Webディレクターにおける設計について勉強中なのでまとめてみました。
1. 設計フェーズで作成するドキュメント
Webサイトやアプリを制作するうえで、設計フェーズではさまざまなドキュメントを作成します。具体的には以下のようなものがあります。
サイトマップ:サイト全体の構成やページ同士の関連を俯瞰できる図。クライアントやチームメンバーとの共通認識のために作成します。
ワイヤーフレーム:ページのレイアウトやコンテンツ配置をシンプルに示す設計図。デザイナーやエンジニアとのすり合わせに用います。
要件定義書・仕様書:機能要件や非機能要件、UI/UX要件などを定義した文書。開発やテストの指針となります。
ガントチャート:スケジュールを管理するためのツール。タスクを時系列で整理し、担当者や期間を明確化します。
これらのドキュメントを整備することで、プロジェクト全体の方向性や具体的な内容をチーム全員が把握しやすくなります。
2. 設計フェーズにおけるワークフロー
設計フェーズはプロジェクト全体の舵取りをする重要な段階です。大まかな流れとしては、以下のようになります。
要件の再確認・ブラッシュアップ
企画段階で固めた要件を整理し、実際に技術的に実装可能か、工数は妥当かを検討します。
情報設計・サイトマップ作成
コンテンツの分類や優先度を考慮しながら、サイト全体の構造を決めます。
ワイヤーフレーム作成
ユーザー動線やUI要素を配置し、ページごとのレイアウトを検証します。
デザインガイドライン策定
配色やフォント、ボタンの形状など、全体のデザインルールを決めます。
開発要件の整理・見積もり
サーバーサイドの要件や外部サービス連携など、技術的要件をまとめ、必要な工数を試算します。
このワークフローを丁寧に踏むことで、後続のデザインフェーズや開発フェーズがスムーズに進みます。
3. メンバーの意識を高めるチーム作り
Webディレクターは、チーム全体を牽引する立場でもあります。メンバー同士の意識を高め、プロジェクトに積極的に取り組んでもらうためには、以下が大切です。
役割と責任範囲の明確化:各メンバーがどの部分を担当し、どこまで責任を持つかを共有します。
コミュニケーションの仕組みづくり:定例ミーティングやチャットツールを活用し、進捗状況や課題を可視化します。
目標・ビジョンの共有:なぜこのプロジェクトが重要で、どんな価値を生み出すのかを共有し、モチベーションを高めます。
フィードバック文化の醸成:小さな改善点でも積極的に意見を出し合い、より良いプロダクトを目指す環境を作ります。
4. タスクの構造化とスケジュール
プロジェクトを成功させるためには、タスクの洗い出しとスケジュール管理が欠かせません。
タスクの分割と優先度付け:大きな作業を小さなタスクに分解し、開発の順番や優先度を明確化します。
ガントチャートやタスク管理ツールの活用:ガントチャートやTrello、Asanaなどを使うことで、可視化しながら進捗管理が可能になります。
バッファの設定:トラブルや仕様変更などのリスクに備え、予備期間を確保しておきます。
定期的な進捗確認:スケジュールの遅れやタスク間の依存関係を早期に把握し、対処するためのミーティングを設定します。
5. フロー図を作成する
ユーザーがサイトやアプリを利用する際の動線(フロー)を整理することは、設計において重要なステップです。
ユーザーフロー図:ユーザーがサイトに訪れてから、最終的なゴール(商品購入、資料請求など)に至るまでの流れを時系列で示します。
シナリオ設計:具体的なペルソナを想定し、どのようなシチュエーションやデバイスで利用されるかを考慮します。
抜け漏れの検出:フロー図を作ることで、画面遷移や必要なページの不足などが発見しやすくなります。
6. ワイヤーフレームワークの作成準備
ワイヤーフレームを作成する前に、以下の準備を行います。
サイト構造やフロー図の確認:前段階で作成したサイトマップやユーザーフローを再確認し、ページの役割や機能を整理。
使用ツールの選定:ツールによってはチームコラボレーション機能やコメント機能が充実しているため、プロジェクトの規模やメンバーに合わせて選択します。例:Figma、Sketch、Adobe XDなど。
デザインガイドラインの下準備:カラーパレットやタイポグラフィ、UIコンポーネントの大まかな方向性を固めておくとワイヤーフレーム作成がスムーズになります。
7. ワイヤーフレームワークの作成方法
ワイヤーフレームはデザインの骨格を示す設計図です。以下のポイントを押さえながら作成します。
レイアウトのバランス:ヘッダー、メインコンテンツ、サイドバー、フッターなど、基本構造を考慮しながら配置。
優先度の視覚化:ユーザーにとって重要な情報を上部や目立つ位置に配置し、視線誘導を意識します。
コンテンツの配置イメージ:画像やテキスト、ボタンなど、実際に入るコンテンツの分量や種類を想定して設計します。
コメントや注釈の付与:開発メンバーやデザイナーが意図を理解しやすいよう、注釈をつけておくと協業がスムーズになります。
8. 詳細要素の作成
ワイヤーフレームをもとに、次は各要素をさらに掘り下げて設計します。
コンポーネント設計:ボタン、フォーム、カードレイアウトなど、繰り返し使われるUIパーツを定義し、再利用性を高めます。
ユーザーインタラクション:ホバー時の動き、アニメーション、エラーメッセージなど、具体的なユーザーアクションに対する挙動を検討します。
マイクロコピーの検討:ボタンラベルやエラー文言など、ちょっとしたテキストはユーザーの理解度や操作性に大きく影響します。
9. コピーライティングの方法
Webサイトではデザインだけでなく、テキスト表現も重要な要素です。コピーライティングのポイントを押さえて効果的なメッセージを伝えましょう。
ターゲットを意識する:ユーザー層に合った言葉遣いやトーンを選びます。
メリットやベネフィットの強調:商品やサービスの魅力を具体的に伝え、ユーザーが得られる価値を明確に示します。
読みやすい文章構成:見出しや段落、箇条書きを活用し、流し読みしやすい構成を心がけます。
行動喚起:問い合わせや購入ボタンなど、ユーザーが次に取るべき行動をわかりやすく提示します。
10. プロトタイピングツールでの確認と改善
ワイヤーフレームや詳細要素が固まったら、プロトタイピングツールを使って実際に操作感を試してみます。
インタラクションの確認:クリックやタップに対する画面遷移やアニメーションの流れを実際に体験します。
ユーザビリティテスト:社内外のメンバーやユーザーに実際に触れてもらい、使いづらさや改善点を抽出します。
迅速なフィードバックサイクル:プロトタイプで早期に課題を発見し、修正を繰り返すことで、完成度を高めます。
11. デザインガイドラインの策定
サイト全体を通じてブレのないデザインを提供するためには、デザインガイドラインを策定し、チームで共有しておくと便利です。
ブランドカラーやロゴの使用ルール:コーポレートサイトやブランドサイトの場合は特に統一感が求められます。
フォントやタイポグラフィの設定:見出し、本文、キャプションなどテキストのスタイルを定義し、可読性を担保します。
UIコンポーネントのスタイル:ボタンやフォーム、ナビゲーションメニューなどのスタイルを決め、使い回しを容易にします。
画像やグラフィックの基準:写真やイラストの雰囲気、解像度、ファイル形式などを統一し、サイト全体のトーン&マナーを維持します。
12. SNSのシェア機能の考え方
SNSでコンテンツを拡散してもらうことは、多くのトラフィックを呼び込む手段の一つです。以下のポイントを検討しましょう。
シェアボタンの配置:記事ページや商品ページなど、ユーザーがシェアしたくなるタイミングで目立つ位置に設置します。
OGP設定:タイトル、説明文、画像のメタ情報を設定し、SNS上で魅力的に表示されるようにします。
シェア後の導線:シェアが行われた後も、ユーザーがほかのコンテンツにスムーズにアクセスできるよう設計します。
13. システム設計
Webディレクターはデザインやコンテンツだけでなく、システム面の要件を理解し、エンジニアと協力して設計を進める必要があります。
アーキテクチャ選定:サーバーサイドの開発言語、フレームワーク、ホスティング環境を検討。
DB設計:ユーザー情報や商品情報など、データの種類やテーブル構成を整理。
API連携:外部サービスや社内システムとの連携が必要な場合は、APIの仕様やセキュリティ面を確認。
拡張性や保守性の検討:将来的に機能追加やユーザー数の増加が想定される場合は、負荷分散やスケーラビリティの確保が重要です。
14. SEO設計
サイトの集客や露出を高めるには、検索エンジン最適化(SEO)が欠かせません。
キーワード調査:ターゲットユーザーが検索するであろうキーワードを洗い出し、ページごとに最適化。
メタタグの設定:タイトルタグやメタディスクリプション、見出しタグ(H1、H2など)の最適化。
内部リンク構造の最適化:関連コンテンツ同士をリンクで結び、クローラビリティとユーザビリティを向上させます。
ページ速度の改善:画像やスクリプトの最適化、キャッシュの活用などで表示速度を上げ、ユーザー体験とSEO評価を向上。
16. CMSの選定ポイント
コンテンツを柔軟に運用するために、CMS(Content Management System)の導入が検討されます。選定時のポイントは次の通りです。
運用者目線の使いやすさ:管理画面の操作性やUIがわかりやすいか。
拡張性:プラグインや拡張機能が豊富か、カスタマイズが容易か。
セキュリティ:脆弱性対策が適切に行われているか、アップデートが活発か。
コスト:ライセンス費やホスティング費用など、運用コストも含めて検討。
17. ECカート
ECサイトを構築する際には、専用のECカートシステムやプラットフォームを利用するケースが多いです。
Shopify:海外発のサービスで、日本でも近年人気。テンプレートやアプリで機能拡張がしやすい。
EC-CUBE:国産のオープンソースで、自由度が高い。サーバーにインストールして使用する。
自社開発:既存のプラットフォームで実現しにくい特殊要件がある場合には、フルスクラッチ開発を検討。
18. MAツール
マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入することで、ユーザーの行動データをもとにした施策が可能になります。
リード管理:サイト訪問や資料請求など、潜在顧客の行動を一元管理し、スコアリングを実施。
メール配信やシナリオ設計:ユーザーの属性や行動に合わせて自動でメールを配信し、商品購入や問い合わせにつなげる。
分析レポート:施策の成果を可視化してPDCAを回し、継続的に改善を図る。
19. クラウドサービスや外部サービスとの連携
Webサイトやアプリケーションを運用するうえで、クラウドサービスや外部APIとの連携はもはや一般的です。
ホスティング環境のクラウド化:AWS、GCP、Azureなどのクラウドサービスを利用し、柔軟なリソース配分が可能に。
外部APIの利用:SNSログインや地図API、決済APIなどを活用することで、開発コストを下げながら機能を拡張。
サーバーレスアーキテクチャ:Lambdaなどのサーバーレスサービスを利用し、イベントドリブンな処理が行える。
20. 開発環境と本番環境の構築
開発時と本番運用時で環境を分けることで、リリースやメンテナンスがスムーズになります。
開発環境(ローカル・ステージング):機能追加やデバッグを行う環境。ステージング環境で本番に近い状態を再現し、不具合を発見。
本番環境:実際にユーザーがアクセスする環境。高いセキュリティや信頼性、パフォーマンスが求められる。
デプロイフローの整備:CI/CDツールを使い、コードレビューやテストを自動化して安定したリリースを行う。
21. Webサイトにおけるテスト設計
実装が完了したら、テスト設計を行い、品質を担保します。
機能テスト:仕様通りに動作しているか、各ページ・各機能を網羅的に確認。
ブラウザテスト・デバイステスト:主要ブラウザ(Chrome、Safari、Firefox、Edgeなど)やスマホ・タブレットでの表示・操作性を確認。
パフォーマンステスト:表示速度や負荷試験を行い、想定ユーザー数に耐えられるかを検証。
セキュリティテスト:脆弱性診断ツールや専門家のアドバイスを活用し、不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減。
まとめ
Webディレクターとしての設計業務は、多岐にわたる要素を俯瞰しながらプロジェクトを進行させる総合力が求められます。サイトマップやワイヤーフレーム、フロー図などを駆使して情報設計を行い、デザインガイドラインやシステム設計、SEO対策などの技術的要件にも目を配る必要があります。また、チームビルディングやスケジュール管理、テスト設計などマネジメント面も重要です。
これらの工程を一通り押さえることで、ユーザーにとって使いやすく、クライアントのビジネスゴールを達成できるWebサイトやアプリを生み出すことが可能になります。ぜひ本記事を参考に、自社プロジェクトの設計プロセスを見直してみてください。