛けをあらかじめ製品に組み込んでおくことができます。
まとめ
つらつらと長く書いてしまいましたが、まとめるとこんな感じです。
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物理現象が伴ってくるので現物/現場/現象を真摯に捉えることが非常に重要。生じている物理現象は上位概念化し知識にして頭の引き出しにしまう。
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無意味な試作よりも思考実験を。そして深い思考を短時間で。時間をかけるほど視野狭窄に陥りがち。メカ設計における深い思考は、上位概念化できている物理現象の知識量で質が決まる。確証が得られる or これ以上は分からないレベルになった時点でシミュレーションもしくは試作に踏み切って確認する。
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正解/間違いの2値で解を求めるのではなく、多角的に考えて最適解を導き出すよう努める。多角の中には製品の未来像や市場問題が起きた際のバックアッププランも見据えて考えられるとベスト。
「あれ?3D CADの使い方は?図面の書き方は?」と思われた方もいるかと思いますが、実際にCADや図面の書き方は設計思想を表現するツールでしか無いと考えています(それ故に重要ではあるのですが今回は割愛)。
メカ設計のベースとなる部分は上記で述べたようなところになってくると考えており、私自身が実践できている/できていないが確認できるように記事としてしたためさせていただきました。
私の記事が少しでも皆さんのお役に立てれれば幸いです。
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