はじめに
IT技術と言えば「言語」とか「資格」とか「IOT」とか着目されがちですが、
今回は教科「情報」という技術が今後どう変わるのか、次期学習指導要領の
観点から記載します。
なお、2020年次期学習指導要領はまだ「案」でしかありません。
とはいえ、現状を知るために紐解いてみようと思います。
学習指導要領とは
学習指導要領とは、国のどの地域で教育を受けても一定の水準の教育を
受けられるようにするため、文部科学省で学校教育法等に基づき、
各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めたもののこと。
教師は学習指導要領を参考にしてシラバスを作成し、授業を行います。
つまり、学習指導要領が変わるということは教育そのものが変わるということです。
個人的には学校教育のことを知りたい場合は、各教科の学習指導要領を
一読してみるとよいと思っています。。
学習指導要領は文部科学省のHPからダウンロードできます。
また、本屋や通販で購入することもできます。
学習指導要領の改訂
学習指導要領はおよそ10年サイクルで大きく改訂されます。
平成に入ってからだと
1992年
2002年
2011年
2020年(予定)
に改訂されています。
学習指導要領の改訂にはPISA学力調査が関わってくるのですが、それはまた別のお話。
教科「情報」の必修科目
【現行】
・社会と情報
・情報の化学
どちらか選択で必修。
【改訂案】
・情報Ⅰ
・情報Ⅱ
固定で情報Ⅰが必修。
現行と異なり、必ず特定の情報の課目を履修する必要があります。
これにより、生徒全員が共通の教育を履修するというメリットが生まれます。
2020年次期学習指導要領の答申(概要)
2020年次期学習指導要領の答申が要約されているので、まずは原文のまま。
・ 共通必履修科目として、問題の発見・解決に向けて、事象を情報とその結び付きとして捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を全ての生徒に育む「情報Ⅰ」を設定。全ての高校生がプログラミングによりコンピュータを活用する力を身に付けられるようにする。
・ 選択科目として、「情報Ⅰ」の基礎の上に、情報システムや多様なデータを適切かつ効果的に活用する力や、情報コンテンツを創造する力を育む「情報Ⅱ」を設定。
・ コンピュータについての本質的な理解に資する学習活動としてのプログラミングや、より科学的な理解に基づく情報セキュリティに関する学習活動などを充実するとともに、統計的な手法の活用も含め、情報技術を用いた問題発見・解決の手法や過程に関する学習を充実する。
共通必履修科目を設ける理由が明記されています。
プログラミングの活用についても記載してあり、これまでとは一線を画す教育を
行おうという姿勢が見えます。
ただ、本当にこの要約通りの教育を行うようになった場合、教師の負担は確実に大きくなります。
正直、情報の専任教員が不足している現状でこれは出来る気がしません。
情報は兼任教員が多いため、抱えられる重みの教育方針とは思えません。
2020年次期学習指導要領の答申
概要は5ページを8行にまとめたものなので、全文の答申で気になる部分を
ピックアップしました。
情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる力や情報モラル等、情報活用能力を育む学習を一層充実する
教育的に重要なのは「主体的に」と「情報活用能力」でしょうか。
「主体的に」は指示を待つだけの人間に育ってほしくないこと。
「情報活用能力」はメディアリテラシーを身につけて欲しいこと。
だと思います。
情報科の学習は、社会、産業、生活、自然等の種々の事象の中から問題を発見し、プログラムを作成・実行したりシミュレーションを実行したりする
要約より明確に「プログラムを作成・実行」と記載されています。
コーディングのことだけではないと思いますが、高校生・教師にとっては未知であり、
不安を覚えるものだと感じます。
データベースの基礎といった基本的な情報技術と情報を扱う方法とを扱う
DBについても言及されていました。
DBの概念について早いうちに教育をすることは良いことだと思います。
ただ、扱うとなった場合、少し敷居が高い気がしなくもないです。
プログラムの制作・実行環境等については、情報科の趣旨を踏まえた授業の実施に適したアプリケーション等の開発・提供が必要であり、国等においては民間等におけるそれらの開発・提供を促していく必要がある。
さらっと、IT業界にとって重要なこと記載してますね。
教育業界向けの開発環境の構築や保守・開発の仕事が生まれそうです。
個人的には教育業界向けに一番必要なのはユーザビリティだと思います。
さいごに
2020年次期学習指導要領に関する情報はまだほとんど出ておらず、
確実なことが言える状況ではありません。
だからこそ、情報を今のうちに集め、今後どのような教育を受けた人が
社会人となり、IT業界に参画してくるのか見極める必要があります。
IT業界にとって「学習指導要領の改訂」というのは単に教育方針が変わるだけなく、
営業のチャンス(リスク)となる一大イベントです。
今回は教員側の観点で記事を書きましたが、学習指導要領が変更されることで
一番影響を受けるのは教員ではなく、授業を履修する「生徒」です。
授業の履修者である生徒がきちんとやりがいや能力を身につけられる授業になる
学習指導要領の変更であることを望みます。
参考
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)【概要】
幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)