レポーティングツールの導入を検討する際に、名前からツールの特徴をわかりそうなものは少数ではありません。FastReportも「作成の速さ」がセルスポイントと思われがちです。FastReportはどのようにレポート開発を効率化するのでしょうか?本記事ではFastReportの特徴、価格、機能を、名前から見分けづらいと言われたFineReportと比較しながら紹介します。
FastReportとは?
FastReportは、RAD開発の仕組みを持ち、フォーム同様の手法によって帳票レイアウトを設計するレポーティングツールです。Delphiで使用可能な他のツールと比べて、バーコード印刷、PDF出力、Webアプリケーションでの利用が可能です。ビジネスにおけるレポート作成の時間短縮や配布コストの削減に役立ちます。
欧米市場にはFastReport. VCL、FastReport.NET、/ActiveX、FatReport.MONO、FastCube 2 betaといったラインナップがありますが、日本語の公式サイトでFastReport. VCLとFastReport.NETのみが載せています。
FastReportと見分けづらいFineReportは、Excel感覚で帳票やレポートを作成し、簡単にWeb上で配布・操作・送信し、PDF、Word、画像などへ出力できるBIツールです。ほぼノーコーディングでレポートを開発できる上に、Windows、Linux、IOSなど幅広い環境に対応するので、世界1万社以上の企業に愛用されます。
FastReportの価格
最新バージョンであるFastReport VCL6はユーザー数によって、2つのプランがあります。
①シングルライセンス(1ユーザー用)/¥ 69,000 (税抜)
②チームライセンス (4ユーザー用)/¥ 220,000 (税抜)
FastReport.NETは12のコースがあります。具体的な料金プランは下図の通り:
FastReport VCLとFastReport.NETはいずれも30日間の評価版を提供しています。
FastReport VCL評価版
FastReport.NET評価版
FineReportのHPで、最新のバージョンV10.0の体験版を提供し、2ユーザまで同時利用できます。製品版は機能、ユーザ数、サービス、カスタム開発要請などにより課金します。
FineReportV10.0 無料体験版
名前から見れば、FastReportは"fast"=スピードを強みとしていることに対し、FineReportは"fine"=機能におけるりっぱさの追求にこだわっています。でも、スピード以外にFastReportは選択される理由はなんでしょう?以下では、名前から読み取れない6つの特徴をFastReportとFineReportの比較を通して詳しく説明します。
FastReportとFineReportの違い① データベース
FastReportはADO.NETのデータソースから、ADO、BDE、DBXなどに接続できます。それにレポートで使用できるいくつかの固有のデータベースコンポーネントもあり、どのコンポーネントを使用するかは、インストール時の選択によって決まります。しかし、1つのレポートは1つのデータソースからのみデータを取得できますが、同一のレポートに複数のデータソースを利用するにはFastReportが向きません。
FineReportはJDBC、JNDIの方式でファイル、NoSQLデータベース(MongoDB)、多次元データベース(SSAS、BW)、ストアドプロシージャ、ビッグデータ(Hadoop Hive、AmazonRedshift)などに簡単に接続できます。また、データベースやデータテーブルを越えて、異なる業務システムのデータを一枚のレポートに表示できます。
FastReportとFineReportの違い② デザイナー画面
FastReportのデザイナーにはメニュー・バー、 オブジェクト・ツール バー、レポート・ページのタブなどの機能があります、それにデザインオプションのところに、望ましい単位とグリッドの間隔を設定することができます。しかし、FastReportのデザイナーはパネル式であるため、クロス集計表やタイトルが複雑なレポートには向いていません。開発の時に高度なコーディングが必要とされます。
FineReportはExcelに近いUIを持ち、ドラッグアンドドロップのみでデータセットとセルを紐づけ、イメージした帳票のまま設計できます。既存Excelフォームの数式もフォーマットもそのままインポートし、レポートを開発します。仕様変更時にコーディングが不要で、Excel感覚で修正すればいいです。行列を挿入・削除してもセルの数式、データセットとの関連が自動調整します。
それに、SQLを作成するためのGUIを備えるので、開発者はコーティングレスにSQL文を書くことができます。
FastReportとFineReportの違い③ データ入力
データ入力は、エンドユーザがフォームに記入した内容をデータベースに登録するという機能です。スマフォンやペーパレス化の普及により、業務現場においてこの機能が求められます。
残念ながらFastReportはこの機能を持っていません。一方、データ収集はFineReportの得意機能です。
FineReportはデータ収集と分析が同時に行えます。設計したレポートにデータを入力すれば、対象データベースにはリアルタイムに更新されます。それに、大量のExcelデータをデータベースに一括取り込むことができるので、過去のExcelデータを活用できるようになります。
FastReportとFineReportの違い④ 可視化グラフ
FastReportにはグラフごとに、1 つまたは複数の系列を持つことが特徴です。しかし提供するグラフは折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフ、帯グラフなど基本的のものにとどまり、データ可視化のインパクトはいまいちです。
FineReportは市場のニーズに合わせ、70種類以上のhtmlグラフを独自に開発しました。グラフと地図を利用し、データを可視化するキレイなダッシュボードを簡単に作成できます。また、グラフとグラフ、グラフと表の連動もノーコーディングで設定できます。
FastReportとFineReportの違い⑤ モバイル対応
出張など会社にいない場合の業務モバイル化、忙しい日常に追われる場合の仕事断片化のニーズが顕著化しつつある今、レポーティングツールのモバイル対応性も重要となっています。残念ながら、FastReportはモバイルデバイスにおけるレポートの利用をサポートしていません。
FineReportはモバイル特有のインターフェースやネイティブアプリを提供し、スマートフォンから簡単に操作や書き込みができます。ネットワークに接続していない状態でもレポートやダッシュボードを閲覧できます。それに、ドリル連動、パラメートクエリにより検索したい情報をピンポイントで入手し、PC端末に比べても見劣りしないリモートワークを体験できます。
FastReportとFineReportの違い⑥ 学習コスト
FastReportは高度なプログラミング技術が必要とされるので、初心者にとって短時間で身につけるのが困難です。FastReport. VCLの日本語版のユーザーマニュアルが提供されています。しかし、日本で学習セミナーやコミュニティなどをほとんど行わないため、ユーザー同士における交流が制限されます。
FineReportは使えやすさに知られています。ExcelライクのUIにて、ほぼノーコーディングでデータマッピングし、見事な業務レポートを開発可能です。それに、日本語のドキュメントのほか、チュートリアルビデオも無料提供しています。定期的なセミナーで課題を対面的に解決し、学習コストを大幅に削減できます。
まとめ
本記事にはFastReportとFineReportの簡単紹介から、機能面における違いまで述べました。スピードを強調するFastReportと質にこだわるFineReportは、同じレポーティングツールとして、日々仕事の効率を向上させることに役立ちます。
しかし、FastReportは開発者に対する高い技術力を要求すると同時に、多彩な視覚効果や業務のモバイル化などの機能面において劣っています。それに比べ、FineReportはほぼコーディングレスで開発できると同時に、ダッシュボード、データ可視化、モバイル対応などの面に優れています。
ツールの導入は会社にとって重要な意思決定であり、是非総合的に検討した上にニーズに合う製品を選びましょう。