最強のスクラムチームを作る方法:安全感の構築編
1. イントロダクション
この記事では、ダニエル・コイルの「最強チームを作る方法」をベースに、私が最強のスクラムチームを作るために実践(試行錯誤)していることを記載します。
「最強チームを作る方法」はチームのパフォーマンスを最大化するための貴重な洞察を提供してくれます。今回は、その中でも「安全感の構築」にフォーカスしてみました。安全感は、チームメンバーが安心して意見を言える環境を作るための基盤です。
2. 安全感の構築の重要性
安全感は、チームのパフォーマンスに直接影響を与える重要な要素です。ダニエル・コイルの「最強チームを作る方法」では、たくさんの事例や実験が記載されていますが、ここでは、腐ったリンゴの実験とコールセンターの実験を紹介します。
腐ったリンゴの実験
この実験では、チームに意図的に「腐ったリンゴ」を配置しました。ここでの「腐ったリンゴ」とは、性格が悪い人、周りを暗くする人、怠け者など、チームの雰囲気やパフォーマンスを悪化させる人物を指します。この「腐ったリンゴ」の存在によって、多くのチームでパフォーマンスが大幅に低下することが確認されました。
しかし、「中和する人」がいるチームではパフォーマンスが低下しませんでした。この「中和する人」は、他のメンバーが「腐ったリンゴ」のネガティブな影響を受けないように働きかける人物です。彼らは以下のような方法でチームの安全感を保ちました:
- ポジティブな言葉を使い、チームの雰囲気を明るく保ちました
- 積極的に問題解決に取り組み、他のメンバーの不安や疑問を解消しました
- チームメンバーに対して共感を示し、サポートする姿勢を見せました
この実験結果は以下の2つの事実を教えてくれます。
- 上記のような小さな行動がチームのパフォーマンスを決めること
- 強いリーダーから連想される行動とは全く違っていたこと
帰属のシグナル一時間の実験
この実験では、離職率が課題となっていた組織で、新入社員を2つのグループに分けて、通常の研修とは別に一時間の研修を実施しました。
- グループ①:会社の成功事例やビジョンについて話を聞く内容
- グループ②:社員同士のアイデンティティや個々の価値について考える内容
数カ月後の調査結果では、グループ②の会社に残っている人数はグループ①に比べて250%、既存の社員と比較しても157%高いという驚くべき成果が得られました。この実験は、帰属意識が社員の定着率に大きな影響を与えることを示しています。
この実験で、グループ①の研修では、会社と個人の距離を縮めるようなメッセージは何一つ送られていませんでしたが、グループ②の研修では、帰属意識に訴えるメッセージが満ちていました。
一時間という短い時間で、決して大げさなことをしていないにもかかわらず、大きな効果が得られたのは、「帰属のシグナル」と呼ばれる、ここは自分らしくいられる場所であり、この場所で未来を作る過程に貢献できると感じたことが原因とされています。
3. スクラムマスターとしての実践例
安全感を構築するために私が実践していることを以下に紹介します。これらのアプローチは、「最強チームを作る方法」に書かれている原則や実例と強く関連しています。
全員に発言の機会を与える
私は、スプリントプランニング、リファインメント、レトロスペクティブでなるべく全員が発言する機会を設け、各メンバーの意見やアイデアを尊重するようにしています。これにより、全員がプロジェクトに対する責任感と所有感を持つようになると思います。
Slackでリアクションをつける
私達チームは基本的にリモートワークです。非同期のコミュニケーションにはSlackを使用しており、私はSlackでのリアクションを多用しています。メンバーの発言に対して「いいね」や「拍手」のリアクションをつけることで、コミュニケーションが活発になり、ポジティブな雰囲気を醸成しています。
また、私はチームのメンバーに対して「あなたの意見や貢献を大切にしていますよ」という帰属のシグナルを送る意味でも、積極的にリアクションをつけています。これにより、メンバーは自分の存在が評価され、安心して発言やアイデアを共有できるようになると考えています。
ランチする・飲み会する
私は、対面で集まる機会がある際には、ランチや飲み会を共にすることで、メンバー間の関係を強化しています。非公式な場での交流は、仕事上のコミュニケーションを円滑にし、チームの連帯感を高めると思っています。
弱さを見せる
私は、スクラムマスターとして、わからないことは正直に「わからない」と言います。これにより、メンバーも安心して質問や意見を表明できるようになると信じています。
感謝を表明する
私は、メンバーの努力や成果に対して、日常的に感謝の言葉をかけるようにしています。若干しつこいと思われるかもしれないほどありがとうといっています。具体的な貢献に対して感謝を示すことで、メンバーのモチベーションを高め、チームの結束が強化されると信じています。
幹事をする
私は、飲み会があれば積極的に幹事をしています。チームへの貢献しようという心構えのつもりです。書籍では「ゴミを拾う」という行動が紹介されておりますが、それに通ずるものと思っています。(リモートなのでゴミを拾うという行動があまりできないです)
笑う
私は、なるべく笑うようにしています。人が笑うのは心から安心して、仲間とのつながりを信じている証拠だと思っています。
4. 参考
マシュマロチャレンジ
「最強チームを作る方法」の冒頭では、マシュマロチャレンジが紹介されています。このエクササイズは、スパゲッティ、テープ、ひも、そしてマシュマロを使ってタワーを作るというシンプルなゲームです。
反復型プロセスを体験するエクササイズとして、スクラムチームのチームビルディングのエクササイズとしてやったことあるチームが多いのではないでしょうか?
ちなみに、日本には「日本マシュマロ・チャレンジ協会」なるものもあります!ご参考に(公式のルールやキットまであります)
Youtube
「最強チームを作る方法」は、中田のあっちゃんも動画で解説しております