#トランプの中国排除は選挙のため?
本日('20/8/1)、トランプはHuaweiに続き、TikTokもアメリカ国内での利用を禁じました。理由は、個人情報流出のセキュリティリスクがあるから、と回答しています。
Huawei, TikTokの禁止の背景に、今年('20)の選挙が行われる上で、コロナ対策に失敗したと見做されてしまっている状況を打破するため、中国を敵国に祭り上げた、という見方をされてますが、本当にそんな短絡的な話なのでしょうか?
実は、「アメリカのテクノロジー業界を守るために行っている」、とは考えられないでしょうか?
#Google, Facebookが稼げるワケ
多くの方がGoogleの検索やYouTube、FacebookやInstagramのサービスを無償でお使いだと思いますが、なぜ無償で使い続けられるのでしょうか?
この答えは簡単で、この2社は広告費を稼げるので、ユーザーから利用料を貰わなくても経営できるからです。では、なぜ莫大な広告費を稼げるのでしょうか?
理由は、この2社が、ネット検索、投稿動画、個人向けSNS、写真SNSのシェアがトップで、その地位を利用し、効率的な行動ターゲティング広告の仕組みを作り上げたためです。
#行動ターゲッティング広告の効率を上げるには?
行動ターゲッティング広告の効率を上げるには、
- 多くの情報を集められること
- 詳細な情報を集められること
- それらのデータが分析できること
が必要になります。
これらを達成するために、Googleは、下記のようなことを行ってきました。
- Gmailを開発し、メール情報を収集
- Google mapを開発し、個人の位置情報に関する興味関心の情報を収集
- Androidを買収し、携帯電話を通して様々な個人の情報を収集
- YouTubeを買収し、閲覧者だけでなく動画投稿者の情報も収集
また、Facebookは、下記のようなことを行ってきました。
- WhatsAppを買収し、メッセージ情報を収集
- Instagramを買収し、写真情報を収集
#情報収集方法の根本を変えるHuaweiの戦略
GoogleとFacebookに共通しているのは、情報収集の方法は、消費者に各種情報をターゲッティング広告に使う旨が書かれた誓約書に同意をもらった上で、あくまで消費者の能動的な行動を情報収集していることです。
言い換えると、受動的な行動を勝手に情報収集し、それをターゲッティング広告に使う行為は、欧米諸国から制限をかけられてきました。
- Fitbitの買収条件が、「健康ログ情報ををターゲッチング広告に使わないこと」になったこと
- LibraにNGが出たこと(ただ、これはステーブルコインとしたことの方が大きいと思いますが。)
これをひっくり返そうと考えているように見えてるのがHuaweiの基地局戦略です。
要は、Huaweiの基地局を通った携帯電話の情報を、Huaweiがターゲッティング広告に利用する、という戦略です。消費者は携帯電話を使う際に、どの基地局を使うかなんて知る由も無い訳で、つまりは、欧米諸国が禁止と定めてきた消費者の受動的な行動の情報収集を行おうとしているように見える、と言う訳です。
これが行われてしまうと、Huaweiが入手できる情報量は、Google, Facebookを遥かに上回ることが容易に想像できます。行動ターゲッティング広告の成功に必要な2つの項目
- 多くの情報を集められること
- 詳細な情報を集められること
を、HuaweiがGoogle, Facebookを上回れてしまう事態になります。
#Huaweiに留まらない中国企業の情報収集企業の台頭
近年は、Huaweiに止まらず、情報収集力を持つ中国企業も増えてきました。
- ショート動画SNS: TikTok
- 動画チャットアプリ: Zoom
- ネットワークゲーム: Tencent(LoLの開発元のriot game, Fortniteの開発元のEpic gameの親会社)
対するアメリカは、ここ10年位、GAFAを喰らうような企業は現れていません。
この状況は、ポストGAFAは中国企業のものになる、を意味します。アメリカとしては、難癖つけてでも阻止したかった、というのが、今のトランプの気持ちにあったのではないでしょうか?
(「セキュリティリスク」は、根拠となる事実がまだ明確になっていない以上、今は「難癖」としかいいようがありません。)
#二重苦のアメリカを救うのは誰?
本来は、勝手に中国に対抗できるサービスを提供できる企業が生まれてくるのがアメリカという国なのですが、残念ながら、今のアメリカには、様々な理由で、その力がありません。Uber, Airbnbなど、既存のサービスに関わる人材をコストとしか捉えられないような企業が台頭してしまったのが、その一例です(日本も陥ったコストカット病。アップルも半分位落ちかけている病)。前回の選挙でトランプが勝ったのは、この状況を打破したいアメリカの意思だと捉えましたが、コロナという別の病も抱えてしまった今、トランプという劇薬を打ち続けていいのか、冷静に判断できる状況では無くなってしまいました。
今年の選挙でトランプが負けるようなことがあれば、確実にポストGAFAは中国企業のものになるでしょう。少なくともStay homeで最も強みを出せる分野であるゲームの分野において、アメリカは、マインクラフト、GTA以降、全く存在感を示せていません。(LoL、FortniteはTencent運用で成功したと見做しています。)
今年のアメリカ選挙は、テクノロジー業界においても目が離せないものと捉え、見守っていきましょう。