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はじめに

先日、X(旧Twitter)にてこのような投稿をしたところ、少し反響がありました。

ということで、IPv5とは何か?どんなプロトコルか?といったものを簡単に解説していきます。

IPv5とは?

RFC上の規定

IPv5は、RFC1190(1990年)ならびに、RFC1819(1995年)に定められたものとなっており、IPv4やIPv6のようにアドレッシングに関する規定ではなく、ST-2と呼ばれるOSI参照モデルのネットワーク層で規定された、ストリーミングに関するプロトコルとなります。

また、RFC1190に記載の通り、"Experimental(実験的)"となっており、限定的な使用として一般普及を目的とはしていません。
そのため、利用者側にはほとんど知られておらず、ごく一部の研究者が使っていたものとなります。
ご存じの通り今日ではストリーミングにRTPやHTTPなどにおいてUDPやQUICといったトランスポート層をベースとしたプロトコルが使用されています。

IPv5(ST-2)の仕組みの概説

ST-2は
ST-2はアプリケーションデータを通すData PathとControl Pathの二つからなります。
image.png
Data Pathはデータそのもの、Control PathはStream Control Message Protocol(SCMP)と呼ばれ、ヘッダに含まれるD-bitが0以外の場合、Data Path、0の場合Control Pathとなります。
Control Pathでは以下のような制御を行います。

  • 送信元と、送信先(一つまたは複数)のPeeringの確立とストリーミングの開始
  • Peeringの追加・削除
  • ストリーミングの終了

制御メッセージには、次のようなものが含まれます。

メッセージ 用途
ACCEPT 新規のストリーミングの開始
ACK メッセージへの応答
CHANGE サービス品質の変更
CONNECT コネクションの確立と、新規の送信先の追加
DISCONNECT 送信先の削除(一つまたはすべて)
ERROR エラーメッセージの送付
HELLO 隣接するSTエージェント(ルータなど)同士の同期メッセージ
JOIN 既存のストリームへの参加
JOIN REJECT 既存のストリームへの参加拒否
NOTIFY STエージェントへの通知メッセージ
REFUSE 新規のストリーミングの開始拒否
STATUS STエージェントへのステータスクエリ
STATUS-RESPONSE STATUSメッセージへの応答

ストリーミングは異なるネットワークやルータを超えて行うことができ、音声・動画といった異なるタイプのストリーミングを行うことができます。
また、帯域の確保もこの中で行うことができ、SCMPは再送処理や、通信が途切れた際の再接続を試みます。

では、なぜこれはIPv5なのか?

RFC1190によると、ST-2のパケットのヘッダをIPv4と分ける意図がありました。最初のIPバージョンヘッダを除き、IPv4とは互換性の内容に作られています。バージョンヘッダは5を使用しており、これは今でもIPv4のプロトコル番号および、IPv6のNext-Headerでは5が使われています。

もともとIP(Internet Protocol)は、IPアドレスを規定するためだけではなく、インターネット上のホストへデータを送信するためのプロトコル(決まりごと)を規定したものになります。
1974年にTCPのデータグラム(送受信単位)として提唱され、
TCPv2として1977年にIPv0、1978年にIPv1~IPv3、そして1979年にRFC755として発表され、IPv4としては最終的に1981年のRFC791でIPv4の最終型となります。

まとめ

IPv5を紐解くと、その前のInternet Protocolの歴史や、TCP/IPがなぜTCP/IPと呼ばれるのか、という話。インターネットそのもののの歴史を探る壮大な物語になります。
RFC791のタイトルはそのもの「INTERNET PROTOCOL」となるので、これが集大成という意気込みを感じます。
また、ST-2そのものも現在の分散アーキテクチャの考え方と通ずるものがあり、「The Network is the Computer.」であり、AWSをはじめとするクラウドサービスがインターネットのOS(たびたびAWS/Amazonの幹部が基調講演でそう言っていますが、もともと誰が言い出したのかは失念してしまいました…)になっているというところにつながっているとするあれば、このIPv5もどこかにつながっているのだと思います。

参考文献

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