一般入手しやすい食品で、普段使う工具類の汚れ・錆の落とし方を説明する。
ネットで調べると出てくる情報は、勘違いして書いている情報が見られるので、正しい情報をまとめた。錆の原因や洗浄に関して現象を説明しており、内容が伝われば錆防止をできるようになる。主にスーパーなどで手軽に手に入るクエン酸、重曹を用いた方法と、代用品を用いる場合についても触れる。錆の種類として日常の工具に起きる錆の内容に絞り記載する。家庭内で錆落としから錆防止までをできるようにするのが本記事の目的である。
#----題目----
- 汚れと錆の種類と原因
- 錆を落とすには(化学反応を用いた方法)
- クエン酸、重曹に関して
- クエン酸、重曹を使うべきでない製品
- 洗浄の注意点
- 実験
- 実験結果
- 考察
- 錆防止策
- 備考
- より詳しく参考になる資料
#汚れと錆の種類と原因
錆とは、金属が酸素と化合した金属の酸化のことをいう。
一般的に酸化において、それ以上金属の腐食など防ぐ良い酸化と、劣化させる悪い酸化がある。金属の種類により酸化した際の色が異なり、良い酸化の例として、アルミニウム、ステンレスに自然にできる酸化被膜、銅の自然に赤くなる赤錆・茶錆、その後緑青という緑色の錆、鉄・鋼の黒錆がある。悪い酸化の例として鉄・鋼の赤錆、ステンレスの錆である。
下記の写真はそれぞれの材料の錆に関してで、1円:アルミ10円:銅(上部放置し、酸化被膜ができた色・下部本来の色)、仏:銅が緑青になった色、鉄瓶:黒錆である。
今回の議題の中心になる悪い酸化の例として挙げた鉄・鋼の赤錆とステンレス錆の状態について、説明する。
鉄は、水、酸素が鉄の表面にあると錆になる。
ステンレスは鉄が主成分だが別の金属を混ぜることで、通常酸化被膜があり錆びづらく、もらい錆という表面に軽く付いた状態が多い。もらい錆とはステンレスの表面に別物質がつき、その別物質が錆びたものでステンレス本体ではないため落としやすい。そのまま状況が続くと、そこに塩化物と水が付きステンレス本体の錆になりうる。他に沖縄等海が近く塩分濃度が高い空気がある場所では、空気や雨で錆びていく。塩分濃度が高い空気・雨で起きるステンレスの錆は、もらい錆の一種で海水の塩等の塩化物イオンで酸化被膜を破壊する。(参考資料⑷)そして、酸化被膜がなくなった個所から通常の鉄と同じように水分と酸素で錆が発生する。手で触れた個所から錆びるのも汗の塩化物イオンで酸化被膜が破壊されるためである。
#錆を落とすには(化学反応を用いた方法)
錆の度合いにより、ひどい場合やすりで物理的に削る必要がある。
軽度な場合、電解除サビ化学反応を用いた方法で、落とすことができる。
電解除錆は、電気を使い多少大がかりになるため対象外として化学反応を用いた説明を載せる。
まず下図のように錆はアルカリ性の汚れであるため、それを中和する方向にもっていく酸性の洗剤で落とせばよい。業務用的には、リン酸洗浄剤が使われており、その理由として、錆を落とす以外にリン酸塩被膜を作り錆防止となるためである。
効果を求めるとpHが低いサンポール(家庭用入手性良い)、リン酸、シュウ酸が有効であるが、皮膚につくと火傷する危険性がある。そこで食品で使用できる安全性の高いクエン酸を使用する。
また酸性汚れの手垢が付着している事も考え、アルカリ性で安全性の高い重曹も実験では行ってみる。
#クエン酸、重曹に関して
特徴を以下に羅列する。
-どちらも入手性がよい。スーパー・薬局で購入可能。
-重曹:有機系汚れを除去できる。例 家庭用洗剤で取れない焦げ付き、油汚れ。
-クエン酸:金属系汚れを除去できる。例 トイレ・ポット・鏡洗浄。
-錆・汚れ除去目的で使用する際、時間・温度・濃さを増やせば除去効果は増える。
-クエン酸・重曹は、錆取り以外にも使用でき、備考⑴に記述する。
#クエン酸、重曹を使うべきでない製品
-クエン酸+大理石 成分の炭酸カルシウムを溶かしてしまう。
-クエン酸+セメント 成分の水酸化カルシウムを溶かしてしまう。
-重曹+アルミ アルミはアルカリにも反応して腐食し水酸化アルミニウムになり黒くなる。
-重曹+畳 濃い重曹で使うと変色する。
-重曹+漆器、ニス塗装製品 重曹の粉による研磨作用で塗装に傷ができツヤがなくなる。
-アルマイトされているアルミ+クエン酸 アルマイトがクエン酸で溶かされ剥がれる。
--注意して行うべき製品--
-クエン酸+工具類 切削用工具に多い鉄(鋼)の物は、水が付くと数分で錆が発生するそのため、メッキがされているものがある。不用意に行うと、メッキが剥がれ、錆びやすくなる。
#洗浄の注意点
錆落としでクエン酸、重曹の溶かした溶液を用意するが、重曹は水に溶けづらいため、お湯にして溶かす。まず対象物から錆以外の汚れを落とす必要がある。理由として、錆の上に別の汚れがあると、錆までにクエン酸、重曹の溶かした溶液がしみ込まず錆が落ちないか、または溶液に漬けておく時間を長くする必要が発生するためである。錆以外の汚れを落とすには、通常の洗剤などで落とし、錆が大きい場合は、粗方やすりで削っておくと良い。
また全体をクエン酸・重曹に溶かした溶液に漬けておけばムラなく錆を落とせるが、形状や、別部品がついており、全体を付けられない場合、ティッシュで錆部分だけを覆うことで除去ができる。その場合、ティッシュの溶液は時間が経つと乾き対象物との接触しない部分が発生し、洗浄にムラが発生する。そのため、ある程度時間が経ったら、ティッシュに再び溶液を掛けるようにするか、一部分を溶液に漬けて毛細管現象で、常に溶液を吸うようにする。
また、他の洗剤と混ざると塩素ガスが発生する可能性があるため、混合して他の洗剤と混合しないようにすること。
#実験
ネジを切るダイスがドレッシングに付いたまま放置し、錆びてしまったものを用意し、家庭用洗剤で洗い、図に書いてある条件で錆取りを行い、効果を比較する。
量に関しては反応が早まるように多いが方が良いが、今回は水100gに20gとした。
#実験結果
お湯、重曹は落ちなかった。
クエン酸により錆が落ちたが水洗いしたところ、光沢がなくなり錆が急激に出た。
#考察
クエン酸で行ったものは水洗いで錆が出たため水洗いをやめ、漬けなおした後拭きとるだけにした。調べたところ材質SKS(鋼)は固い金属で切削工具によく使われているが錆びやすく、元々メッキがされていたようで、クエン酸でメッキも落ち、水洗いしたところ錆が数分で発生した。そのため、クエン酸溶液から出した後、ふき取るだけにした。別途メッキ処理が必要になった。メッキ対応は、タンニン鉄にすることで対応することにした。下記の錆防止策に記載する。
#錆防止策
錆取りが終わったら、水などでよく溶液を流し、水を切る。
再び錆を発生させないため、鉄・ステンレスの表面に塩化物がつかないようにする。
鉄に関しては、表面に錆をさせる水・酸素がつかないようにコーティングにする必要がある。
コーティングは油で拭くだけで水、酸素から守られる。また保存は水のない乾燥したところに入れる。
コーティング用油に関して、錆落としとして機械系で有名なKURE556があるが、長期的には乾燥しやすいため推奨しない。入手性を考えると、自転車油が良い。
サラダ油は酸化されやすいため、使えない。
食用油で行うとすると包丁などで使われている椿油が酸化されづらく良い。
鉄製品に対してお茶とクエン酸を用いたタンニン酸鉄にする方法は、家庭内で出来る簡易な錆防止である。強度に関して、薄膜で黒錆に比べると弱くこすれていくと取れる。作業方法は、お茶とクエン酸と混ぜた溶液に鉄製品を1時間ほど漬けることで出来る。ネットで調べると、この方法を黒錆化と書いてある記事をよく見るが、黒錆(Fe3O4)では無いので注意。本来黒錆は、高温処理・薬品を用いて行う方法である。
お茶内のタンニンと鉄が結合することでタンニン酸鉄という黒い化合物になっている。
麦茶・緑茶・ほうじ茶・煎茶・番茶・玄米茶・烏龍茶の浸出液はタンニンが少ないので今回、紅茶のLipton YELLOW LABEL TEAを使用した。1時間漬け終わった後、確認すると、全体的に黒くなった。ムラはあるが、水で洗っても錆びることはなかった。だが、目で見えるレベルでムラがあることから膜がない個所があるとわかる。時間経過でその個所から錆びるため、すぐに油でコーティングしておくべきである。
#備考
##⑴ クエン酸、重曹に関して
錆取り以外の使い道として、クエン酸と重曹を混合すると、アルカリ、酸で中和をして、二酸化炭素ができ炭酸ジュースが作れる。
安全性に関して、クエン酸は、そのまま舐めても安全である、クエン酸はすっぱいので、ジュースの酸味成分に使われている。重曹はそのまま舐めるのは、ゆっくりだが皮膚を溶かすため危険である。重曹は、膨らまし粉として、ホットケーキ等に使われている。また重曹は胃酸と中和するので、胃薬として使われている。
掃除として空焚きして黒くなったアルミ鍋はクエン酸で、表面の黒いアルミを溶かし落とすことができる。クエン酸を溶かした溶液を10~20分煮ておくと黒いアルミがはがれてくるので、スポンジなどで落とす。しつこい場合は一日放置しておく。黒いアルミが取れた場合アルミ鍋は水洗いし、乾拭きして放置することで、酸化被膜を作らせること。すぐに水を入れると黒くなる。
##⑵ 冬の車の錆
水に強電解質である塩が加わると錆の発生が促進される。
車に融雪剤(塩化カルシウムや塩化ナトリウム等)が付き、錆が促進されるためついたら洗車することで錆の促進を抑えられる。
##⑶ ステンレス種類
ステンレスにも種類があり、PHの低いものに対応した材料配合の物もある。
食品の工場であると、配管に大量に流すため圧が掛かり、家庭では腐食を考えなくてもよい食品でも腐食が起きる。
##⑷ コーティングの種類
金属の悪い酸化を防止させるため、金属に酸化されづらい材料を混ぜる方法、表面を酸化に強い材料でコーティングする方法がある。コーティングには、鉄・鋼で発生させる黒錆のように高温加熱によってわざと酸化させる方法、コーティング剤の吹き付け、メッキによる方法等が挙げられる。
アルミニウムに関しては、電気を流すことで表面に厚い強固な膜を作るアルマイト加工という方法がある。
電気防食という方法もあるが、工具に対して使うものでなく、普段手入れができない場所電車の線路、地中内の水道管、海水内の鉄骨等で使い、別途対象物の対になる陽極になるものを常に付けておくことで、物体の電気の流れやすさを変えることで酸化されづらい状態にしておく方法である。
#より詳しく参考になる資料
鉄の錆に関して
⑴さびと電気化学 -金属の腐食のメカニズム-川崎晋司
http://kawasaki.web.nitech.ac.jp/jp/lesson/corosion_text.pdf
鉄の赤錆が続く理由、ステンレスの塩分による錆に関して
⑵海水・塩水・さび-塩分があると金属はどうしてさびやすいのか?-井上博之
http://www.saltscience.or.jp/symposium/1-inoue.pdf
ステンレスの錆、腐食に関して
⑶腐食講座 大阪産業技術総合研究所 柳原護
http://tri-osaka.jp/group/kikaikinzoku/hyoumen/surface/post/Yanagihara/Y4.pdf
http://tri-osaka.jp/group/kikaikinzoku/hyoumen/surface/post/Yanagihara/Y5.pdf
ステンレスの塩化物による酸化膜の破壊に関して
⑷鉄の孔食における塩化物イオンの役割 水野忠彦
https://www.jim.or.jp/journal/j/pdf3/50/11/1009.pdf
ステンレスが錆びづらい理由に関して
⑸ステンレス協会 市場開発委員会
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201207_08.pdf
ステンレスの特性・種類に関して
⑹基礎編ステンレス協会
http://www.jssa.gr.jp/greenpipe/assets/pdf/manuals/001.pdf
重曹の原理を、化学式を用いて説明してくれています。
⑺本当に知らなきゃ損なのか?重曹の活用法を化学的に考察してみる
http://live-reasonably.blogspot.jp/2015/05/blog-post.html