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KotlinでRustライクなResult型を使う

Last updated at Posted at 2022-06-07

対象読者

RustのResult型(や、他言語における同等機能)を知らない人。
投げる例外しか扱ったことがないのに、kotlin-resultを使ってくれと言われた人。

例外を投げる方式の問題点

エラーを通知する方法として、例外を投げるという方法を採る言語は多いです。この方法の欠点は、(言語仕様にもよりますが)エラー発生時のインタフェースを適切に設定できないことです。

例えば、

fun doubleIfPositiveOrThrow(input: Int): Int {
    if (input <= 0) {
        throw Error("Invalid input!")
    }
    return input * 2
}

という関数は、引数に整数を取って戻り値として整数を返す、というところまでインタフェース定義できているにも関わらず、例外を投げるかどうかは実装詳細を読む必要があります。このせいで、呼び出し元にエラーハンドリングを強制することができず、バグを生む原因になります。

エラーを例外として扱わず、戻り値として扱う方法

そこで、いくつかの言語・・・特に新しめの言語では、エラーを例外として特例扱いするのではなく、普通に戻り値として扱う方法を採っています。

例えばGoでは、エラーが発生する可能性のある関数の戻り値は、常にerrを含みます。

func Atoi(s string) (int, error)

この Atoi関数の場合、第二戻り値がerrorなので、この関数はエラーが発生する可能性があるのだ、ということが、型を見るだけで分かります。

RustやScalaでは、Goと違ってジェネリクスが使えるため、少し異なるアプローチを採っています。それがResult型です。(※ScalaではEitherと呼びますが、実質同じです。)

これから紹介するKotlinのResultも、それと同じものです。

kotlin-resultライブラリ

では、本命のkotlin-resultライブラリの説明を始め・・・たいところなのですが、その前に注意点です。

KotlinのスタンダードライブラリにResult型というのがありますが、これは全く異なるものです。これはこれでエラーハンドリングに役立ちそうな気配はありますが、今回は触れません。

今回説明するのは、kotlin-resultライブラリResult型です。

関数定義

Resultを使うと、前述の

fun doubleIfPositiveOrThrow(input: Int): Int {
    if (input <= 0) {
        throw Error("Invalid input!")
    }
    return input * 2
}

は、

fun doubleIfPositive(input: Int): Result<Int, String> {
    if (input <= 0) {
        return Err("Invalid input!")
    }
    return Ok(input * 2)
}

と書き換えられます。

まずは、インタフェース(関数の型)だけ見てみます。

変更前のfun doubleIfPositiveOrThrow(input: Int): Intは、「整数を食って、整数を返す」ということを言っています。ただし実は、定義にないエラーが発生することがあり得ます。

変更後のfun doubleIfPositive(input: Int): Result<Int, String>は、「整数を食って、成功したら整数を返す、失敗したら文字列を返す」ということを言っています。(Resultの第一型引数が成功時の型、第二型引数が失敗時の型を表す。)

関数の中身も見てみましょう。

変更前はthrowしていたところが、変更後はreturn Err("Invalid input!")に変わっています。例外として投げてしまうのではなく、あくまで戻り値として返しているわけです。ただ、エラーであることを表現するため、Errで戻り値を囲っています。

最後のreturnですが、変更前はreturn input * 2とIntを返していたところが、変更後はreturn Ok(input * 2)に変わっています。成功したことを表すため、Okで戻り値を囲うことが必要となります。

Resultを返す関数の使い方

例えば、

val result = doubleIfPositive(5)

とした場合、resultの値は10にはなりません。Ok(10)になります。よって、そのままでは使えません。

例えば、以下のように使います。

fun tryResultType() {
    val result = doubleIfPositive(5) // これはOk(10)を返すので、このままではIntとして使えない。

    // 成功なら中身の値(=10)、エラーならnull。
    val doubled0: Int? = result.get()

    // 成功なら中身の値(=10)、エラーなら0。
    val doubled1: Int = result.getOr(0)

    // 成功なら中身の値(=10)、エラーならtryResultType自体から抜けてしまう。
    val doubled2: Int = result.getOrElse { return }
}

以上の使用例を見ると分かるように、どの使い方でも、常にエラーだった場合のことを意識しています。つまり、

fun tryResultType() {
    val result = doubleIfPositive(-3) // これはErr("Invalid input!")を返す。

    val doubled0: Int? = result.get() // null

    val doubled1: Int = result.getOr(0) // 0

    val doubled2: Int = result.getOrElse { return } // tryResultType自体から抜けてしまう。
}

という感じです。

いったんまとめ

まとめると、例外を投げる方式と比べて、

  • インタフェース(関数の型)を見るとエラーが発生しうることが分かる。
  • 関数呼び出し側にエラー処理を強制できる。(→処理忘れによるバグを生みづらい。)

というメリットがあります。

bindingとbind

しかし、いちいちgetOrElseなどを書くのは結構面倒です。

つまり、従来通りの例外投げ方式だと、以下のように書けていました。

try {
    val a: Int = doubleIfPositiveOrThrow(2)
    val b: Int = doubleIfPositiveOrThrow(5)
    val c: Int = doubleIfPositiveOrThrow(-8)
} catch (e: Error) {
    // エラー処理
}

Result方式だと、こうなります。

val a: Int = doubleIfPositive(2).getOrElse {
    // エラー処理
    return
}
val b: Int = doubleIfPositive(5).getOrElse {
    // エラー処理
    return
}
val c: Int = doubleIfPositive(-8).getOrElse {
    // エラー処理
    return
}

これを楽に書けるようにするのが、bindingbindです。

bindingbindを使うと、このように書けます。

binding<Unit, String> {
    val a: Int = doubleIfPositive(2).bind()
    val b: Int = doubleIfPositive(5).bind()
    val c: Int = doubleIfPositive(-8).bind()
}.getOrElse {
    // エラー処理
    return
}

簡単に言えば、こういうことです。

bindingブロックの中では、Result型はbind()を呼び出すことができます。
bind()は、もし呼び出し元のResultが成功(Ok)であれば中身の値を取り出し、失敗(Err)であればbindingブロックから抜けて、エラー(Err)を返します。

楽できるので、使えるところではbindingbindを使った方が良いです。

詳細は、公式ドキュメントを参照してください。

最後に

詳しく説明すると長くなるので、いったんここまでにします。

投げる例外にしか触れてこなかった人にとっては、最初はややこしく感じるかと思います。しかし、投げる例外では、厳密なエラー処理をプロジェクト全体に浸透させるのは難しいです。Resultを使う方法だと、いい加減に書いてしまうことが許されなくなる分、バグの少ないコードを生み出すことができる・・・と思っています。

少なくとも、Rustは言語レベルでそういう選択をしたわけですし。

とにかく、触っているうちに慣れますから!

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