日々、AIと楽しく、時に激しく意見をぶつけ合っているY.Ksmyです。
SESの現場で働くインフラSE、特に経験の浅い若手から、「今の現場はスキルが身につかない」「正当に評価されていない」「やりたい仕事が、いつまで経っても回ってこない」などの不満や悩みを聞くことはないでしょうか。
その不満の矛先を、環境や会社、上司といった「自分以外の誰か」に向けている限り、状況は決して良くなりません。他責は楽ですが、あなたから成長の機会と変化のチャンスを奪います。
くすぶる現状を「誰か」のせいにするのは終わりにして、「自責思考」で現状を打ち破りましょう。自らの手で評価とキャリアを掴み取るための、思考法と具体的な考え方を一緒に考えて見ませんか。
『評論家』ではなく『当事者』であろう
他責思考
「この現場の運用、手順書も古くて非効率だ」「あの設計はイケてない」と、まるで第三者のように問題を指摘・批評するだけで、自らは行動しない。
自責思考
「この非効率な運用を、自分ならどう改善できるか?」と問題を自分事として捉え、解決のために具体的なアクションを起こす。
現場の問題点に気づけるのは、あなたに観察力がある証拠です。
しかし、それをただの不満や愚痴で終わらせてしまえば、あなたはただの「評論家」です。現場が求めているのは、評論家ではなく、問題を解決してくれる「当事者」です。評価されるエンジニアは、課題を発見した際に「これはチャンスだ」と考え、行動に移します。あなたが、もし一緒に仕事をするとしたら、どちらのタイプの人と仕事をしたいと思うかで、自然と答えは出てくるでしょう。
『作業者』ではなく『設計者』であろう
他責思考
「指示が曖昧で動けない」「手順書に書いてある通りにやっただけなので、なぜ動かないか分かりません」と、思考停止に陥る。
自責思考
「この作業の”目的”は何か?」を常に自問し、指示の意図を汲み取り、より良い方法を模索・提案する。
現場では、言われたことを言われた通りにこなすだけの「作業者」は求めていません。
あなたの価値は「なぜ、このサーバのメモリは32GBでなければいけないのか?」「なぜ、このネットワークセグメントは他のセグメントと分離されているのか?」を、思考する「設計者」の視点を持った時に初めて生まれます。詳細設計書に書かれた一つひとつのパラメータの裏には、必ず設計思想や目的が存在します。
それを理解しようと努めることが「設計者」にステップアップする第一歩です。この思考様式は、あなたの仕事の質を劇的に向上させます。
『その場しのぎ』ではなく『再発防止』を考え抜こう
他責思考
障害が発生すると、「またか」「運が悪かった」と現象に一喜一憂し、とりあえずの再起動などで復旧させると満足してしまう。
自責思考
障害は「起きるべくして起きた」と考え、「なぜこの障害は発生したのか?自分の責任範囲で、二度と起こさないための仕組みは作れないか?」と根本原因を探求する。
障害対応は、インフラエンジニアの腕の見せ所です。
そして、本当の価値は障害を復旧させることではなく、再発を防止する恒久対策を提示・実装することにあります。
その場しのぎの対応は、必ず同じ障害を繰り返します。それは、チームの時間を奪い、サービスの信頼性を損なう、最も避けなければならない事態です。自責の念を持つエンジニアは、現象の裏にある本質的な原因を執拗に追いかけます。
この思考プロセスを実践し、その結果をチームに還元することが重要です。障害対応をしたら、たとえ小さなものでも、A4用紙一枚で良いので報告書を作成する癖をつけましょう。そうすることで再発防止となり、あなたの功績は高く評価されるでしょう。
『自分だけ』ではなく『チームの資産』を残そう
他責思考
「誰もドキュメントを更新しないから、自分もやらない」「知っているのは自分だけだから、何かあれば聞いてもらえる」と、知識の属人化を放置する。
自責思考
「自分がチームの最初の貢献者になる」と決め、自分の得た知識や経験を、チーム全員が利用できる「資産」として残すことに責任を持つ。
これは、自分が明日、プロジェクトを離れても後任者が困らないよう、いつでも引き継げる状態を維持する責任感とも言えます。
SESの現場は、人の入れ替わりが日常茶飯事のため、知識や情報が特定の個人に集中してしまう「属人化」は、チームにとって最大のリスクです。
「あの件は、今はもういない〇〇さんしか知らない…」という状況を、他責思考のエンジニアは「誰もやらないから」と、その負の連鎖の一部になりますが、自責思考のエンジニアは、その連鎖を断ち切るために行動します。
その行動は「自分が残したドキュメントで、未来の誰かが助かるかもしれない」と考えるからと言えるでしょう。
価値のあるドキュメントとは、「なぜ」が書かれているドキュメントです。
悪い例
firewalld を stop して disable する、という手順だけが書かれている。
良い例
firewalld を stop して disable する、という手順に加え、「理由:本番環境では上段のFirewallで制御しており、OSレベルのFirewallはポリシー管理を複雑化させるため無効化する」という設計背景まで書かれている。
このようなドキュメントは、単なる作業記録ではなく、チームの設計思想を継承する「資産」となります。
関連する資料へのリンクをまとめ、情報のありかを一元化しておくことで、引き継ぎのコストを限りなくゼロに近づけることができます。
『会社頼み』ではなく『自己投資』を続けよう
他責思考
「会社が研修をしてくれないからスキルが上がらない」「今の現場ではクラウドを扱わないから、勉強しても意味がない」と、学習しない理由を会社のせいにする。
自責思考
「自分の市場価値を高める責任は、最終的に自分自身にある」と理解し、会社の業務とは関係なく、市場で求められる技術へ自己投資を続ける。
あなたのエンジニアとしてのキャリアは、会社や今の現場が保証してくれるものではありません。
技術の陳腐化が激しいIT業界において、現状維持は緩やかな後退を意味します。自責思考のエンジニアは、自身のキャリアの舵を他人に委ねません。今の仕事で得られる経験に感謝しつつも、それだけでは足りないことを理解しています。そして、自分の未来のために、業務時間外で学習への投資を惜しみません。
こうして、環境や状況を常に成長の糧にできる人が、高い評価を得ていくのがSESと言えるでしょう。
まとめ!あなたの価値を決めるのは、環境ではなく、あなた自身の「選択」だ
ここまで見てきた5つのマインドセットに共通するものは「他責から自責へ」という思考の転換です。
- 問題を評論するのではなく、当事者として解決に動く
- 言われた通りに作業するのではなく、設計者として目的を考える
- その場しのぎで満足せず、再発防止の仕組みを考える
- 知識を独占せず、チームの資産として残す
- 会社に依存せず、自己投資で未来を切り拓く
他責は楽です。しかし、そこからは不満と停滞しか生まれません。自責は、時に苦しく、覚悟が必要です。
しかし、その先には、エンジニアとしての確かな成長、周囲からの揺ぎない信頼、そして自らの手で「やりたい仕事」を引き寄せる未来が待っています。
あなたの価値を決めるのは、配属された現場や会社ではありません。目の前の課題に対して、あなたがどのようなマインドセットで向き合うか、その日々の「選択」です。
明日から、現場で感じている不満や課題を一つだけ選んで「この状況を少しでも良くするために、今の自分にできることはないか?」と自問してみてください。
その小さな選択が、あなたのエンジニア人生の進路を大きく変え、現場での高い評価を手に入れる、最も確実な第一歩となるはずです。